顔知らぬメンバーと、仮想空間でチームプレー!?メタバースの仕事とは

2022年3月3日

Facebookが社名を「メタ」に変更したり、大手企業がVR(バーチャル・リアリティ)領域に本格的に参入したりと、メタバース領域がいま大きな話題になっています。

メタバースとは、インターネット上に存在する仮想空間のこと。VRヘッドセットを身に着けてメタバースにアクセスすると、アバターでほかのユーザーと交流をしたり、メタバースで使用できるアイテムをつくったり、購入したり。現実世界のようにさまざまな楽しみ方をすることができます。

2018年に立ち上がったVR法人「HIKKY(ヒッキー)」は、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営し、さまざまな仮想空間上のイベントを手がけている会社。メンバーのほぼ全員が自分のアバターを持ち、日々メタバースに“出勤”する勤務スタイルが定着しているのだそう。

そんなHIKKYで役員を務め、メタバースの最前線で日々クリエイティブディレクターとして活躍している、さわえみかさんに、最新のメタバースでの仕事・はたらき方について聞きました。

毎日メタバース出勤! 一日の仕事のスケジュールは?

──さわえさんは毎日“メタバース出勤”をされているとか。どんな風に会社に行くんですか?

​​出社時間になったら、パソコン前につきます。3Dアバターを動かせるメタバース空間につなぎ、そこから仮想カメラを通じてZoomとつないだりして、アバターの姿でリアルの方と会議やミーティングをします。使うサービスは、GoogleMeetやDiscordなどを用途に合わせて選択しています。メタバースの空間を作るミーティングであれば、メタバース上に集まります。

ちなみに、メタバース上で活動するためには、“アバター”が必須です。これは仮想空間でまとうカラダのことで、私のチームではめいめい好きな姿を選んでいます。男性でも、かわいいものが好きな方は女性アバターを使うし、なかには動物の姿になっている人も。メンバーはみんな、自分がまとってテンションが上がる姿で活動をしていますね。

HIKKYは、私をふくめ普段からメタバースに親しんでいるメンバーが立ち上げた会社なので、2018年の創業当時からすでにメタバース出勤が普通でしたね。

──社員はみんな、好きな時に好きな場所からアクセスして集まっている?

そうです。私はHIKKYが立ち上がってから2回、妊娠と出産をしています。家から出なくてもはたらけるからこそ、仕事が続けられていますね!

私はHIKKYの役員ということで、労働基準法の対象にならないという前提でいうと、2回目は出産して4時間後に「みんな〜!産んだよ〜!」ってオンライン会議に出たことがありました。「こんなときくらい休めよ……!」って、みんなから総ツッコミ(笑)。ちなみに、実物の私はパジャマでした。

──パジャマでも出社できちゃうのはアバターさまさまですね(笑)。一日のお仕事はどんなスケジュールなんでしょう?

うちは子どもがいるので、ちょっと特殊かもしれないのですが、比較的ゆっくりしている日は、ざっくりとこんな感じで仕事をしています。

7:30 起床・朝食

9:30 子どもたちを保育園へ

10:00 メタバース出勤・会議・制作

13:00  昼食(ときどきお昼寝)

17:00 退勤

18:00 子どもたちのお迎え・夕食・家事・育児

21:00 メタバース会議に出席

23:00 メタバース上でおでかけ

01:00  就寝

──21時からも会議があるんですね。

HIKKYのメンバーには、昼はほかの会社ではたらいて、夜は副業としてHIKKYの仕事を手伝ってくださる方も多いからです。その方たちとミーティングするときは、だいたい21時くらいから。それが終わったら自分の作業をしたり、メタバース内のほかの場所へ遊びに行ったりしていますね。

──ちなみに、一緒に仕事をする人材の採用はどのように?

紹介やSNSなどで面白い方を見つけて、面接を重ねていきます。最低条件は、メタバース世界にアクセスできるということ。メタバースで遊んでいる時に知り合った方、Twitter経由で「何か手伝えることないかな?」って声をかけてくださった方たちにもお願いすることが多いですね。

実際に仕事を依頼することになれば、正式に業務依頼や契約を行います。現実の世界と同じですね。

メタバースにはどんな仕事があるの?

──さわえさんは、普段どんなお仕事をされているんですか?

メタバース、つまりインターネット上の仮想空間の世界を作る、ゼロイチの部分の仕事をしています。具体的にいえば、イベントの目的に合わせたメタバースの設計やデザインの方向性を決める役割です。

HIKKYはVR/AR領域の大型イベントの企画や制作、宣伝などを得意としていて、直近では2021年末の「バーチャルマーケット2021」の企画・制作を担当しました。ほか、HIKKYの役員として、バーチャルイベントや企業案件のクリエイティブ設計、メタバースの姿で生きやすい会社を目指すコミュニティ・システムの構築なども担っています。

会場に展示された3Dアバターなどを自由に試着したり購入したりできるVR空間最大のイベント「バーチャルマーケット」。会場となった「パラリアル秋葉原」の様子。
「バーチャルマーケット」の会場となった「パラリアル渋谷」の様子。現実の渋谷の街をオンライン空間上に再現したもの。

──メタバースの世界をつくる仕事というのは、どのように進むのですか?

バーチャル空間は、現実とちがって「空」も「大地」も作り物なので、どういう状況の「空」にするか、どういう「地面」を使うか、コンセプトに紐づいて一つひとつ決める必要があるんです。

私が行っているのはその全体的なコンセプトづくりで、細かいところはディレクターが設計し、クリエイターたちに仕事を依頼して作っていきます。

どんな分野のクリエイターがいるかというと、たとえば、デザイン担当、3Dモデリング担当、アニメーション担当、プログラミング担当、音楽担当、ギミックの担当など、ですね。さらに、つくった世界でのイベント運営・写真撮影・SNS宣伝などを行うメンバーもいます。

たとえば、「バーチャルマーケット」の制作では、150〜200人のスタッフが関わりました。PRスタッフまで含めれば300〜400人にのぼります。

メタバースで遊びはじめ、のめりこんだら仕事になった

──まさに新しい業界の新しい職種ですよね。さわえさんはどんな経緯でこの世界に?

もともと絵が好きで、ヘアメイクの職を経て絵の仕事をするようになり、ゲームや広告の絵を制作しました。転機となったのは2017年で、アートディレクターとして、とあるゲームのPRをしたときのこと。

バーチャル空間にスタジオを作り、カメラを置いて、現実にリンクさせながら動画を撮ったんです。それが大きくバズり、バーチャルの可能性に夢中になりました。「バーチャルってなんでもできるじゃん!」と、私自身も次元が広がるような感覚があったんです。

──2017年といえばもう4〜5年前。すでにこの時からバーチャルが盛り上がり始めていたんですね。

そう、とある男性が自作の美少女アバターをまとってバズったのがきっかけで、2017年末から2018年初頭にかけて幅広い層のユーザーが利用するようになりました。私もそれらの情報をネットで見つけて、「面白そうだな、入ってみよう!」と思ってこの世界に飛びこんだのが最初です。

──当時の印象はどうでした?

いざ入ってみると、そこで過ごしている人がいっぱいいることに驚きました。会社帰りに「みんなでお酒を飲みにいこうよ」「ちょっと遊びにいこうよ」っていうノリで、「ちょっとあがろうよ〜!」ってログインして、みんなで遊んでいるんですよ。

自分で作ったメタバース上のアイテムを見せあったり、ゲットしたアバターをお披露目して、「みてみて、かわいいでしょう?」って言い合いながら、キャッキャと遊ぶ文化がとても面白かった。ここからのめりこんで今に至ります。

同僚の顔を知らないことも!?メタバースではたらく面白さ

──メタバースではたらかれてみて「面白い!」と思うことはありますか?

いっぱいあります!でも、やっぱり一番はメタバースならではの“アバター文化”。HIKKYも9.5割の人がアバターを持っていて、それを自分自身として活動しているのです。中には、実際の顔を見たことがない人もいるんですよ。

現実のキャラが、アバターに引っ張られることもあります。たとえば、スタッフに28歳の男子がいるんですが、メタバースではかわいい美少女の体をまとっているんです。もちろん話し方は普段通りなのですが、現実よりちょっとだけ声が高くて、やさしいんですよ(笑)。私たちも、着物を着るとシャンとしますよね。そんな感じですね。

年齢なんか関係ない!老いも若きも本気でぶつかりあう

──“中の人”がわからないというのは、プロジェクトを進めていく上でどんな影響をもたらすのでしょう?

その“わからなさ”が魅力の一つなんです。たとえば、まったく物怖じせずにバンバン意見を言って、面白いアイデアをたくさん出すメンバーがいるのですが、年齢を聞いたら想像以上に若くて驚いたんです。リアルではやっぱり目上の人に遠慮するし、なかなかそうはいきませんよね。

──メタバース領域のクリエイティブでは、若いパワーが思いっきりぶつかってくる、と。

もう、すっごいですよ。新しいものをどんどん取り入れて、噛み砕いて、力にしている人は老若男女関係なく魅力がありますね。

技術を身につけるときも、遊んでいるような感覚なので、楽しくて覚えるのも早いんです。以前はできなかったことが、あっという間にできるようになったりする。みんながそんな風にどんどん成長していく過程を見ていると、純粋に「スゴイなぁ!」と思います。

──メタバース領域によって、はたらく選択肢は広がっていると感じますか?

とっても!場所も、見た目も、年齢も、国境も、性別も、会社も超えたチームプレーが生まれています。お互いにリスペクトしながらぶつかりあって、活発にアイデアを出して新しいものを生み出していけるのは何よりもハッピーなことです。

立場なんて関係ないし、年齢も関係ない。「好き!」という情熱で同じ方向を向いて、進んでいける仲間はとても大切ですね。

メタバースとリアル、それぞれの魅力

──もうこうなると、リアルで会う必要ってなくなっちゃうのでしょうか? 

実際、会社としての経済活動については、バーチャルを戦場とするならばバーチャル環境だけで十分回る時代だと思います。リアルなクライアントと接する機会の多い営業職などはまだ難しいかもしれませんが、バーチャルのものを作るクリエイターはバーチャル環境さえあればはたらけます。

でも、アバターを持ってみて、ますますリアルで会うことって贅沢だなあと本気で感じるようになりました。

チームメンバーとメタバース内で打ち上げをしている様子。

このようにバーチャルで会うと、現在使われているようなオンライン会議システムよりずっとリアルだし、面白いし、会った気分に浸れて幸せなんです。

でも、いつもより一歩、お互いの関係を深められた、先に進めた!と思えるのは、やっぱりリアルで会えた時。仕事でも、たまにアバターではないリアルの姿で会うと、「顔を見たの久しぶり!」ってみんなすごく喜んでくれるんです。バーチャルも、リアルも、それぞれの長所がありますね。

──リアルとメタバース、2つの世界を往来しているさわえさん、最後に仕事で叶えたい夢を聞かせてください。

5年経っても10年経っても、かわいいアバターを着て、いくつになってもキャッキャとはしゃぎながら、みんなで好きなことをしていたい。誰もがそれぞれ求めたり、求められたりしながら、幸せに仕事をしていきたい。これが、私が世の中に広めたい夢であり、これからもずっとキープし続けたい未来です!

(文:矢口あやは 画像提供:株式会社HIKKY)

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ライター・編集・イラストレーター矢口あやは
大阪生まれ。雑誌・WEB・書籍を中心に、トラベル、アウトドア、サイエンス、歴史などの分野で活動。2020年に一級船舶免許を取得。

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