好きな仕事で稼げない。劣等感解消のカギは「孤独からの卒業」

2022年2月16日

はたわらワイド編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、自分にとっての「はたらき方」について語る「#私らしいはたらき方」投稿コンテストで、入賞した記事をご紹介します。

執筆者は、エッセイスト・ライターのチカゼさん。念願の仕事ができて充実感を得た一方で、収入が伸び悩んで劣等感を抱えていたそうです。自信が揺らぎ葛藤しながらも、今のはたらき方を続けようと思えた理由をnoteに投稿しました。

劣等感でパートナーに「おめでとう」と言えなかった

チカゼさんはLGBT当事者であり、フリーランスのエッセイストとして、LGBT関連のメディアなどでエッセイやコラムを執筆しています。

もともとそのようなメディアで執筆するのが目標だったチカゼさんにとっては理想的な生活だったものの、その一方で、ある不安を抱えていました。

それは、収入が当初の想定よりも増えていないことでした。

そんなある日、夫から「昇進が決まった」と言われ、食事中の手が止まります。

「おめでとう」と、笑顔で祝福することができなかった。ぼくは彼に対して、パートナーであるにもかかわらず、劣等感を抱いている。安定した職種に就いていること、安定した収入を得ていること。社会人として一定以上の評価を受けていること、社会の中で器用に立ち振る舞うことが不得手でないこと。それらはすべて、ぼくが欲しくて欲しくて仕方なかった能力なのだ。

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

だからこそフリーランスというはたらき方を選んだものの、それでも思うように仕事を取れないことがチカゼさんの焦燥感や劣等感を大きくしていました。
夫の収入に依存している自分が好きになれず、恥ずかしさや悔しさがこみ上げます。

好きな仕事やはたらき方を選べるのは幸せなことですが、ただ選んだだけで実績が伴わなければ、少なからず不安を感じてしまうものでしょう。

「好きな仕事だから」「稼げる仕事だから」と、たったひとつの条件だけ叶えられれば迷わずはたらける人は、実際にはごく一部。大抵の場合、総合的なバランスを取りながらはたらく人が多いでしょう。
たとえ好きな仕事でも、稼ぎに不安があれば「この選択は正しかったのだろうか」と疑問が生まれ、かえって以前より苦しくなってしまうこともあります。

それでも、自分でその選択をした以上は「自己責任」という言葉がのしかかり、うまくSOSが出せずに自分の首を絞めてしまう人も少なくありません。
チカゼさんもその一人でした。

孤独に思えても、はたらいている限り孤独じゃない

そんな状況に追い詰められているチカゼさんを支えたのは、人からの言葉です。
以前からアドバイスをもらっていた尊敬する書き手の人から、忘れられないメッセージを受け取りました。

いつかちゃんと届く日が来る。
今すぐじゃなくても、書くことを続けていたら、きっと大丈夫。
根拠はある。
あなたの文章は、あなたにしか書けないから。

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

何もかも嫌になった日も、この言葉をもらって涙が滲んだそうです。
その日だけでなく、何度も繰り返し、根気強く伝えてくれました。
思うような成果が出ない時でも、自分の仕事を肯定してくれる言葉を受け取ると、それが活力となり自信となります。

そして、強烈な劣等感を感じていたパートナーからも、やさしい言葉を受け取ります。

「思うように収入が伸びなくて、本当にごめん。家計をあなたにばかり負担させて、本当にごめん」
「おめでとう」と言えなかった日の夜、泣きながらそう言ったぼくに、夫はこう返した。
「すぐに成果が出る仕事じゃないってことくらい、俺だってわかってるよ。ゆっくりでいいし、努力してることも知ってるから。それに今、俺のお金で最低限生活はできてるんだから、君は君のペースでゆっくりやったらいい。君ひとりで生活しているわけじゃないんだから」

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

生活をともにするパートナーが応援してくれることは、不安定な収入の中ではたらいている人にとって、精神的にも経済的にも大きな救いになるでしょう。
劣等感はゼロにならなくても、今の状況を理解し受け入れてもらえるだけで、“申し訳なさ”は軽減されます。

こうした言葉を受け取って、不安や心細さをひとりで背負っていたチカゼさんの心が和らいでいきました。
自営業だからと孤独に戦っていたつもりでしたが、実際には負の感情を分かち合い、手を差し伸べて支えてくれる温かな手があったことにも気づきます。

さらに、チカゼさんの書いた文章を読んだ人からの言葉も、揺らぐ心を強く支えてくれました。
いずれも、マイノリティであるチカゼさんの記事に救われた人たちのコメントです。

救われたような気持ちになりました。

読めてよかったです。


自分が変じゃないって、安心できました。


書いてくれてありがとうございます。

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

チカゼさんはこれらのコメントをスクリーンショットで保存し、何度も読み返しました。

ぼくの言葉は、届いてほしいひとに、必要としているひとに、ちゃんと届いたのだ。そう心から感じることができて、眠れぬまま迎えた朝方の白んだ光に照らされたMacBookの前で、大袈裟でなく咽び泣いた。

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

正直に「つらい」と言えずにいると、一人で抱え込んでしまい、強い孤独感に苛まれることがあります。
はたらいていてどうしようもなく苦しくなったら、思い切って身近な人に「苦しい」と打ち明けてみるといいかもしれません。
それを打ち明けられる相手なら、きっとやさしく見守ってくれるはずです。

ぼくはフリーランスとして、ひとりで、でも支えてくれるひとたちと手を繋いで、きついときはちょっと甘えさせてもらいながら、ぼくにしか書けない言葉を書き続けようと思う。すぐに結果は出なくとも、ぼくの苦しかったことは、きっとだれかの背中を支える手になると信じて、ぼくだけの言葉を紡いでいきたい。

ぼくにしか書けない言葉が、きっとあると信じているより

チカゼさんのように思えたなら、あなたは一人じゃありません。
たとえその場に自分しかいなくても、はたらいている限りだれかに支えられ、だれかを支えています。
自分らしくはたらいている姿は、どこかのだれかの目に届き、心の支えになっている―――そう思えるエピソードです。

【プロフィール】
チカゼ(エッセイスト・ライター)
NOISE、by them、BadCats Weeklyなどで連載。ノンバイナリー(they/them)/日韓露ミックス。ヤケド注意の50℃な裸の心を書く。
【記事URL】
https://note.com/chikaze/n/n72988f481c6f

パーソルグループ×note 「#私らしいはたらき方」投稿コンテスト

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