私に“はたらく意味”を教えてくれた、NASAの清掃員の一言

2022年12月8日

はたわらワイド編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、はたらくことの喜びや、はたらくなかで笑顔になれたエピソードについて語る記事をご紹介します。

「良い大学に入り、大手企業の安定した正社員になる」。周りの「当たり前」を信じて生きてきた白咲夢彩さんにとって、それが人生の目標でした。ところが、必死で努力してきたのにうまくいかず「何のためにはたらきたいのか」を見失います。さまざまな職を転々とした白咲さんが、ついにその答えを見つけたエピソードを、noteに投稿しました。

進学校で「当たり前」を目指したら、不登校になり引きこもりになった

「大手の正社員が良い」「大手は福利厚生がすごい」「安定が一番だ」
いろいろな周りの当たり前を聞いて私は大人になった。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

そう語る白咲さんは、みんなの当たり前を「当たり前」と考えていました。
目標は“良い大学”に入って正社員になること。
進学校に入学し、“良い大学”を目指した過度な勉強で心身を追い込んでいきます。

気が付けば大きなストレスが溜まり、家に籠っていたのを覚えている。進学校に通っていたが、入学から一年経つ前に退学して通信に編入し何とか卒業をしたのだ。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

それでも白咲さんは「当たり前」を捨てられませんでした。
次は「“良い大学”が無理なら、せめて正社員になろう」と必死になります。

努力の甲斐あって無事に正社員になりましたが、その生活も長くは続きません。
仕事がうまくいかず、何もできない新人のまま辞めることになってしまったのです。

正社員で活躍するために二十もの資格を取り、良い大学へ行けなかった分あんなに頑張ったというのに悔しくて仕方が無かった。正社員ができない自分は落ちこぼれだと思い込み、自信も無くなっていった。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

しかし、そこでふと疑問が浮かびます。

「私はなんのために働いている?正社員が安定だから?」
「何のために資格を取った?正社員になるため?」

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

自分に問いかけ、浮かんできた答えは「正社員だから」
そこで初めて「何かがおかしい」と気づきます。

「アポロ11号はなぜ月へ行けたのか」を考え、はたらく理由を知った

白咲さんはその後、何度も転職を繰り返しました。
接客、イベント、事務、保育、コールセンター……。あらゆる業種にチャレンジしながら「何のために働きたいのか」の答えを探し続けたのです。

しかし、興味がある仕事にチャレンジし続けたものの、探しても探しても「何のために働きたいのか」の答えはいっこうに見つかりません。
ようやくそのヒントをもらえたのは、ある会社での会議中でした。

会議の最後に、課長が
「あなたたちは何のために働いていますか?」
と言いました。
課長が業務以外の話をするのは、とても珍しいことでした。

そしてこう続けます。

「アポロ11号は、何故、月へ行くことが出来たのだろうか、という話をまずはさせてほしい」

「あの時代に、何故、月を目指せたのか」

「1962年、ケネディー大統領がNASAを視察に訪れた時、廊下に箒を持った清掃員がいて、話しかけたんだ」

「あなたは何の仕事をしているのですか?と」

「すると、清掃員は胸を大きく張り、誇らしげに答えた」

「大統領、私は人類を月に送るのを手伝っています!」

「NASAの清掃員がNASAを綺麗にすることで〝人類を月に送り出す手伝いをしている〟というように、私たちは仕事をすることで何をしているのか」

「私は皆が仕事をしていることに感謝をしています」

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

課長の言葉は、白咲さんの心に深く深く突き刺さりました。
家に帰ってからもその言葉を何度も反芻して「何故アポロが月に行けたのか」を自分に問い続け、こう考えます。

それは月へ行った十数人の宇宙飛行士だけでなく、その下で努力を続けた何万人いや何十万人がいたからだ。その人たちが支えとなり月へ行くことが出来たのだ。ひとりの技術者だけでもないひとりの清掃員だけではない、何十万の夢を持って働いた人々がいたからなのだ。

課長は、きっとお金や安定なんかよりももっと大事な〝何のために〟を、働くことがどういうことなのかを教えてくれたのだ。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

清掃の仕事であっても、事務の仕事であっても、目立たない裏方の仕事だったとしても、そのおかげで活躍できる人がたくさんいます。
華やかな仕事じゃなくても、一つひとつの仕事が確実に世の中を変えているのです。
ここまで考えた白咲さんは、
自分の力で変えたどこか一ミリに、大きな意味があるのだ。
と気づき、ついに「何のために働きたいのか」にたどり着きます。
いくつもの会社に転職し、いくつもの職を経験し、それでもなお見つからなかった答えに、ようやく手が届いた瞬間でした。

世の中のどこか一ミリを〝幸せ〟に変える為だろう。そして、その幸せを感じた時私も幸せになれるのだ。だからきっと、働きたいともっと前に進める。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

そう思ってから、はたらくのが楽しくなったそうです。

その他大勢の「当たり前」より、自分の「やりたい」を選んだ

同時に、こうも思いました。

正社員だろうがなんだろうが関係は無い。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

学生時代からずっととらわれ続けていた「当たり前」の呪縛がするすると解けていき、新しい夢ができました。
それは「執筆で誰かを笑顔にしたい」というもの。

私の書いた文章を見て、明日が明るいと笑っていてくれる誰かがいて欲しい。

私が創り出した仕事の一ミリで、ずっと先の未来で笑っていられる誰かが一人でもいて欲しい。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

その夢を叶えるべく、白咲さんは大企業を辞め、フリーライターになりました。
仕事としてお金を稼ぎながら、小説を書いてコンテストに応募しています。

フリーランスで生きていくには、まだまだ稼ぎは少ないし長い長い道のりだけれど、私は六月末で大きな企業での仕事を辞めて、自分ひとりの仕事で自分の創り上げた働くで、どこかの誰かを一ミリでも笑顔にするために働こうと前に進み始めた。

それが、私が幸せになることが出来る働き方だと気がついたから。

NASAの清掃員の言葉を知り、私の働くが動き出したより

その他大勢の「当たり前」を選ぶより、自分自身の「やりたい」を選ぶほうが、ずっと幸せだと学んだ白咲さん。
きっと「当たり前」に縛られていたときよりも、どこかの誰かを笑顔にする言葉が生み出せることでしょう。

仕事は自分と社会をつなぐものだから、はたらくなかで世間の「当たり前」が気になってしまうかもしれません。
でも、どんな仕事だって社会に影響を与えて変化を生み出しているから、はたらく意味がある。
そう思えば前に一歩踏み出せそうですね。

白咲夢彩
統合失調症歴十年以上の二十代既婚 不登校引きこもり経験5年以上あり 『不登校引きこもりの社会進出ブログ』運営中 ▷https://hikikomori-hataraku.com/

(文:秋カヲリ)

※ この記事は「グッ!」済みです。もう一度押すと解除されます。

18

あなたにおすすめの記事

同じ特集の記事

  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • シェア
  • ツイート
  • シェア
  • lineで送る
エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

人気記事

日本で最初のオストメイトモデル。“生きている証”をさらけ出して進む道
スタバでも採用された「最強のカゴ」。老舗工具箱屋が、アウトドア愛好家から支持を集めるまで
SNSで話題沸騰!『おたる水族館』の、人びとを笑顔にする“グッズ開発”の裏側
自分で小学校を設立!北海道で“夢物語”に挑んだ元教師に、約7,000万円の寄付が集まった理由
「歌もバレエも未経験」だった青年が、劇団四季の王子役を“演じる”俳優になるまで
  • バナー

  • バナー