30代とのタッグでシニア世代のベンチマークに!67歳のシニアインフルエンサー、きょうこばぁばの挑戦

2023年11月2日

ふわりと優雅なグレーヘア。品のあるファッションとアクセサリー。さらに、指先に塗られた赤いマニキュアも目を惹きます。

カメラに向かい、慣れた様子で動画撮影を行うのは、今年で67歳になるシニアインフルエンサーのきょうこばぁばさん。旦那さんと娘さん2人、愛犬1匹の5人家族で、長女はモデルのAgathaさん、娘婿はミュージシャンで俳優のハマケンこと浜野謙太さんです。

Instagramを中心に活動を始め、2020年からユーチューバー……ならぬ、ユーチュー婆としてシニア世代に向けた簡単お手軽レシピやファッション情報などを発信中。それらが人気を集め、いまやInstagramのフォロワー数は8.7万人、YouTubeの登録者数は5万人にも登っています(2023年9月時点)。

「何事も『えいや』と挑戦すると、新しい世界が拓けるんですよ」

そう話すきょうこばぁばさんは、Instagramを通して何を伝えたいのでしょうか。加えて新しいことに軽やかな一歩を踏み出すヒントもお伺いしました。

“インフルエンサー”という言葉のない時代から、発信する楽しさを知っていた

きょうこばぁばさんがInstagramを始めたのは、57歳のとき。始めた当初は、自身の趣味の一つであるお料理の投稿をメインコンテンツにしていました。

見るだけでお腹がすきそうなお料理の数々。これらの投稿が段々と反響を呼び、投稿を続けて4〜5年後にはフォロワーが3万人を突破したそう。そのタイミングでなんと、料理サイトのプロデューサーにInstagramのDMで声をかけられ、本を出版することに。

Instagramに投稿されている料理の数々

「当時はまさか、Instagramをきっかけにして私がお料理の本を出版するなんて思いもしなくて。まだ “インフルエンサー”という言葉もない時代。自分が好きでしていた発信がこんなふうに形になることもあるんだと驚きました」

本の出版を皮切りに、食に関連したイベントへの招待も届くようになり、新たな場での交流も生まれたそう。実は、インターネットを使った発信は最近になって始めたことではありません。

「実は40代のころから、インターネットを使った発信はしていて。当時は好きなアーティストさんがいて、その方を応援するためにファンが集まれるサイトを自作していたんですよ(笑)」

きょうこばぁばさんは若いときからインターネットを使い、好きなアーティストの情報をファンに向けて発信したり、日記を書いたりして、インターネットを通じた発信や交流の楽しさを感じていたのです。その後、時代の移り変わりとともにmixiやアメーバブログなどメディアを変え、Instagramへの移行も自然な成り行きでした。

「ファンサイトをつくっていたときも、ライブなどで実際にお会いしてお友達なる方もいらっしゃって。インターネットを通じて知り合うと、普段の生活ではなかなか出会えない方々と出会えるんですよね。そうそう、コロナ禍の直前にもInstagramを通じて大きな出会いがありました」

30代のパートナーが気付かせてくれた、新しい私の強み

現在、きょうこばぁばさんはInstagramと並行してYouTubeでも活動されていますが、その活動の裏には1人のパートナーとの出会いがありました。

「森田という30代の男の子と一緒に企画を考えたり、編集作業をしたりしているんですが、彼ともInstagramを通じて知り合いました。始めは、突然『シニア向けのYouTubeを一緒にやってくれる人を探していて、会ってください!』とのDMが送られてきて(笑)。どうして私に連絡をくれるのか分からず、何度かお断りの返信をしたんです」

しかし、その後も森田さんからDMが届き、熱意に負けたきょうこばぁばさんは、一度森田さんと会ってみることに。話してみると、2人が持つ思いが同じだったことが分かりました。

YouTuberになる前、私は15年間、介護士をしていました。そのとき、施設の利用者さんが『私が遊びにいけるのはデイサービスぐらいしかない』と話していて、若者世代やファミリー層に向けた情報発信はたくさんあるのに、高齢者本人に向けた情報提供の少なさを感じていたんですね」

そのため今では、シニア世代に向けたファッションやスキンケアなど、お金をかけずに生活を豊かにするヒントを投稿しています。

「年齢を重ねてもやりたいことをやれる方法はいくらでもあるし、行ける場所だってたくさんある。なのに、そのことがシニア世代には届いていないんです。私がSNSで発信をしているのも、そういった情報提供の場を一つでも多く増やしたいと感じているからなんです」

実は森田さんは介護・福祉業界で理学療法士として勤務しており、日々シニア世代と接する中で友人と一緒に出かけたり、オシャレを楽しんだりするアクティブシニアを増やしていきたいとの想いを持っていました。同じ目的を持っていると意気投合した2人、森田さんはきょうこばぁばさんのプロデューサーとしてともに活動をするようになりました。

さらに、今やきょうこばぁばさんの1つのカテゴリーとなっているファッションも、森田さんからの「発信してみるのは、どうですか?」という提案がきっかけだったそう。

「プチプラでお金をかけない洋服選びはみんな知りたいんじゃないかって言われて。最初は『そうなのかな?』と、半信半疑だったのですが、ファッションの投稿を始めると、フォロワー数もどーんと増えてびっくりしました(笑)」

自身が発信したいことと、視聴者が知りたいことのギャップを埋めるため「日々、森田と試行錯誤してるんです」と笑うきょうこばぁばさん。YouTubeを始めたのも森田さんからの提案で、今後はTikTokにも挑戦しようか検討中だという。年齢差を越え、森田さんの意見も素直に受け止めることが新たなチャレンジに向かうきっかけになっているのかもしれません。

「同じ志があるからこそ森田とはぶつかり合うこともよくあります(笑)。それでも『いろんなことをやってみないとですね!』と、メディア特性ごとに異なる企画や拡散方法を考えてくれているので、信頼しています」

YouTube投稿動画より

Instagramは30代~40代から、YouTubeは60代からの視聴が多い

お料理、ファッションなどジャンルの拡大、そして発信媒体数も増やし、徐々にフォロワーを獲得していったきょうこばぁばさんですが、フォロワーの増え方に対しては「いまだに分からない」と話します。

「増えるときは、ほんとにいきなりなんですよね。ファッションの投稿を始めてからは、たとえば、別の媒体で投稿が紹介されると、その媒体をきっかけにして私のことを知ってくださる方もいて。ほかにもInstagramのリールやYouTubeのショートなどの短い動画が、ファッション文脈でたまたま流れてきたから、というお話もいただきます。

フォロワー数を狙った企画がうまく結果に結びつかないこともあるので、SNSってやっぱり難しいですね」

そう話す表情は朗らか。「だからこそ、挑戦のしがいがあるんです」と答えてくれました。

フォロワーの年齢層の内訳を伺うと「これが、メディアごとにバラバラなんですよね」とのこと。

「Instagramのフォロワーは30代〜40代の方が多く、60代のフォロワーさんは1割にも満たないです。一方でYouTubeは、60代以上の方の視聴率が高いんですよ」

この違いを、きょうこばぁばさんと森田さんはメディアの入口にあるのではないかと考えています。Instagramの場合、投稿を見るためにはアカウントをいちからつくらなければなりませんが、一方YouTubeはサイトにアクセスすれば誰でも好きな投稿を見ることができます。そういった手間の違いが、メディアごとの年齢層に現れているのかもしれません。

「一人で発信していたときには、そういった分析をしたことがなかったので、森田と活動している中での気づきはたくさんありますね。発信している以上、やっぱり多くの人に届けたいですし、見てほしいと思っています」

そんな中、毎日幅広い年代からたくさんのコメントや「いいね」などの反応が届きますが、きょうこばぁばさんは同年代からの「真似してみました」「私も行ってみたいです」といった反応に勇気をもらうことが多いそう。「シニア世代に向けた情報発信」という目標に少しでも近づけているという充実感が、投稿を続ける活力になっています。

今日を、生きていく。小さな「えいや」が世界を広げてくれる

SNSでは豊かな日常生活を発信しているきょうこばぁばさんですが、それでも老いることへの不安も感じていると話してくれました。

「当然ですが、私も歳をとることは怖いです。今は身体が自由に動くけど、これからは体力も落ちていきます。それから、金銭的な不安ももちろんあって。SNSではそういった姿は見せていませんが、これから先の不安を考えだすと止まらなくなってしまうこともしょっちゅうありますよ」

だからこそ、きょうこばぁばさんは常に「今日は今日で生きる」と考えているそう。今日を生きなければ、明日は生きられない。きょうこばぁばさんにとっての未来は5年後、10年後ではなく、明日のことまで。

「“今”という感覚を大事にしていますね。お金や時間がなかった時代もありましたが、今、SNSならお金もかけず始められますし、プチプラでも充分豊かな生活ができる。仕事を引退した今は、時間もたっぷりありますからね」

SNSをしているおかげで、日ごろから身なりにも気を遣うように心がけており、緊張感のある生活に充実感も感じています。さらに、森田さんや娘さんたちなど若者世代と話をすることで、常にトレンドを取り入れることにも余念がありません。

「流行りのものは、分からないながらも触れるようにしていて。最近は娘たちから教えてもらった韓流ドラマを見たり、 K-POP を聴いたりしています(笑)。その影響で、韓国料理にも挑戦しているところなんですよ」

ほかにも、キャッシュレス決済や無人レジなど、生活の中の新しいものにも挑戦しているきょうこばぁばさん。新しいことに取り組む、思い切りの良さの秘密はなんなのでしょうか。

「挑戦と肩ひじ張らずに、『えいや!』ぐらいで楽しんで考えること、じゃないでしょうか。新しいことって、始める前から自分自身でハードルを勝手にあげてしまっていることってないですか?いざやってみると、案外できちゃった、みたいな(笑)」

「私の場合、新しく挑戦したことは娘たちとの会話のきっかけにもなりますし、投稿の種になることもあって。年齢を重ねた今だからこそ楽しめることがたくさんあると思っているし、変わっていく世の中に置いていかれないよう、私も楽しみながら進んでいけたらと思います」

(文:田邉なつほ)

※ この記事は「グッ!」済みです。もう一度押すと解除されます。

17

あなたにおすすめの記事

同じ特集の記事

  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
ライター田邉なつほ
新卒で建築業界の営業に従事し、ライターに転身。介護・福祉業界の採用支援をサポートするスタートアップ企業で業務委託ライターを勤め、編集プロダクションで編集者も経験。現在は取材記事の執筆、メディア運営、コンテンツ制作に携わる。

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
ライター田邉なつほ
新卒で建築業界の営業に従事し、ライターに転身。介護・福祉業界の採用支援をサポートするスタートアップ企業で業務委託ライターを勤め、編集プロダクションで編集者も経験。現在は取材記事の執筆、メディア運営、コンテンツ制作に携わる。

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • バナー

  • バナー