「集中できない」はデスクが原因!? シゴトの作業効率を上げる4つの整頓術とは。

2024年6月11日

リモートワークや資格の勉強をがんばりたいのに、いざ自宅のデスクに向かうと、残った家事が気になったり、テレビを見始めてしまったりして、ぜんぜん集中できない……。そんな経験はありませんか?

「実は近年、そうしたお悩みを持つ方が増えています」と教えてくれたのは、整理収納アドバイザーの米田まりなさん。普段は不動産デベロッパーで勤務する傍ら、副業で企業や個人に整理・整頓をコンサルティングする片付けのプロフェッショナルです。

米田さんによれば、集中できないと悩む人のデスクには共通点があるのだそう。今すぐ、自宅を集中空間に変える方法を教えていただきました。

物が多い空間は脳に負担をかける

──米田さん、多くのはたらく人を悩ませる「家だと集中できない」問題はなぜ起きるんでしょう?

実は、そうしたお悩みを持つ方のご自宅を見せていただくと、物があふれている場合がほとんどです。

でも、これは仕方のないこと。コロナ禍でリモートワークが始まり、家は「休息」だけでなく、「仕事」や「勉強」などの役割も兼ねるようになりました。さらに、自宅で過ごす時間が長くなったことで、デスクや椅子に加えて、おしゃれな家具などを買い足した人も多かったのでは?

その結果、居住スペースは変わらないまま物が増え、あふれてしまっているご家庭が多いんです。

──家の中に物が多いと、集中しにくいんでしょうか?

目から入る刺激が脳に負担をかけ、集中力を低下させる、ということがさまざまな研究から分かっています。仕事をする際にデスクに資格取得のための参考書を並べる、経費精算を忘れないようにレシートなどを置く……、といったことはすべて集中の妨げになっています。

これはいわば、全力で走りたいのに点々とハードルが置いてあるようなもの。つまり、集中力を高める最大のコツは、自分の視界から余計なものを極力取り除くことなんです。

──良かれと思って置いていたのに……。整頓して並べてもダメですか?

集中力に限って言えば、その時に必要なものだけがデスクにある状態が理想。具体的に言えば、「デスクの周り1m以内は、今週使うものだけ」にするのがベストです。

そのためには片付けが欠かせませんが、コツさえ掴めばカンタンです。「出す・分ける・決める・戻す」の4ステップで、あらゆるものが片付きますよ!

集中力を高める4ステップの片付け術

【片付けの奥義 4ステップ】

Step.1 全部を出す
片付けたい場所にあるものを、“全て”取り出す。

●Step.2 頻度ごとに分類する
取り出したものを、「毎日使う」「1週間に1回使う」など頻度ごとに分類する。

●Step.3 頻度に従って定位置を決める
頻度の高いものから順に、取りやすい場所に配置する。

●Step.4 使ったら定位置に戻す
使い終わったら定位置に戻す。これを繰り返す。

──今からデスクの上を片付けてみたいと思います。米田さん、やり方を教えてください。

まず、デスクの上にあるものをすべて紙袋に移してください。その場を完全にゼロにします。ただし、毎日必ず使うことがわかっているもの(例えばディスプレイモニターなど)はそのままでも構いません。

そして、そのまま2週間ほど生活します。必要なものが出てきたら、紙袋から取り出して使ってください。

使った後は、デスクから手が届く範囲の棚などに定位置を決め、そのアイテムを使うたびに定位置に戻しましょう。

2週間が経つころには、使ったものだけが紙袋から出ている状態になります。もしかしたら、3割ほどしか使っていないかもしれません。紙袋の中に残ったものは処分するか、別の場所に保管しましょう。デスク周りはかなりすっきりするはずです。

──“全部出す”のは分かりやすいですね。それぞれの物の定位置の決め方は?

まず、手を水平に伸ばして上下30度の空間を「ゴールデンゾーン」と呼びます。人間の可動域では、このゾーンがストレスなくモノを出し入れできる範囲です。そこで、使う頻度が高いものほどこのゾーンに収まるように配置します。

また、「ひきだしを開けて、ファイリングする」などは面倒なので、できるだけポンと「置く」だけで完結するように配置するのがいいと思います。デスクの引き出しより棚に置くスタイルがいいですね。

この定位置がうまく機能しはじめると、デスクの上はいつもゼロの状態になります。

──1つのアイテムを複数の場所で使いたい場合は、定位置をどう決めるとよいでしょう?

基本的には、1つのアイテムにつき定位置は1つ。1つのアイテムに定位置が複数あると、物を探し回ることになるからです。もし複数の場所で使いたいなら「重複買い」がオススメです。

たとえば、私の場合は、スマホの充電器はデスク、ベッドサイドに加えて、通勤バッグの中、リビングのソファ横の4箇所の定位置があるので、合計4つあります。

──「使ったら定位置に戻す」ことを常に繰り返すのはハードルが高いような……。

確かに、本当に忙しいときは構っていられませんよね。その場合は、デスクの横に台を置き、「ぐちゃぐちゃでもいいから、何かを使ったらこの台に仮置きする」というルールをつくりましょう。

そして、週末などに改めて定位置に戻します。洗濯機を回している間など、家事のスキマ時間にラジオや音楽を聴きながら作業すれば、あっという間ですよ。

より上手に片付けるためのQ&A

──片付けるときに注意すべき点はありますか?

小さいころ、親に「片付けなさい!」と言われて、散らばったものを見えないところに隠して済ませた経験はありませんか? 片付けは学校で習う機会がないので、隠すことが片付けだと思ったまま大人になってしまうことも。

でも、この方法では物を取り出したり探し物をしたりするたびに部屋が散らかり、また隠して……、の繰り返し。これでは時間がもったいないですよね。大切なのは一つ一つのものに向き合い、使用頻度を考え、定位置をはっきりと決めることです。

──「出す・分ける・決める・戻す」は、デスク以外にも使えますか?

もちろん使えます。たとえば、3日連続でキッチン・カウンターの上をゼロにしてみましょう。デスク周りと同様に、キッチン・カウンターの上にあるものをすべて紙袋に入れて、使う頻度の高い場所に定位置を作っていければ、片付いた状態を保てます。

すると、「ちょっと掃除してみようかな」という気持ちになるかもしれません。実際にピカピカにすると、また気持ちが上向いて、次は洗面台、次は寝室……、と、どんどん片付けたい気分に。脳が疲れない、居心地のいい空間が家の中に増えていきます。もちろん、財布やバッグの中も「出す・分ける・決める・戻す」の4ステップでスッキリと片付きますよ。ぜひ試してみてください。

──部屋全体がスッキリと片付いていると、仕事に集中できそうです。ただ、使用頻度の低いものをしまうと、あっという間に収納場所が一杯に……。思い切って捨てるべきでしょうか?

いいえ、必要なものなら無理して捨てることはありません。まずは収納の方法を見直しましょう。

ものをバラバラにしまうのではなく、収納スペースにぴったりのサイズの箱を用意し、その中に詰めていくと余分なスペースを作らず収納できます。我が家では、押し入れにぴったりおさまるサイズの衣装ケースを12個買って、並べて使っています。

また、アウトドアグッズはコンテナに入れてベランダへ。季節ごとの洋服やスーツケースなどは収納サービス「サマリーポケット」に預けています。なので、居住空間だけ見るとミニマリスト風ですが、持ち物としては一般的な量だと思います。

「片付け」で自己肯定感も上がる

──ところで、米田さんは昔から片付けが得意だったんですか?

いいえ、もとは苦手な方だったかも。地方に生まれて、脚本家の祖父と研究者の父が持っている大量の本に囲まれて育ちました。大学生のときに東京で一人暮らしを始めると、実家の感覚でものを集めていたら部屋に物があふれて、片付けについて真剣に考えるようになりました。

その後、仕事でユーザーが預けている荷物のデータ解析をしたり、ユーザーのご自宅を取材したりといった調査を続けて、もっと良いご提案ができるようになりたいと思うようになって整理収納アドバイザーの資格を取得したんです。

それが今から5年前。学んでみると、想像以上に深みがあって面白い領域なので、どんどんのめりこんで今に至ります。

──どんな点を面白いと感じられましたか?

ずっと片付けって家事の一種だと思っていたんです。でも、実はロジカルシンキングに近いんですよ。データを整理するときとよく似ている。方法がわかれば、どんな人でも身につけられるスキルだと思います。

──部屋の片付けができるようになると、狭いお部屋でも快適に暮らせますよね。

そこも大きなメリットです。片付けが苦手だと、物があふれるので広い家に住みたくなりますよね。都心で広い家に住もうとすると家賃が高いので、なるべく郊外で、設備が悪くてもガマンして住むという選択をしがちです。

一方、片付けのスキルを身につけて、狭い部屋でも快適に暮らせるようになれば、都心で設備のいい家に住むという選択肢も選べるようになります。通勤時間を削減でき、余った時間を新しい趣味に充てられるかも。片付けにはうれしいメリットがたくさん詰まっているんです。

──教えていただいた4ステップは、お部屋だけでなく、財布やバッグなどに応用できる点もステキですよね。

もっと言えば、頭の中のモヤモヤも「出す・分ける・置く・戻す」の4ステップで整理できるんですよ。

まず、悩みや感情を一度全部吐き出して“見える化”します。そして、考える頻度の高いものから順に解決法を考えて、実行していくんです。こうすることでいつまでも悩んだり、混乱したりすることが減りました。

──マインドフルネスにもつながりそうなお話ですね。

実際、片付けが上手になって、自己肯定感も上がったと感じる方がいらっしゃいます。よく言われるように、まさしく“部屋の状態=ココロの状態”。私は「明鏡止水」という言葉がすごく好きで、きれいに整っている空間があればあるほど、「自分はよくやっている」と感じられるんです。

毎日、満足な自分で過ごせれば、幸せな時間も増えるし、チャレンジ精神も湧いてきます。雑多な部屋で、気もそぞろのまま過ごしていては人生そのものが無駄になってしまいかねません。

ぜひ、片付けの基本である4ステップを身につけて、集中力を高め、自分がしたいことに全力で取り組める空間づくりを始めてください!

(文:矢口あやは 写真:鈴木渉)

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ライター・編集・イラストレーター矢口あやは
大阪生まれ。雑誌・WEB・書籍を中心に、トラベル、アウトドア、サイエンス、歴史などの分野で活動。2020年に一級船舶免許を取得。

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