“原始人マインド”を持ったら、病んだ夫婦でも楽しく経営できた

2022年12月12日

はたわらワイド編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、はたらくことの喜びや、はたらくなかで笑顔になれたエピソードについて語る記事をご紹介します。

杉村さん夫婦はお互いに病気を持っていて、睡眠薬が欠かせません。自分たちのペースを保つため、夫婦でトリミングサロンを経営しています。二人が大切にしているのはシンプルなはたらき方。その根っこには、やはりシンプルな“原始人マインド”があります。杉村さんは、心身を病んでいても健やかに生きるはたらき方について、noteに投稿しました。

「妻のサポート」を仕事にした、シンプルなはたらき方

杉村さんの職場は、夫婦で経営するトリミングサロンです。
ただ、はたらき方は普通のトリミングサロンとはちょっと違っています。
杉村さんは、トリミングをしないのです。

私は特にトリミングの技術があるわけではないので、主な「はたらく」はシャンプー&ドライや掃除、経理その他の雑用、そして妻のメンタルケアです。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

杉村さんの妻は、幼少期からメンタルの薬を飲んでいて、今は心臓の薬も飲んでいます。
彼女にとっての「はたらく」は、自分のペースでやりたい仕事をすること。
杉村さんは心身ともに病気を持つ彼女の唯一の理解者で、メンタルケアや家事を含め、彼女の「はたらく」をサポートしています。

我々のお店は非常にシンプルです。トリミングが上手だったらお客さんが来るし、下手だったら来ないというだけです。商品を売るわけでもないので在庫や流行といった要素もありません。そんなに物欲もないし子供もいないため、大儲けしようとかお店を大きくするつもりもありません。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

夫婦ともに、今のシンプルなはたらき方がベストだと思っていますが、かつては、現在とはかけ離れたはたらき方をしていました。

原始人のほうが「他者への敬意」を持っていた

以前、杉村さんはアパレル通販関連の会社を経営していました。
深夜まで残業が続くのは当たり前で、寝る時間は常に不規則です。

日々仕事に追われ心身を酷使した杉村さんは、すっかり疲弊してしまいました。
体を壊し、今では睡眠薬が欠かせない不眠症を患っています。

杉村さんは、苦痛を感じるはたらき方が世の中に蔓延している理由について
我々の世界は複雑になりすぎた
と語ります。

本来「はたらく」とはシンプルに「他人ができないことを代わりにやる」だと思うのです。例えば我々が原始人だった頃は、群れの中でパワー型の人がヒョロい人の代わりにマンモス狩りに行き、ヒョロい人は石器を作ったりドングリの皮をむいていたはずですよね。そしてその中で特に石器作りが上手な人はよその群れから「石器作ってくれウホ」と頼まれて、作ってあげると「ありがとうウホ!」とマンモスの肉や綺麗な貝がらをもらっていたのです。これが「はたらく」の基本ではないでしょうか。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

「ありがとう」や「綺麗な貝がら」(お金)は、他者への敬意の表れです。
原始人の時代は、自分ができないことをする他者に対して敬意を示す文化がありました。

しかし、現在は文明が進歩して、シンプルだった「はたらく」が複雑化しました。
自分が得意じゃないことも、ツールを駆使してやらなければならなくなったのです。
できないことを強要される社会になり、個々人の「できること」への敬意も薄れていきました。

やって当たり前、できて当たり前。

そう思うほど、かつて頻繁に交わされていた「ありがとう」が少なくなります。
綺麗な貝がら(お金)を独り占めしようとする人や、感謝しないクレーマーも現れます。

そういうのを見ていたら「はたらく」ことが嫌になったり、逆にはたらきすぎて病気になったり、もはや石器を作らなくても貝がらをもらえる仕組みを構築する人が出てきてしかもそれが時々リスペクトすらされているのが現代だと思いませんか?

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

と、杉村さんは警鐘を鳴らします。

「ありがとう」には続きがある

敬意を示す「ありがとう」には、続きがあります。

妻はトリミングという飼い主ができないことを代わりにやっています。それで飼い主は「ありがとうウホ!」と貝がらをくれます。私はその妻の下支えという妻自身ではできないことを代わりにやっています。そして妻は「ありがとうウホ!」と貝がらをくれます。それで私はマンガを買ったりします。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

お客さまから妻へ、妻から杉村さんへつながっていく「ありがとう」。
もちろん、ここで終わりではありません。

綺麗ごと抜きで言うと他者を支えるために日々生きるとは大変なこともあるので、私は整体やカウンセリングのお世話になることもあります。これも私自身に出来ないケアを代わりにやってもらっていますよね。なので私も「ありがとうウホ!」と貝がらをあげるのです。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

このように、だれかの「ありがとう」や貝がら(お金)は、また別のだれかへと連鎖していきます。

前ははたらき方がシンプルだったのでこうした流れが見えやすかったのですが、複雑になった今、それが見えにくくなり、「はたらく」が歪んでしまったのです。

「自己への敬意」を持たないと、ネガティブなはたらき方になる

「はたらく」が歪んでいった理由はもうひとつあります。
それは「自己への敬意」も薄れていったことです。

他者への敬意が薄れたために石器を作ってもらうことの意味を忘れてしまっただけでなく、自己への敬意も薄れてしまったためにそういうネガティブな現象を受け入れてしまっていることだと思うのです。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

心に負担をかけるネガティブなはたらき方から脱却するには、他者への敬意はもちろん、自己への敬意も大切にしなければなりません。
他者の仕事も自分の仕事も、「ありがとう」と敬意を示すに値する仕事なのです。

偉い人もそうでない人もみんなが一度原始人に戻ったつもりで周りの「ありがとうウホ!」を感じ直すと、少し世界が優しくなるのではないかと思うのです。ブラック企業でブイブイいわしている経営者だって、その履いているパンツは誰かが代わりに作ってくれたものなのですから。

[#私にとってはたらくとは ] 原始人にとってはたらくとは?より

必死ではたらいている人ほど理想が高くなり、自分の仕事や他者の仕事を軽視してしまうかもしれません。
そんなギスギスした気持ちになったら、杉村さんのようにシンプルな目線で「はたらく」を見つめ直し、素直に自分や他者の仕事に「ありがとう」と言える気持ちを育てていってはいかがでしょうか。

杉村
日本語と英語で漫画を描いています。
https://www.pixiv.net/users/1348454
https://www.patreon.com/howtomanga
https://howtomanga.gumroad.com/
https://twitter.com/sugiyan1192

(文:秋カヲリ 画像提供:杉村さん)

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エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

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