「動かないプロジェクトはなぜ生まれるの?」プロジェクト推進専門会社のコパイロツトに聞いた

2022年11月29日

新規事業の立ち上げや業務改善、クライアントへの提案など、仕事とは多くの業務が複雑に絡み合ったもの。ある目的を達成するために「プロジェクト」がスタートしたものの、なかなかうまく進まずにもどかしい思いをしている人も多いのではないでしょうか。

「どうしたらプロジェクトがうまく進むのだろう」「プロジェクトマネージャーとしてどのようにリードすれば良いのだろう」……そんな悩みを解決すべく、プロジェクト推進に特化した業務支援・環境構築支援を提供しているのが株式会社コパイロツトです。

今回は、共同創業者である定金基さんと、クライアントのチーム内でプロジェクト推進支援を担当する多田知弥さんに、「動かないプロジェクトを進めるコツ」について伺いました。

「プロジェクトマネジメント」の役割は、業務を管理することではない?

──ずばり、「良いプロジェクト」ってどんなものでしょうか?

定金正直なところ、チームメンバーがプロジェクトのゴールを納得したうえで活動しており、さらに定例ミーティングをきちんと行っていれば、ある程度は「良いプロジェクト」になると考えています。「社長や上長の一声で内容が大きく変わった」という経験をされたことがある方も少なくないと思いますが、プロジェクトって進めている最中はぐちゃぐちゃで、不測の事態も起こりうるものです。その変化に対応し、柔軟にゴール設定しながら進めていくためには、定期的にチェックするしかない。「この計画やばそうだからミーティングしよう」では間に合わないので、定例ミーティングを設定する必要があるんですよね。

多田:また、メンバー自身がプロジェクトの意義やゴールを理解した上で役割を持つことや、それを叶えるためのチームづくりも大前提にあります。それぞれがきちんと機能を果たしながら自律的に推進するプロジェクトは、細かい管理もいらなくて理想的です。

──細かい管理がいらないのが良いプロジェクトということなのでしょうか?大きなプロジェクトでは「プロジェクトマネージャー(PM)」がその名の通りスケジュールやタスクを細かく管理(マネジメント)することもありますし、そうした行き届いた管理が必要というイメージを持つ方も多いと思います。

定金:そもそも日本におけるカタカナの「マネジメント」という言葉には、「Administration」「Management」「Control」の3つの意味合いがあるのではないかと感じています。多くの人は「Control=管理」を想起しますが、私は「どうにかしてやりくりする」、つまり「運営」などの意味合いを強く意識しています。

「マネジメント」から想起する3つのイメージ
Administration:ある組織の全体にとって重要な方針や目標を設定すること。「運営」「経営」「経営陣」など。
Management:方向性がすでにあり、その決定事項を執行すること。「運営」「経営」など。
Control:大きな変化を伴わず、安定的な状態にすること。「規制」「統制」「支配」「制御」など。

多田:「PMってどんな仕事ですか」と聞かれたときには、「狭義のマネジメントと広義のマネジメント」と説明しています。「狭義のマネジメント」というのは、タスクやスケジュール管理含め、PDCAをきちんと整理する業務。一方で、私たちが目指しているのは「広義のマネジメント」で、プロジェクトのあるべき姿を議論したり、そのあるべき姿やゴールを実現するための「チーミング(チームワークの構築と最適化を模索し、実践しつづけること)」等も含めた、もう少し広い範囲を指します。

PMがアジェンダを整理して指示する「狭義のマネジメント」も大事ですが、役割を担った人間がゴールにたどり着くために必要な議題を持ち寄って、交互に議論することがベストです。プロジェクトに対して「やらされている感」があると、メンバーもポジティブな気持ちになれないですし、自律的に動くことは難しいと思います。

プロジェクトを停滞させる3つの要因

──逆に、うまくいかないプロジェクトの例にはどんなものがありますか?

多田:大きく分けて3つあると考えています。1つ目は、課題に対するゴールをうやむやにしたまま走ってしまい、成果が評価できなくなるパターンです。たとえば社内でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進しようとなったものの、「何をもってDXか」が曖昧になっている、などです。その状態では、プロジェクトを進めるためのパートナーを探しても、「本当に適切な人材なのか」という部分でズレが生じてしまいます。

──メンバー内でゴールがしっかり共有できていないと、どう舵を取ったら良いかもわからなくなってしまうんですね。

多田:また、仮にテーマ設定がうまくできても、実際にプロジェクトを進める段階で発生する問題もあります。2つ目は、いろんな部署や会社が関わって業務を進めるとき、どうしても組織によって価値観や行動に対する評価指標が異なるため、そのまま進めていくとズレが生じて、無意識のうちにブレーキがかかってしまうパターン。

営業部門と開発部門で例えると、営業部署は顧客の価値向上が第一。一方で、開発部門は事故リスクを削減したいと考えます。すると「良い商品を生む」というゴールは同じなのに、前者は「リスクを負ってでも、良い体験を提供しよう」とアクセルを踏もうとするし、後者は安全性や使用性の観点から「リスクがあってはいけない」とブレーキをかける。どちらが良い悪いという話ではなく、立場によって大事にすべき価値観が異なるため、まったく異なる力学がはたらいてしまうんですよ。

日頃の品質向上に向けた取り組みの結果、既存の事業に求める品質が高くなり、プロトタイプやPoCの段階であっても、本番で通用する製品と同じくらいの品質を求めちゃうんですね。「何かあったらどうするんだ」というリスク懸念の声も出やすくなり、さらにブレーキがかかるし、進行も遅れていく。

──個人の価値観や所属する部署における評価軸は、すぐには変えられないように感じられます。どのように改善すれば良いのでしょうか。

多田:これは僕たち自身も課題だと捉えていて……組織の価値観や価値基準を変えようとすると、もっと複雑になってしまうのです。「プロジェクトのために違う会社を作ったほうが良いのか」「じゃあ、どういう組織の評価体系にすれば良いのか」など、別レイヤーの話から対処することになってしまう。すると、予算や人員など副次的な問題も発生します。ここの最適解は、我々もクライアントと一緒にその都度考えていかなくてはいけないと思っています。

──なるほど。では、3つ目の例はどんなものですか?

多田:スコープの間に隙間があるパターン」です。いろんな人たちが関わり、常に変化している状況だからこそ、「これどっちがやるの?」「誰がやるの?」というスコープ間の溝のようなものがたくさん出てくるのです。だから、それを埋めていく人がいないと、プロジェクトもうまく進行しません。

──それは、役割分担が曖昧なことに起因するのでしょうか?

多田:役割分担がされていても、この問題は出てきてしまうんです。なぜなら、プロジェクトが進行するにしたがって新しい作業は必ず発生しますから。それを放っておくと、メンバー同士でお見合い状態になってしまい、問題が積み重なっていきます。

「自分たちがやるべき仕事」が固定化していくと、隙間の仕事をこなすかどうかは個人の資質によるところが大きくなっていきます。アクティブに拾ってくれる人を頼るのではなく、PMがどういう形で進行させるか整理してあげないといけません。そうでなければ、仕事の押し付け合いが始まって、雰囲気もギスギスしてしまいます。

「情報をすべて共有し」「2人以上で行う」。プロジェクトマネジメントの極意とは

──プロジェクトを成功に導くために、PMはどんなことを心がければいいですか?

多田:まずは、1人が情報やタスクを抱えすぎないように配慮するのが大事です。定例ミーティングをしていても、やっぱり立場によって情報って偏るんですよ。それが見えている人と見えていない人で意思決定やタスクの進行方法は変わるので、常に同じ情報をみんなが見られる状態が望ましいです。

滞っているタスクがあった場合はただ指摘するだけではなく、プロジェクト全体でどう解消するかを考えられると良いですね。「良いPM」は、その雰囲気づくりがうまいなと思います。

──情報の共有とコミュニケーションが重要なんですね。

多田:それに、問題が起きたときの方向転換も大切ですね。スケジュール通り進めていくことも重要ですが、事情があって変更が生じたとき、新たなタスクを集約して、進め方を変えていかなければなりません。

ただ、それを1人のPMがすべてこなすことは大変です。なので、僕たちも外部のPMとしてプロジェクトに関わる際には、最低でも「2人体制」を組んでいます。1人は粛々とスケジュールやタスクを追って、「守りのPM」に特化する。もう1人はより広い目線を持って、いろんな問題をフォローする「攻めのPM」的な立ち回りになります。

定金:「変更をしないで進める」というのはプロジェクトに人間が合わせていくという世界観なんです。僕は、このプロジェクト中心型の考え方自体、難しいと思っています。

そうではなく、チームを中心にプロジェクトを捉えて、いろんな人がいろんな形で参加していく。そしてメンバーは、自分たちが実行可能だと信じられる範囲で自由に変動できる。そうならないと、変化し続けるプロジェクトで小さな実験を繰り返すことはできないと考えています。

コパイロツトは自らが伴走支援しているプロジェクトの事例から、目的や要件が変化するプロジェクトの中でどのような設計を行うべきかを体系化している

──チーム主体でプロジェクトを進めていくと、話がまとまらないということは起きないんですか?

多田:もちろん収束させていくことは必要です。最終的に結論をまとめようという時期に「そもそも……」とか言っている人がいたら、いつまでたっても成果物をあげられないですよね。逆にプロジェクトを立ち上げたばかりのころ、制約を外せる考えの人がいないと、一向に枠を出ないまま「どこに向って行くか」をずっと議論して進まなくなってしまいます。

そのときどきによって必要な人材や考え方は変わるので、そこのミスマッチが起きるとプロジェクトが進まなくなってしまう。必要なときに必要な人がいる状態を保てれば、フェーズによってメンバーを増やしても良いし、変えても良いんです。

──冒頭でもおっしゃっていましたが、やはり「プロジェクトは変わるもの」という前提で進める必要があるんですね。

定金:そうですね。ここまでお話ししたことをまとめると、プロジェクトを円滑に進めるためのポイントは5つ。同じ要件のプロジェクトは存在しないので「絶対的な正解」はありませんが、この5つを心掛けてもらえたら、スムーズに進行するのではないでしょうか。

【プロジェクトを円滑に進める5つのポイント】
・定期的なミーティングを行うこと
・情報を常に開示し、共有すること
・PMを2人体制にし、「攻め」「守り」の役割分担をすること
・「プロジェクト中心」ではなく「チーム中心」で変化に対応する
・議論の「発散」と「収束」のフェーズを見極める

定金:昨今現場に立っていて、PMという職種や専門性の高い知識を持ちながらプロジェクト推進ができる人の重要性が増していると感じます。でもどの立場であっても、プロジェクト推進が出来る人が十分にいるかというとそうではないとも思います。 

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、日本企業がDXを達成しなければ2025年以降、最大12兆円の経済損失が毎年発生するという試算が発表されました。

つまり様々なDXプロジェクトを推し進める必要があるにもかかわらず、推進できる人は十分にはいないのではないでしょうか。

その問題意識から、コパイロツトは「Project Sprint」を通じてノウハウをオープンソースとして公開し、実践できるツールとして「SuperGoodMeetings」の開発にも取り組んでいます。

プロジェクトで悩みを抱える人がいなくなるよう……それだけじゃなくて、楽しいほうがいいですよね。そのような想いで支援と実践と研究を続けながらプロダクトやサービスを磨いていきます。

(文:石澤萌 写真:玉村敬太)

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編集者・プランナー・ライター石澤萌
合同会社sou代表。1992年、東京生まれ。大手広告代理店で営業を経験したのち、カルチャーメディア「CINRA.NET」編集部に所属。記事制作と並行して商業施設や消費財メーカー等のPR企画プロデュースを担当。その後独立し、編集者/ライター/プランナーに。一人ひとりのあらゆる状態や感情を肯定できる人でありたい。趣味は漫画・アニメ、ひとり旅、Podcast。

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