仕事のストレス、生活習慣?「眠れない」の原因と対処法をスリープマスターに聞いた

2022年8月8日

しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない、眠れないまま朝になってしまった——そんな悩みを抱えていませんか?寝れない原因と対処法を知るべく、寝具メーカー・ふとんの西川で「スリープマスター」の資格を持つ、森優奈さんのもとを訪れました。

「スリープマスター」とは、西川の「日本睡眠科学研究所」の認定資格。睡眠や寝具に関する幅広い知識を持つ「眠りのプロ」に与えられる称号です。店頭でもスリープマスターが活躍しており、来店者に有益なアドバイスを行なっています。プロの知識、伝授してください!

なぜ眠れないの?睡眠のメカニズムと不眠の原因

──そもそも睡眠ってどんなメカニズムなのでしょうか?

なんとなく聞いたことがあると思うのですが、私たちが眠る時、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という二つの異なる性質の睡眠が繰り返されています。ノンレム睡眠とは脳が休息した深い眠りの状態であり、逆にレム睡眠は脳の活動が活発な浅い眠りの状態を指します。

ノンレム睡眠とレム睡眠が1回ずつ訪れる間にかかる時間はおよそ90分。それを1セットとした時、1回の睡眠で4〜5セットが繰り返されます。

重要なのは、寝入り始めの3時間のうちに起こるノンレム睡眠。ここでもっとも深い眠りに落ち、成長ホルモンがしっかりと分泌されることで、日中の疲れを取ることができるのです。

──十分に疲労が回復できるような睡眠をとることが、いわゆる「良質な睡眠」なのですね。では、どうすれば睡眠の質を高めることができるのでしょうか?

寝る前に体をリラックスさせてから布団に入り、副交感神経を優位にさせることです。副交感神経とは、血圧を下げたり、筋肉を緩めたりする役割をもつ神経のこと。体がリラックスしている時やノンレム睡眠の時、活発に機能します。副交感神経が優位な状態のまま入眠すれば、寝入り始めの3時間で深い眠りにつきやすくなるのです。

逆に、寝る前にあまり良くない習慣を行うと、体がリラックスできないまま眠りについてしまいます。そして副交感神経のはたらきが弱くなると、ノンレム睡眠時に分泌される成長ホルモンも減少。結果として、あまり疲れが取れていないまま朝を迎えてしまうのです。

──「寝る前の良くない習慣」って、一体どんなものでしょう?

いちばん多いのは寝る直前のスマホ操作ですね。画面を見ながら寝落ちしちゃう人もいると思いますが、ブルーライトなどの強い光によって、脳が覚醒した状態のまま寝てしまうとリラックスできず、眠りが浅くなってしまいます。

同様に、寝る直前までのパソコンでの仕事もやめたほうがいいです。パソコンのディスプレイからは強い光が出ていますし、気持ち的にもオン・オフをつけにくくなり、リラックスして眠りにつくことができなくなってしまいます。できれば眠る1時間前、難しければ30分前までにはディスプレイを見るのを控えましょう。

──自分の身体がリラックスできるよう、準備をしなければいけないということですね。

「お酒を飲んだほうが眠れる」という方もいらっしゃいますが、寝る前の深酒もNGです。たしかに寝入りは良くなるのですが、お酒を飲むと深い睡眠に入れず、浅い眠りが続いてしまいます。利尿作用によって夜中にお手洗いに起きたまま寝付けなくなることも。カフェインの摂取や喫煙も覚醒作用があるので、18時以降はなるべく避けたほうがいいでしょう。

食事も身体が活性化してしまうため、「お腹が空いたから」とむやみに夜食を摂ることは控えるべきです。就寝の2〜3時間前に済ませておくことをおすすめします。

「眠れない」が続く時の対処法は「香り」「光」「音」「温度・湿度」

──良質な睡眠には、まずは寝る前の行動の見直しが必要ですね。そのうえで、睡眠環境を整えることもポイントになるのでは、と思うのですが、どのように整えていくべきでしょうか?

寝室などの睡眠環境について、ポイントになるのは「香り」「光」「音」「温度・湿度」です。まず寝る前に香りを嗅いでいただくことは、手軽にできるのでおすすめです。

ラベンダー、オレンジスイート、ローズ、カモミールなどの香りは特に効果的。ディフューザーがなくても、アロマオイルを1〜2滴、ティッシュやお湯を張ったマグカップに垂らして、枕元に置いていただけばOKです。アロマミストをピローケースや掛け布団のカバーにスプレーするのもいいですね。

また「出張先や旅先で寝つきが悪い」という人は、いつも就寝前に嗅いでいるお気に入りのアロマオイルやミストを持っていくといいと思います。「自分は眠る前にこれをする」というルーティーンを決めておくと、気持ちが切り替わりやすくなりますよ。

──香りなら簡単に取り入れられますね!「光」と「音」についてはいかがでしょう?

寝る時の明るさは0.3〜1.0ルクス程度がいいと言われるのですが、これは手元がぼんやり見えるくらいの明るさです。まぶたの皮膚はとても薄いので、豆電球くらいでも光を感じ、成長ホルモンの分泌量が抑制されてしまいます。ライトをつける場合は、フットライトなどの直接目に光源が入らない照明をおすすめします。

音は40デシベル以下――図書館で、本をめくる音が聞こえる程度の静けさが良質な睡眠につながります。幹線道路や繁華街の近くに住んでいる方は、雨戸や二重サッシ、厚手の防音カーテンを使っていただくと良いと思います。

──そしてもう一つのポイントである「温度・湿度」。季節の変わり目は気温が変化するだけで寝苦しくなりますよね。

寝室の温度は大事。冬は10℃以上、夏は28℃以下が理想です。同時に湿度も重要ですよ。温度は理想的なのに、湿度が極端に高い、という状況から寝つけなくなる人は多いんです。湿度は50%程度に保つことが、良質な睡眠につながります。

また、夏場は直接身体に風が当たらないようにだけすれば、クーラーは一晩中つけっぱなしで大丈夫。タイマーでクーラーを消す人も多いですが、暑くて寝苦しいほうが睡眠の質の低下につながります。寝室の温度・湿度をキープすることを心がけてみてください。

睡眠は「明日の活力を生むためのもの」

──先ほど「自分は眠る前にこれをする」というルーティーンを作ることがいい、とおっしゃっていましたが、ほかにも日常生活に取り入れやすい「良質な睡眠のための習慣」はありますか?

まずは、朝起きたら太陽の光を浴びてみてください。太陽の光を浴びると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されます。それがだいたい14時間後に「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンに変わるんです。つまり、朝に太陽の光を浴びることが、睡眠の準備のスタート地点になります。そして体内時計を乱さないためにも、できるだけ決まった時間に寝て起きるのが理想的です。

──朝の日光浴も重要なのですね!しかし、普段なら眠りにつける時間を過ぎても寝つけない時、どうすればいいのでしょうか?

どうしても眠れないまま朝になってしまいそうな場合は、いったん布団から出て、ストレッチをしたり、温かい飲み物を飲んだりしてみてください。おすすめはノンカフェインでありリラックス効果の高い、カモミールティーをはじめとするハーブティー。寝る前に飲むと落ち着けますよ。重要なのは、眠くなるまでは布団から離れ、気分を落ち着かせること。とにかく「布団=寝る場所」と脳に覚えさせることが鍵です。

──不眠気味の人にはそれぞれいろんなバックグラウンドがあると思うのですが、たとえば日々のイライラやストレスも、眠りに影響はあるのですか?

深く関係していますね。特にここ2、3年は、コロナ禍の影響ではたらき方やライフスタイルが変化し、体内時計の乱れや不安・ストレスを抱える人が増えました。「眠りの質が下がった」という悩みを抱え、来店するお客さまも多くいらっしゃいます。

しかも睡眠不足になるとイライラしやすくなるので、悪循環に陥りやすいんです。睡眠には日中に起こった感情やそれに伴うストレスを和らげて、メンタルバランスを整える効果があります。だからこそ「不安になることや落ち込むことがあって寝れない」という時、まずは先ほどお伝えしたような策を試してもらいたいです。

──「寝たら忘れる」と言いますが、あながち間違っていないんですね。

そうなんですよ。また「寝具が合わない」というのも一種のストレス。寝具が合っていないことは睡眠の質の低下につながり、疲労回復を妨げる原因にもなるんです。

「寝ても疲れが取れない」という人は、枕の使い方を変えてみてください。「枕は頭を支えるもの」と考え、頭だけちょこんと載せる方って多いんです。ですが、本来の枕は「首の後ろの隙間を埋める」のが役割。しっかりと肩口まで枕を敷いて、首を支えるのが正しい使い方です。

枕の使い方を変えるだけで、肩こりが楽になる方もいるかもしれません。また枕が合っていないと、肩こりだけでなく、頭痛やいびきの原因にもなります。しっかりと自分の高さに合った枕を選びましょう。

──では、自分に合う寝具はどう選べばいいのでしょうか?

店舗のスタッフに見てもらいながら実際に試して選ぶのがベストだと思いますが、ここでは一つの目安をご紹介します。

人は寝ている間、20〜30回程度寝返りを打ちます。仰向き・横向きに寝た時に、肩から首にかけて生じる隙間を埋められる幅・高さのある枕を選ぶことが重要です。

敷き寝具は、立っている時の姿勢をそのまま90度横に倒した姿勢が理想的な寝姿勢になります。柔らかすぎる敷き寝具を使うと腰の部分だけが沈み、逆に硬すぎると背中と敷き寝具の間に隙間が空く状態になるので、最適な姿勢で寝られる寝具を選びましょう。

そして寝た時に腰や肩だけに圧がかかるのではなく、いかに全体で身体を支えて圧を分散するかが大切になります。寝姿勢保持と体圧分散性。今お使いになられているマットレスがこのふたつのポイントをおさえられているか、一度チェックしてみてください。

森さんの「スリープマスター」認定バッジ。ふとんの西川へ行った際、このバッジをつけている人がいたら相談すべし。

睡眠は「今日1日の疲れを取るもの」だと考えている方が多いのですが、私たちスリープマスターは、睡眠を「明日の活力を生むためのもの」だと考えています。みなさん1日6〜8時間ほど眠っていると思うのですが、同じ睡眠時間であっても、その質を高めることは自分次第でできる。もっと充実した毎日を送るために良質な睡眠をとってもらいたいと思います。

(文:飯嶋藍子 写真:鈴木渉)

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ライター / エディター飯嶋藍子

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