赤字から大逆転! THE FARMが貸農園から人気グランピング施設へ急成長できた理由

2024年3月21日

東京ドーム2.5個分の広大な敷地に広がる田畑、コテージ、キャンプ場、温泉&サウナ……、ここは千葉県香取市にある「農園リゾートTHE FARM」。

2012年に貸農園と収穫体験施設としてスタートし、2013年にはコテージやカフェ、BBQ場がオープン。2016年には国内最大級のグランピング施設が生まれ、2022年には温泉施設がリニューアル。現在は日本唯一ともいえる「農園リゾート」として、国内のアウトドア施設のなかでも屈指の人気を誇っています。

開業時は赤字まみれ。人気グランピング施設「農園リゾートTHE FARM」誕生秘話

━━田山さんがTHE FARMの運営に携わったきっかけは?

ぼくはTHE FARMがある香取市の中の佐原というエリアで生まれ育ち、大学卒業後は1年間くらいフリーターをしていたのですが、アウトドアのインストラクターを仕事にしたいと思い、地元で就職先を探していました。そんな時に、親会社である株式会社和郷がTHE FARMという新しい業態を始めるという話を聞いて、立ち上げ時期に入社しました。最初は貸農園業を行う施設だったんですよ。

━━今はグランピングテントやコテージのほかカフェや温泉を備える大規模な施設ですが、最初は貸農園だったんですね。

スモールスタートで、最初の4年間はお客さまも少なかったですね。現在200組ほどの会員がいる貸農園も、最初の会員数は一桁台。カフェには人が来ないし、コテージも今じゃ全然考えられないような激安価格でやっていて、立ち上げから4年間は毎年大きな赤字を出していました(笑)。

仮にコテージが満棟になっても経営的にうまくいかない。ということは、そもそもの経営計画が悪いんじゃないかと赤字を垂れ流してからやっと気付いて、売上を拡大するために舵を切ることになりました。

━━それだけの赤字があるなかでどんな打開策を……?

宿泊は増やしたいけど新たに大規模な投資をするほどのお金がない状況下で、投資金額が安く売上が見込めるのは当時潮流が見え始めていたキャンプだと思っていたんです。それで海外のキャンプ場をリサーチしていた時に巡り会ったのがグランピングでした。

当時「グランピング」という言葉はまだ日本に浸透していなかったのですが、ぼくはすごく可能性を感じたんですよ。そこで社長に「日本人にウケるか分からないけど……」と提案をしたら意外とおもしろがってくれたんです。

━━田山さんがグランピングに惹かれたのはなぜだったんですか?

ぼく自身、キャンプもアウトドアも好きなんですけど、せっかく高いお金を払うなら温泉旅館に行きたいなというタイプなんですよ(笑)。それに旅行の行き先って、友達同士にしろ、カップルや家族にしろ、女性が決めるケースが多い。なので、女性が行きたくなるようなキャンプ場ができないかなと考えていたんです。

そう考えると、エアコンが設置されていて、セミダブルのベッドが置いてあって、電源も付いていて、テントも常設、上げ膳据え膳でBBQができて、トイレが綺麗っていうことが必須だなと。そんなグランピング施設をつくりたいと思って、森のなかに1棟だけグランピングをつくることになりました。

ホテルのような内観のコテージ
コテージのテラス席のすぐそばでは焚き火をすることも可能

━━お客さまからはどんな反応だったのでしょう?

最初のお客さまは忘れもしないですね。小学校低学年の娘さんとご夫婦だったんです。高級車でいらっしゃって、旦那さんはスーツに革靴、奥さんはハイヒール。「そっか、こういう人たちが来るんだ!」と新鮮な気持ちでした。夜に宿泊の様子を見にテントまで伺ったんですけど、旦那さんと娘さんが一生懸命焚き火をしていてすごく感慨深かったですね。

━━その後、経営状況は回復したのでしょうか?

グランピングを作った2016年を境に、お客さまは爆発的に増えましたね。メディアから取材が殺到して、夕方のニュース番組や情報番組をはじめとする様々なメディアで一気にTHE FARMが露出したんです。

1棟からスタートしてその後は16棟のグランピングテントを運営していたのですが、16棟が埋まるようになると、おもしろいもので今度は元々あったコテージ棟も埋まるんですよ。カフェへの人の出入りも増え、貸農園も会員が増えていき、垂れ流していた赤字はグランピングを設置した2年後には回収できましたね。

夜になるとグランピングエリアは幻想的な雰囲気に

グランピングはホテル業。リピート率40%を実現する、高い水準のサービスとは?

━━キャンプ場やグランピング施設の運営って具体的に何を行っているのですか?

グランピング施設の運営とキャンプ場の運営って全然違うんです。THE FARMの畑と畑の間にキャンプサイトがあるんですけど、そこは標準的な「キャンプ場」の運営をやっています。区画整備をして、お客さまが帰ったらゴミや直火エリアを掃除して、次のお客さまのために薪を準備するというものですね。また、うちのキャンプ場は初めてテントを張る人がすごく多いので、設営のアシストや火のおこし方のレクチャーもしています。キャンプ場は、土日とシーズンで料金が多少変動するくらいで、プラン設定の幅があまりないんですよね。

一方で、グランピングの運営はほぼホテル業。基本として1泊2食・野菜の収穫体験付き・温泉入り放題なのですが、夕食付き、朝食付き、素泊まり、アクティビティなどの組み合わせも考えてプランを頻繁に変わることもありますし、ホテルのようなきっちりしたルームクリーニングも行っています。

テントサウナやバレルサウナもあります

━━コロナ禍でキャンプブームの大きな波が来て、キャンプ場やグランピング施設って急激に増えましたよね。

グランピング施設ってぼくらが始めた時は全国に3施設しかなかったんですけど、2022年の1年間で約300施設増えたと言われているんです。現在国内には800施設以上あるので、結構大変な時代になってきたなと思います。

━━大変な時代に向けて、何か新しい施策は考えていらっしゃるんですか?

新しく別荘ビジネスを始めます。THE FARMがスタートした時は、この周辺に100軒くらい民家があったんですけど、今は過疎化が進んでおおよそ50軒ほどの土地が余っているんですよ。せっかくだからこのエリアの地価を上げていけるような仕掛けをつくり、地域への恩返しができたらいいなと思っています。

━━大規模な新規事業を始めるのですね。

コロナ禍に二拠点生活を考える人も増えましたし、「このコテージ売ってもらえない? 田舎にこういう家がほしいんだよね」という声は結構いただいているので、需要はあるんだなと確信しています。

一方で、供給過多のなかでグランピング施設を増やし続けていくのは難しいんじゃないかなと思っています。ただ「グランピング施設」っていうだけではブランドにはならない。

だからこそ、確固たるTHE FARMブランドをつくっていかなければいけないと思います。

新たに設置された二階建てのコテージ。販売する別荘のモデルルームを兼ねているという

そのためには、THE FARMにしかない体験を提供し続けることが重要です。

うちは「農園リゾート」をうたっていて、すべてのプランに収穫体験が付いているんです。収穫した野菜を夜にBBQの食材として味わってもらうんですけど、収穫体験を通して嫌いな野菜を食べられるようになったお子さんたちも多く、親御さんたちから「あのピーマンを子どもに食べさせたい」「THE FARMに連れて行ったら野菜を食べられるようになるかも」という声をいただくようになったんです。

これは「農園リゾート」と冠しているこそできることだし、他社さんがマネしようと思ってもできないこと。最初はお子さんの様子を見ているだけだった親御さんたちが、子どもそっちのけで大根を抜いている姿を見ると「やったな!」と思いますね(笑)。

農園エリアにはヤギさんもいます

━━現在なかなか予約が取れない人気グランピング施設となっていますが、人気の要因は?

立地や価格帯も大きいですが、やはりコアになるのはここにしかない体験があるということ。THE FARMのグランピングは、いわゆるキャンプ場として高価格帯の部類に入ると思うのですが、オープンのタイミングで、会社の上層部にも「こんな高い値段設定じゃ誰も泊まらないだろ!」ってめっちゃ怒られました(笑)。でも、新しいカルチャーをゼロから作っていく時って、それなりの批判を受けてもやらないといけないし、むしろ批判があるからこそうまくいくんじゃないかとも思っています。

多くのお客さまは、泊まる前は「ちょっと奮発して来ました」って言うんですけど、帰る時は「このサービスでこの値段は安い」と言ってくださるんですよ。

━━それはなぜでしょう?

先ほどもお話ししたように、うちのグランピングプランは基本1泊2食付き。夜はBBQ、朝食ビュッフェで、温泉入り放題、それに加えて野菜の収穫体験が付いて焚き火も含まれているんです。他の施設の料金体系では基本が素泊まりで、夕食を付けて、朝食を付けて、アクティビティをやって……ってどんどん金額加算されていく。同じ体験を提供しようとすると、結果的に同じくらいの価格になるので、実はうちが高いわけではないんですよ。

また、THE FARMは「お客さまに100%の満足感を与えられないのであれば、提供しない」という方針があるんです。たとえば、グランピングって天候に左右されるので、強風時にはこちらからお客さまにキャンセル、返金のお願いをした上で、次回お越しいただいた時に使える割引チケットを渡すようにしています。「これをやらないとおもしろくないよね」っていうものを全部体験できるような時じゃないとなるべく受け入れないですし、全部体験してほしいからこそ様々なサービスをインクルードしたプランで売っているんですよ。その努力の甲斐あってか、現在お客さまのリピート率は30%を超えているんです。これはグランピング施設のなかではとても高い数字ですね。

アイデア次第で体験リゾートの可能性はどこまでも広がっていく

━━新たに別荘の事業もスタートしますが、今後挑戦したいことはありますか?

別荘事業と並行してフランチャイズビジネスも進んでいます。実は全国の市町村がTHE FARMのフランチャイズをやりたいって手を挙げてくれているんです。そのエリアの企業や自治体と一緒になって、地域の課題解決を一緒にやっていけたらと思っています。

ちなみにグランピングに関しては、富津市のマザー牧場での取り組みが進んでいるんです。そこは「牧場グランピング」といって朝に乳搾り体験ができて、さらにチーズを作って、というアクティビティをパッケージングしたプランを用意しています。キャンプ場は「富士山が見えなきゃダメ」というようにロケーションが差別化ポイントになるので、限界があるんです。ですが、グランピングは、サービスの質や地域の魅力と掛け算することで付加価値を生み出せるので、フランチャイズとして展開しやすいのかなと思います。

事業を通じて雇用が生まれるというだけじゃなくて、THE FARMの施設があることで新しい価値が生まれ、やがて地価が上がっていくという未来がつくれたら最高ですね。

━━これからキャンプ場やグランピング施設を始めようと考えるのは、おすすめできますか?

世の中にあるのと同じキャンプ場やグランピング施設をやろうと思ったら大変です。でも、グランピングが新たなスタイルとして受け入れられたように、アウトドア体験ってもっと多様な解釈の仕方があるはずなんですよ。

そういうアイデアを持ってキャンプ場やグランピング施設を始める人がいたら、投資したいぐらいに思っています(笑)。供給過多とはいえ、まだまだ可能性があるし、おもしろくできる業界だと思います。

(文:飯嶋藍子 写真:N A ï V E)

※ この記事は「グッ!」済みです。もう一度押すと解除されます。

13

あなたにおすすめの記事

同じ特集の記事

  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
ライター / エディター飯嶋藍子

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
ライター / エディター飯嶋藍子

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • バナー

  • バナー