自分の志をとげるため、吉田松蔭は牢獄で何をした?

2021年2月12日

現代に語り継がれる偉人たちにも、私たちと同じように悩み、もやもやしていた時期があるもの。そんな偉人の等身大の姿から学ぶ『実は完璧ではなかった偉人の裏話』。第4回目は吉田 松陰に迫ります。

アメリカへの密航が失敗し、牢獄に入れられてしまった吉田松陰

吉田松陰といえば、高杉晋作や伊藤博文など、幕末から明治にかけて活躍する多くの人材を育てた松下村塾が有名。歴史の授業で学んだことあるという方も多いのではないでしょうか。

しかし、実はこの松下村塾、松陰が主宰したのはわずか2年ほどでした。

この2年の間に90人の生徒を教え、後に幕末や明治時代の中心人物を育てていった松下村塾にはどのような教えがあったのでしょうか。また、その教育法を築くまで、松陰はどのような人生を歩んでいたのでしょうか。

今回は松陰の人生を振り返りながら、その挫折や苦労を紐解いていきたいと思います。

1830年、山口県の荻市で生まれた松陰は、兵学師範の叔父のもと、厳格な指導を受けて、兵学者として育ちました。

人生の転機となったのはペリーの来航。松陰が22歳のときの出来事でした。

浦賀にペリーの艦隊が現れたと聞いた松陰は、好奇心から一目見ようと駆けつけます。そこで巨大な黒船を目の当たりにした松陰は、これまで学んでいた兵法がまるで歯が立たないと悟りました。松陰は西洋の兵法を学ぶ必要性を感じ、日本に西洋の技術を持ちこめないか、と模索。そして、弟子の金子重之助と黒船に乗り込んでアメリカに渡る計画を企てるのです。

ペリーが浦賀に再航すると、海岸に繋いであった小舟に乗って、黒船に向かった松陰。なんとか黒船に辿り着き、アメリカ側と交渉をすることができましたが、アメリカ行きの申し出は拒否されてしまいます。下田に戻された松陰と重之助は密航を企てた罪に問われ、牢獄に入れられてしまうのです。

相手の長所を見出し、互いが先生になるという考え方

しかし、松陰の強い日本にしたいという志は途絶えませんでした。

松蔭は牢獄にいる時間を無駄にしてはならないと思い、他の囚人たちとコミュニケーションをはかります。

そのつき合いの中で、松陰はそれぞれの囚人が得意な能力を持っていることを知りました。そして松陰は、互いに得意なことを教え合うということを始めます。

俳句が得意な囚人がいれば、その者を師とし、教えを請う。また、書のうまい囚人からは書を学ぶ。そして、松陰はもともと研究していた『孟子』の考え方を囚人のみならず牢番たちも相手に伝えはじめました。

権力・権威を持つ偉い先生が一方的に弟子たちを指導するのは教育ではないと唱え、囚人たちが教え合い学びあう関係を創り出したのです。「牢獄で一生を過ごすんだ」と諦めかけていた囚人たちも松陰と過ごす中で、生きる希望を見つけたといいます。

でも松陰はなぜ、このようなことをしたのでしょうか。

それは牢屋を少しでも幸福な場所にしたいという松陰の想いと、どんな人間であれ、誰にでも長所があることを信じていたからです。

人賢愚ありと雖も各々一二の才能なきはなし。
湊合して大成する時は必ず全備する所あらん。

現代訳:人間には能力の違いはあるが、誰にでもすぐれた才能があるはずである。そこに全力を傾けて、長所を伸ばしていけば必ず立派な人間になることができる。

吉田松陰著 『吉田松陰全集 第2巻』 福堂策より

と松陰はのちに記しています。

そしてこの考え方は松下村塾の在り方にもつながっていきます。

人の可能性を信じることが良い仕事につながる

1年半という牢獄での生活の中、松陰は500冊以上の本を読破し、囚人たちと教え合いました。その後松陰は出獄を許され、自宅に幽閉されることとなります。

その幽閉先ですでにあった塾を受け継ぎ、松陰が主宰となったのが松下村塾でした。松陰は、武士も町人も、身分に関係なくさまざまな人間を集め、分け隔てなく入塾させました。そして、獄中ではじめた教え合い学び合う関係をこの松下村塾でも実践します。

文学を教えるだけでなく登山や水泳などを行ったり、ときには日本とアメリカの関係性について議論を深めていきました。

松下村塾はこの教育法で多くの政治家・文化人を輩出し、幕末に多大な影響を及ぼしていきました。

その後、松蔭は1859年、思想家たちが次々と逮捕された「安政の大獄」で処刑され、その命を終えることになります。ですが、処刑されるまでの2年間、松下村塾は高杉晋作や伊藤博文、久坂玄瑞など、幕末から明治にかけて活躍する約90名の生徒を育て上げました。

志を貫くために、それぞれに何かしらの才能があることを信じ、ともに教え合うことで一緒に高めあっていくことを大切にした松陰。

これを読んでいる方の中には、入社当初に抱いていた志が思うように実現できなかったり、プロジェクトの半ばで挫折しかけている方がいるかもしれません。

もしかしたら、自分一人でなんとかしようとし過ぎていませんか? 一人の人間にできることには限りがあります。

松蔭が身分に分け隔てなく塾生を集め、そこから多くの大人物が生まれたように、あなたの周りでも、思いもよらない成長をする人がいるかもしれません。そして、その人があなたの強力な仲間になるかもしれないのです。

周囲の人の可能性を信じて、手助けをする。遠回りのようでいて、それが結果的にあなたの夢を叶えてくれるのです。

(文/インディ+ヒャクマンボルト イラスト/榎本よしたか)

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編集・ライター・カメラマンインディ
昼は編集・ライター・カメラマン、夜はミュージックバーのバーテンダー。人の懐にすっと入っていくキャラクターを活かした取材が得意。
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