【イギリスのはたらき方】まじめにコツコツ、やりがいが欲しい…、イギリス人の仕事観は日本人に似ている?

2022年6月15日

連載「地球のはたらき方」では、世界の国々ではたらく人にインタビュー。その人自身のお仕事や、国のはたらき方や価値観に加え、「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のデータをもとにして、各国のはたらく内情を伺います。

今回は、イギリスのはたらき方をご紹介します!

イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド共和国) Data(2021年)
国内総生産ランキング(GDP) :5位/194ヵ国中(日本:3位)
世界幸福度ランキング(WHR) :17位/149ヵ国中(日本:56位)

<お話してくれた方>
リンゼイ・アン・フェーンさん
イギリス国籍|43歳|聴覚訓練士(医療従事者)

イングランド北部のグレーターマンチェスターのボルトンという街の病院で聴覚訓練士としてはたらいている。もともと手話に興味があり、高校在学中に手話の夜間学校に通っていた。大学では聴覚障害や言語についての学位を取得。大阪にあるプール学院大学への留学経験もある。 2人のティーンエイジャーの娘と夫と暮らしており、休日は歴史的な街を巡って写真を撮るなど、趣味を満喫している。

Q.あなたはどんな人?

――まずは、リンゼイさんの現在のお仕事について教えてください。

聴覚訓練士として病院ではたらいています。聴覚訓練士とは、患者さんの聴力が良くなるように、聴覚テストや補聴器の調整などをする仕事で、手話などでコミュニケーションを図ります。病院だけでなく、患者さんの家を訪問して、医師と協力しながら聴力回復訓練をすることもあります。

リンゼイさんの勤務する病院

――どういう経緯で、聴覚訓練士としてはたらき始めたのですか?

高校生の時に手話に興味を持ち、夜間学校で学びました。その後、大学では聴覚障害や言語についての学位を取得しています。

大学卒業後の最初の仕事はバルブなどを売る営業職につきました。しかし、大学で勉強した分野でキャリアを築きたいと考え、職業説明会に出かけたところ、聴覚訓練士の仕事に興味を持ちました。その後、聴覚訓練士の仕事に挑戦したいという気持ちは日に日に強くなり、セールスの仕事を辞めて、聴覚訓練士のトレイニーとしてはたらき始めました。

――仕事のモチベーションはなんですか?

聴覚訓練士の役割はたくさんありますが、やはり、患者さんの聴力を向上させることができることに大きなやりがいを感じています。また、職場の人間関係が良いことも、仕事へのモチベーションを高く保つことができるポイントだと思います。

――自分の仕事を楽しんでいるんですね。

もちろん!仕事に行きたくない、と思うことはないですね。患者さんの聴力を回復させることで、社会をより良くできると感じていますし、誇りを持ってはたらいています。

――イギリスでは、仕事にやりがいを感じている人は多いのでしょうか?

もちろん、生活のため、高い給料のためにはたらく人もいます。私自身は患者さんの聴力を回復させることで彼らの生活をよりよくし、社会の役に立つ、というところにやりがいを求めてはたらいています。長くはたらき続けるためにも、仕事を楽しみ、やりがいを感じることは大切ですね。オフィスでのデスクワークに比べて、自分の仕事の成果を直接肌で感じられる仕事についている人は、やりがいを感じやすいのかもしれません。

――オフはどのように過ごしているんですか?

家でゲームをしたり、映画をみたり、家族と家でゆっくり過ごしています。春や夏は暖かいので、歴史的な街を散策していますね。イギリスは歴史的な街が多いので、出かけるのが楽しいです。

一生懸命はたらいて購入したマイホーム。オフの時間は家族と過ごしてリフレッシュする

Q.あなたの国のはたらき方について教えてください。

――イギリスのはたらき方について教えてください。

日本と同じだと思いますが、より良い生活をするために、みんな一生懸命はたらいています。9時から17時までフルタイムではたらくのが一般的ですが、最近はフレックス制などが導入されて、はたらく時間を自分で選べるようになってきました。

幼い子どもがいる人は時短勤務をするなど、自分の生活に合ったはたらき方を選ぶことができます、私も子どもが小さい時は、時短ではたらいていました。

――新型コロナウイルスの影響で、はたらき方は変わりましたか?

多くの企業がリモートワークを導入し始めました。都心、特にロンドンではたらいている人は、リモートワークを選択する人が多いと聞いています。通勤のストレスがなくなるのは良いことですよね。

私は病院ではたらいているのでリモートというわけにもいかず、特にはたらき方は変わっていません。職場は車で10分程度の場所にあるので、通勤については特にストレスはありません。

車通勤する人が多く、リンゼイさんも車で職場に通っている

―― “はたらくこと”に関して、イギリスで近年変わってきていることはありますか?

「はたらき方を変えて生活を良くしたい」という人が増えてきたので、多くの企業がフレックス制度を導入しています。自分のはたらきやすい時間帯ではたらけるのは、とても良いことだと思います。

特に若い人ははたらき方に関してアイディアをたくさん出していますし、年配の方もより良いはたらき方を模索したいということに同意しているので、世代間のギャップも少なく、変化は好意的に受け入れられているようです。

――はたらき方に関して、日本と似ているところが多いですね

私もそう思います。日本もイギリスも、生活を良くするために一生懸命はたらきますから。GDPランキングが高いのもその結果だと思います。

――初任給はどれくらいですか?

もちろん資格や職種によって変わりますが、オフィスワーカーやセールスパーソンなど、一般的な職業では年収21,000~25,000£*くらいです。

※1ポンド151円換算で、約317万円~378万円

――イギリスでは最初の仕事をどのように探すのですか?

学生の間にアルバイトやインターンシップをする人が多く、その中で見つけていきます。在学中にはたらきたい企業を探す人もいますし、高校卒業後や大学卒業後に、「ギャップイヤー」という旅行をして自分を見つめ直すことも。インターンシップやボランティアなど、社会経験を積む期間を得ることで自分に合った職を探す人もいますよ。

イギリスだけでなく、ヨーロッパの多くの国がそうであるようにはたらく際に「即戦力」が求められるので、ある程度社会経験を積んでから、仕事を探す人が多いように思いますね、仕事先も、決まった時期ではなく各々が自分のタイミングで探し始めます。

――様々な体験を積みながら、就職先をみつける人が多いのですね。

そうですね。これもイギリスに限った話ではないですが、実際に仕事に応募するときに、「リファレンス」という書類が必要になります。これは大学の教授やインターンシップ、アルバイト先の上司などが、その人の経験やスキルについて記述する書類で、仕事に必要な「即戦力」があるかどうか、信頼できる人かどうかを第三者視点で裏付ける目的があります。

仕事を探すためには「即戦力」が必要なので、色んな社会経験を積むのはとても大切なんですよ。

――イギリスの転職事情はどうでしょうか。

イギリスでは転職はごく普通のことで、より自分の経験や条件に合った職場を選びます。しかし、就きたい職業に就くためには知識や経験が必要なので、異業種に転職することは難しく、同業他社を選ぶ人がほとんどです。

私の身近な例だと、一緒に働いていた看護師が聴覚訓練士にジョブチェンジするために大学に戻って学び直しました。この場合は同じヘルスケアの分野なので完全異業種というわけではないですね。

完全な異業種について新しく学ぶというのは、金銭や時間の面でコストがかかるので余裕がないと難しいと思います。もちろん、挑戦する人もいますけれど。

――イギリスの移民政策はイギリス人の仕事に影響していますか?

イギリス政府は多くの移民を受け入れているので、たくさんの外国人がイギリスではたらいています。私自身も、違う文化や国籍を持つ人たちとはたらくことには慣れていますね。

イギリスに移住しても仕事をしない人もいるので、その場合は彼らの生活を私たちの税金でサポートすることになります。イギリス政府の補償金を目当てに移住する人も少なくないので、そういった人を嫌う人が多いのも事実です。

移民が増えることで仕事の機会を逃す人もいるでしょう。私の仕事にはあまり影響がありませんが、マニュアル通りに仕事を進めるタイプの職種では、その傾向があるようです。

私が留学で日本にいたときは、外国人がまだ珍しい地域もあるようで、私の方をちらりと見る人が多いように思いました。一方イギリスではそういうことはありません。特にロンドンなど都市部では外国人の割合も多いので、外国人というだけで目立ったり、視線が集まったりするようなこともありません。

日本でも外国人はたくさんはたらいているでしょうから、だんだん慣れてくるのだと思います。

――イギリス企業ではどれくらい休暇がとれるのでしょう。また、休暇はどのように過ごしていますか?

年間130日くらいの休暇があります。夏は多くの人が2、3週間の休みをとって、バカンスを楽しむことが多いようです。私も夏は、家族とビーチなどに出かけます。娘は2人ともティーンエイジャーなので学校に、遊びにと忙しく、普段は一緒に過ごす時間が多くないのですが、バカンスの時はゆっくり家族の時間を楽しんでいます。

夏は家族でバカンスを楽しんでいる

Q.あなたの国の調査結果についてどう思いますか?

――Q1の「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか」という質問に対して「楽しんでいる」と回答した割合は、イギリスは116ヵ国中97位でした。この結果を受けて、どのように思われますか?

私は自分の仕事が好きで、患者さんの聴力を回復させることで社会の役に立っていると実感しているので、個人的な回答だと順位はもう少し高くなりますね。しかし、より高い給料を求めてはたらく人も多いので、自分の仕事が好きでなくても割り切っているのだと思います。そういう意味では、この結果は妥当なのでしょう。

――Q2「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっている」という項目は90位でした。

先の質問と同じく、私の個人的な回答はもっと高いですが、一般的なイギリス順位の回答としては妥当だと思います。イギリスではオフィスワーカーが多く、ずっとコンピューターの前でデスクワークをしている場合は、社会とのつながりを感じづらいのかもしれません。サービス業などで、直接人と触れ合う仕事は、そのような実感を持ちやすいと思います。

――Q3「自分の仕事やはたらき方は、多くの選択肢の中から選べるかどうか」は71位でした。

自由に職を選べない、という意味でしたら、妥当な結果だと思います。

自分が望む職業に就くために、若いうちからたくさん勉強をして知識をつけ、場合によっては難しい資格を取得する必要があります。また、もし最初に就いた仕事が合わなくても、勉強してきたことや直近の経験と異なる職業に就くことは難しいため、簡単に職種を変えることもできないという事情もこの結果に影響していると思います。

――仕事やはたらき方を変えるために大学や専門学校で学び直す人は、どのくらいいますか?

具体的なパーセンテージなどはわかりませんが、社会人になってから学びなおすことはごく自然なことです。ロンドンの一部の学校や、ダンスやアートなどの大学は奨学金が取りやすいですし、それ以外の分野でも政府が一定の成果を出していると認めた場合は奨学金を申請できます。学生ローンの制度もありますし。ただし、一生懸命学ぶ必要があるので大変な道ではあります。

最近は「Tレベル」という新しい制度が導入され始めているので、この調査結果も今後は上位にいくのではないかと思います。

――「Tレベル」について詳しく教えてください。

先ほども言いましたが、イギリスでははたらき始める際に「即戦力」が重要視されます。この即戦力を在学中に養うため、教育機関の改革が進んでいるんです。

「Tレベル」は教室での理論的な学習に、業界での実務訓練を組み合わせていく教育制度です。少額の報酬も受けられるシステムで、卒業後にインターンシップなどの社会経験を積まなくても、業界ではたらくために必要な「即戦力」を養えるんですよ。

――教育の中ではたらき方を学べるのですね。

イギリスでは17歳から18歳の2年間は「Aレベル」という教育制度があります。16歳の段階で、自分の進路をある程度決めなければならず、比較的早い段階で職業のことを考えることになります。

Tレベルは、Aレベルに比べて実務訓練を受けられる分野が増え、在学中に進みたい業種を選んでトレーニングを受けることができます。自分の仕事について考える時間が増えるので、学生にとってはいい制度ですし、はたらき方にも影響していくのではないかと思います。

――リンゼイさんは職種を変えたい、転職したいと思ったことがありますか?

今の仕事についてからは、ないですね。本当にこの仕事が好きで、やりがいを感じ、喜びを持ってはたらいています。

職場環境もとてもいいですし。これからも患者さんのために、聴覚訓練士としてはたらき続けたいと思っています。

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査
約1,000名/国×116カ国に調査。国際世論調査Gallup World Pollに「はたらいて、笑おう。」に関する質問を3項目追加し、3つの質問について「はい/いいえ/わからない/回答拒否」で回答。詳しくはこちら

※当記事で語られている発言内容は、あくまで取材対象者ご自身の意見・感想に基づくものです。

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SAGOJOライター伏見碧
大学院で機械工学を専攻し、終了後はメーカー企業の研究所で勤務。
数年働き、北欧アウトドアを体験するために退職し、北欧デンマークに1年間滞在。
現地の学校でアウトドアを学ぶ。
現在は北欧アウトドアライターとして記事を書き、その魅力を発信している。
自身のサイトではデンマーク生活を漫画形式で紹介。
また、デンマークの旅行代理店と提携し、日本人向けに北欧ネイチャーツアーの企画立案も担っている。

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