時代に逆らい、孤独になっても。大正生まれのキャリアウーマンが教えた「好きなことで生きる」

2021年4月23日

はたわらワイド編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、エッセイ漫画家・カワグチマサミさんがnoteで明かした、バリキャリおばあちゃんから学んだ「好きなことを武器にする」はたらき方をご紹介します。


なんてパワフルでかっこいいマダム!

この方こそ、今回の主役。

エッセイ漫画家・カワグチさんがnoteの記事「大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。」 で描いた、実のおばあちゃんです。

筋金入りのおばあちゃんっ子だったというカワグチさん。
おばあちゃんはいつもカワグチさんのことを気にかけてくれていたそうですが、常に一緒に過ごしていたわけではありません。

なぜなら彼女は、大正生まれのバリバリ働くキャリアウーマン。
全国、海外を飛び回っていました。

当時では珍しく、保険会社で営業をしていました。
その傍らで、皿作りの家に生まれた娘でもあるので、国内問わず、海外に食器を紹介したりもしていたそうな…。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

生きていたら、そろそろ100歳。父方の祖母であり、カワグチさんが10歳になるころに亡くなりました。

さて、カワグチさんのおばあちゃんの思い出といえば……

▲カワグチさんを轢きそうになった自転車を、ハイヒールのまま追いかけてつかまえるおばあちゃん
▲自宅でも仕事をする日々で、たまに不機嫌になるおばあちゃん。旦那さまとはすでに離婚されていました

大人になった今、カワグチさんはこうつづります。

大正生まれのシングルマザーの祖母が、保険会社の営業で働く。
本業と育児と家事で大変なのに、副業までする。

世間の目は、きっと厳しかったに違いない。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

でも、幼いカワグチさんの目には、おばあちゃんはこう映っていました。

▲おばあちゃんの姿を見て、はたらくことについて考える小さなカワグチさん

おばあちゃんには口癖がありました。

▲「好きなことは武器になる」おばあちゃんの口癖

イラストレーターへの道は険しかった

絵を描くことが好きだったカワグチさんは、イラストレーターの道を志しました。しかし、おばあちゃんが亡くなり、家族の理解を得られないまま一般の大学へ。絵は独学で学んだといいます。

その後は、グラフィックデザイナーになり現場を学んでから、イラストレーターとして独立しようと考えていました。

しかし、ここでもうまくいかず、会社は1年に3度も転職、待遇がブラックで、体調を崩してしまうこともありました。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

それでもイラストレーターの夢を諦めず、踏ん張って生きてこれたのは……

おばあちゃんのこの言葉があったからだとカワグチさんは明かします。

こうして、転職を繰り返しながら4度目の会社でグラフィックデザイナーとして就職。3年間はたらいた後にイラストレーターとして独立。仕事が軌道に乗り、運命の人に出会って結婚。ほどなくしてお子さんが誕生したのでした。

20年越しに明かされた「祖母の本当の夢」

2013年、おばあちゃんが亡くなって20年がたったころ、カワグチさんは、お父さんの口からおばあちゃんにまつわる意外なことを聞かされます。

▲「知らない間に祖母の夢を継いでいた」驚くカワグチさん

戦時中、周りの人たちが竹槍で敵の飛行機を撃ち落とそうと一致団結しているときに、一人、芸術を学ぶために「パリに行く!」と言っていた祖母。
親戚、学友、先生……周りからは、異常者扱いされていました。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

家族に海外留学を反対され、家の決めた結婚が待っていたおばあちゃんは、絵描きになる夢を叶えられませんでした。

結婚後は、2人の子どもを出産しますが、夫の浮気で離婚。親戚とも縁を切り、シングルマザーとして保険会社ではたらくことに。女手一つでカワグチさんのお父さんと叔父さんを育ててきたのでした。

カワグチさんは、当時のおばあちゃんの置かれていた状況を、こう推測します。

「時代」に、いい、悪いなんてないけど、祖母みたいに、ハッキリとやりたいことがある人には、とても生き辛かったと思います。

現代みたいに、ネットもなければ、SNSもない。
理解してくれる人が誰もいない。
どれだけ毅然に振舞っていても、笑い飛ばしていても、心の中は分からない。
孤独だったと思う。

その頃の祖母に会いたい。
会っていろんな話をしてみたい。
祖母として、また、強く生きた一人の女性として。 子どもを育てながら、同じ夢をもった今の私に、祖母は何を話してくれるだろう。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

好きなことを武器にして生きるということ

おばあちゃんの生きた時代からときが流れ、女性もはたらきやすい時代になりました。同時に、現代は共働きの家庭が増え、仕事や家事、そして育児を夫婦が協力してこなさねばならない時代でもあります。

妊娠、出産、そしてイラストレーターの仕事に復帰したカワグチさんでしたが、心も体も想像以上に疲労困憊。救急車で運ばれることもあったといいます。

そんなボロボロの状態で、育児をしながら、働きながら、平和な家庭を築くというのは困難なことです。
みんな、言いにくいだけで、ギリギリのところで踏ん張っている人が多いんです。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

こうつづりつつ、カワグチさんが思い出すのは、おばあちゃんの「生き様」。

それは、「時代に逆らってでも、孤独になっても、好きなことを武器にして生き続けようとする姿」でした。

おばあちゃんは晩年、何度もパリ旅行へと出かけていました。水彩画や油絵も数多く描き、その腕前はカワグチさんが「祖母の方が断然上手だと思います」と認めるほど。

「好き」な気持ちは、大きなエネルギーになります。
育児中で時間がなくて、大変な時だからこそ、好きなことを優先したい。

むしろ、妊娠出産育児が大変なお母さんたちこそ、好きなことをして生きて欲しい。

そんなお母さんが増えて欲しい。もちろんお父さんも。 そしたら、その子どもたちも「働くことは楽しい」って思えるはず。

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

好きなことを武器にして、道を切り拓いていこうとする姿から、体当たりで教えてくれたおばあちゃん。

飲んだくれて荒れることもある、そんな「はたらく人」のありのままの姿を小さなカワグチさんの前でさらけ出していたように、

私自身が『働くことは楽しい』を晒していきたい

大正生まれバリキャリウーマンの祖母の話。より

そうカワグチさんはつづるのです。


カワグチマサミ(エッセイ漫画家)

「ズボラな主婦のエッセイ漫画家。イラストレーター、ママフリーランスの講師なども。連載『フリーランスかーちゃん』cakes、著書『お金のきほん』高橋書店、『本当にあった愉快な話』、ヤマサ昆布つゆ、サラヤ、三井住友銀行などで漫画連載中。
お問合せは masami.kawaguchi.work@gmail.com まで。

(文:矢口あやは 画像提供:カワグチマサミ)

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ライター・編集・イラストレーター矢口あやは
大阪生まれ。雑誌・WEB・書籍を中心に、トラベル、アウトドア、サイエンス、歴史などの分野で活動。2020年に一級船舶免許を取得。

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