高齢者VTuberアイドルグループ「メタばあちゃん」はなぜ生まれ、バズったのか?

2023年7月21日

これから超高齢化社会を迎える日本。これからはシニア世代もはたらき手として期待されます。「シニアになってまではたらきたくない……」と感じる、みなさん。もしかしたら、意外と楽しいかもしれませんよ?

連載企画「半世紀後も「はたらく」はきっと楽しい。」では、年齢や経験に囚われず新たなチャレンジを行うおじいちゃん・おばあちゃんにお話を伺っていきます。

第一回に登場するのはアイドルグループ「メタばあちゃん」の0期生として活動するVTuberひろこさんです。

「メタばあちゃん」とは、2022年に結成された、後期高齢者の女性4名で構成されるVTuberグループ。「元気が有り余っているユニークなおばあちゃんたちを、メタバースの世界で人気アイドルに育てていく」をコンセプトに活動をスタートさせました。

YouTube上に動画を投稿するやいなや、話題沸騰。人生経験豊富なひろこさんによるお悩み相談や、メタバース上でのお出かけ企画など、日々投稿される動画には国内外からのコメントが多数寄せられています。

「インターネットもよう分からん」と話すひろこさんは、なぜVTuberとしての活動を始めたのでしょうか。そして、80歳を超えてもなお新しいことにチャレンジし続ける、ひろこさんのモチベーションの源泉とは? 「メタばあちゃん」のプロデューサーを務めるお孫さんの協力の元、オンライン取材にてお話を伺いました。

思いつきで動画を公開、初日にバズる。メタばあちゃんのシンデレラストーリー

──おはようございます。

ひろこさん:あら、これ今つながってるの? 

──はい、聞こえています。本日はよろしくお願いします。

ひろこさん:なんでも聞いてください。孫も横におりますんで。

──ありがとうございます。まず、ひろこさんが「メタばあちゃん」として活動することになったきっかけから教えてもらえますか?

ひろこさん:それはね、孫がちょっとこれ(※編集部注:台本)読んでみてって言うもんだから、言われた通りに読んだだけなんよ。なんで、VTubeっていうのがまだよく分かってないんですわ。

──よく分からないまま動画を更新し続けているのですか……?

ひろこさん:やってみたら、みなさんが沢山コメントをくださるのでね。ああ、みんな観てくださっているんだと思うので、段々楽しみになってきてね。

──反響があったから?

ひろこさん:そうそう。おもしろくってね。

──お孫さんは、なぜひろこさんをメタばあちゃんにしようと思ったのでしょう?

お孫さん:僕はもともとメタバース関連の仕事をしていたんです。それで、おばあちゃん世代の方にもメタバースを体験して欲しいなと考えていたら、「メタばあちゃん」て言葉が浮かんで。語呂がいいねってことでテスト的にはじめてみたんです。

──最初は思いつきだったんですね。

お孫さん:そうですね。ただ、自分のおばあちゃんを「メタばあちゃん」にしようとは考えてなかったんですけど、人に説明するのも難しいのでまずは形にしようとおばあちゃんにお願いしたんですよ。そこで「初めまして、メタばあちゃんのひろこ85歳です」という自己紹介動画を公開したら、初日から反響がすごくって。そのまま0期生として「ひろこ」が誕生しました。

──すごいシンデレラストーリーですね。その後、さまざまな動画を更新されています。スタートから3カ月で50本とかなり精力的に活動されていますが、ひろこさんは動画収録を大変だと思うことはないんですか?

ひろこさん:大変ではないですよ。毎朝孫と話し合いをしながらやっているので難しいこともないし。

──頻繁に打ち合わせをされているんですね。どれぐらいの頻度で動画制作をしているのですか?

ひろこさん:始めたころは毎日やってたんだけどね、今は飛び飛びだなあ。最近はテレビにも出たりするから、取材の方が多いかもしれんね。

──芸能人みたいですね。テレビに出演して反響はいかがでしたか。

ひろこさん:反響はよう分からんのですけど、錦鯉さんとお話しできたのは良かったですね。

──錦鯉さんって、芸人の?

ひろこさん:はい。おもしろいから好きなんです。テレビで観てますよーて、そんな話ができてうれしかったですよ。

──これまで、印象に残っている企画はありますか?

ひろこさん:恋愛関係ですね。

──恋愛?

ひろこさん:ダメ男と付き合ってるんですって相談を受けて。その話はおもしろかったですね。

──ああ、お悩み相談の企画ですね。確かにひろこさんにお話を聞いて欲しい人は沢山いそうです。

ひろこさん:あと「受験勉強が難しい」って相談もありましたね。私は親が早くに亡くなって兄弟は4人もおるし、学校に行ってないんですよね。そやから、「勉強できる今が1番幸せなんやないか」ってアドバイスしたんです。

──お悩み企画を行うにあたり、大切にしていることはどんなことでしょう?

ひろこさん:専門的なことは言えんので、いい加減なことになっちゃうんでいけんのやけど。でもね、「私は知らん」ってぐらい、いい加減な方が面白いんじゃないかなとも思うんです。

楽しんでもらうためには、何より私がやりたいことをやるのが1番。とにかく、これまでの人生で会ったことのないような皆さんと仲良く会話できたらいいなと思ってます。ふふふ。

正体を知っているのは「親戚だけ」

──ひろこさんはこれまでどんなお仕事をされてきたんですか?

ひろこさん:肉体労働ばっかりですよ。頭の中が空っぽなのでね。昔は問屋さんではたらいていて、袋詰めされた30キログラムの砂糖や粉をうどん屋さんやお菓子屋さんなんかに配達していました。

──問屋さんには長く勤められたんですか?

ひろこさん:30年以上はやってたね。それで、60歳になって身体が限界になってやめて、それからは飲料水の工場ではたらいてたんです。

──体力も落ちてきますもんね。

ひろこさん:そうそう。でも、肉体労働やってきとるもんでしょ。だから、みんなが「あれ担いで、これ担いで」って。結局力仕事だったのよ。70歳ぐらいまではたらいたかなあ。それからは仕事をやめて、ずっと家にいますね。

──VTuberになる以前はどんな生活をしていたのでしょうか?

ひろこさん:毎日昼までテレビをみて、午後はプール。1週間のうち6日はプールに通ってるから結構疲れるんですよ。これが元気の秘訣です。

──メタばあちゃんの活動を始めて、生活が大きく変わったんじゃないですか?

ひろこさん:いやあ、そんなこともなくてね。始めて1週間は誰にも話さなかったんですが言いたくなってね。それで、しばらくして孫が親戚に連絡してくれたんです。「おばあちゃんが出とるから観てくれ」いうてね。じゃから、私がやっとるいうのは親戚ぐらいしか知らんのですよ。

それで、親戚も「息子に教えてもらわんとようみいひん」言うてね。携帯電話も持ってないから、自分で観れないんじゃって。

──そうだったんですね。

ひろこさん:プールで会う友達もみんな私と同じ年寄りですから、今の流行りものなんか観てないんよね。だから、私がVTuberじゃってことは、だーれも知らないと思いますよ。

──もし聞いたら、さぞ驚かれるでしょうね。

ひろこさん:あ、そういえば、こないだ近所の人に言ってしまったんですね。そしたら、「よかったよー。そのまま続けたらええやん」って言ってくださって。ただ、「顔は出しちゃいけんよ」いうてましたね。イメージが違うから。

──プロ意識を持ってやっていらっしゃるのですね。今後も身近な人にはあまり言わずに活動を続けるのでしょうか?

ひろこさん:そうですね。だけど、孫が忙しくてあんまり動画を更新できなくてね。

最初は1回で終わりじゃと思っとったけど、なかったらなかったでさみしゅうて。今では毎日でもしたい気持ちなんですよ。

──やりがいになっているんですね。

ひろこさん:とにかく楽しいんですわ。特に、朝孫に、皆さんからいただいたコメントを読んでもらうのは楽しみですよね。

メタバース空間で世界を旅するばあちゃん

──今後チャレンジしてみたいことはありますか?

ひろこさん:私は生まれ育った場所から出たことがないからね。孫が……あれはどう言うんかね。パーシャル(※編集部注:バーチャル空間)やっけ。旅行に連れていってくれたらいいな思って。

お孫さん:メタバース空間上で旅行に行っているんですよ。

ひろこさん:そうそう。実際には行けないから絵で(※編集部注:メタバース上で)孫に連れていってもらって。この前なんか沖縄旅行したんやけど、楽しかったし。

──すごいですね。でも、メタバース上で満足できるのでしょうか?

ひろこさん:そうですそうです。あと、台湾の方も動画をよく観てくれてるらしいので、台湾にも行ってみたいですね。

──海外からの視聴者もいらっしゃるんですね。

ひろこさん:多いみたいですね。私は外国語は分からんから孫に訳してもらってコメントを読んでもらいよるんですけど。

お孫さん:台湾の有名なインフルエンサーの方がYouTubeで紹介してくれて、それで広がったんですよ。

──お家を出ずして世界進出ですね。

ひろこさん:台湾以外の人もようけおるみたいやけど、よう分からん。はっはっは。

お孫さん:タイ、ベトナムといったアジア圏、あとはアメリカ、フランス、ブラジルの方がコメントくださっていますね。

──メタバース上で、国内旅行だけでなく、海外旅行にも行けますね。

ひろこさん:行ってみたいですねえ。楽しみに待ってるんです。ふふふふ。

──どんな方々に観て欲しいという考えはあったんでしょうか?

ひろこさん:私が年ですから、同じぐらいの人がみてくれるんかなあ思っとったんやけど、コメントを読んでもらったら20代とか若い人の方が多いんよね。じゃから若い人向けに切り替えないかんなと孫と話しました。

年寄りはようみとらんのですよ。携帯電話を持ってても「ここ押したら息子とつながる」とかしか分からんのじゃないですか。

──同世代の方からのコメントは……

ひろこさん:ないね。全然。

お孫さん:少しはあるんですよ。視聴者の方も、代わりにお孫さんがコメントしてくれています。

──家族で一緒に観ているんですね。

お孫さん:家族みんなで楽しむコンテンツとして受け入れられているみたいですね。

少子高齢化への不安をふき飛ばすアクティブなばあちゃんの存在

──それでは最後に、今後の目標を聞かせてください。

ひろこさん:私は0期生なんじゃけど、今度1期生が出るから「私は引退かな」言うてたんです。そしたら孫が「そんなこと言わんと続けないかん」って。

──1期生とは一緒に活動するんですか?

ひろこさん:そこまでは孫に聞いてないから分かりません。はっはっは。やけど、先輩やからアドバイスはできるかな思うとりますよ。

お孫さん:1期生の方はもともとアイドルを目指していた方や、カラオケスナックを経営している方がいるので、歌をメインに活動する予定です。ひろ子は歌が得意ではないのでコーラスで参加ですかね。

0期生のひろこさんに加え、1期生として3名が選出された。

──また違った個性を持った方々が参加されるんですね。

お孫さん:1人でも応募があったらいいなと思っていたんですが、60件以上も応募が来たんですよ。

──すごい!

お孫さん:アクティブなおばあちゃんたちが世の中にはこんなに沢山いるんだって驚きました。息子さんやお孫さんが応募したという人ももちろんいるのですが、自己エントリーが思いのほか多くて、なんたる野心だって思いましたね。

──少子高齢化が問題視されていますが、そんな話を聞くと明るい気分になりますね。

お孫さん:そうですね。ひろこも段々とノリノリになってきているので、負けずに頑張ると思いますよ。

ひろこさん:やれるとこまでやってみようかいうて孫と話してます。

──やれるところまで。

ひろこさん:はい。でも、何歳まで生きるかな。それは分かりませんよねえ。

VTubeを始めてから毎日家族でわいわい話し合いするようになって楽しいですからね。元気でいる以上は、みんなで楽しくやっていきたいんですよ。

──素晴らしいことですね。今後の活動も楽しみにしています。

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