【スロバキアのはたらき方】仕事もプライベートも充実。理想の仕事を得るために学生時代からプランニング

2022年7月4日

連載「地球のはたらき方」では、世界の国々ではたらく人にインタビュー。その人自身のお仕事や、国のはたらき方や価値観に加え、「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のデータをもとにして、各国のはたらく内情を伺います。

今回は、スロバキアのはたらき方をご紹介します!

スロバキア(スロバキア共和国) Data(2021年)
国内総生産ランキング(GDP) :60位/194ヵ国中(日本:3位)
世界幸福度ランキング(WHR) :34位/149ヵ国中(日本:56位)

<お話してくれた方>
近藤 ニナさん
スロバキア国籍|33歳|英語教師

スロバキアのトルナヴァという街で、小中高一貫のバイリンガルスクールの英語教師としてはたらいている。大学在学中は日本語と英語哲学を専攻。現在は日本人と結婚し、スロバキアで生活をしている。趣味は料理、読書、映画鑑賞。

Q.あなたはどんな人?

――まずは、ニナさんの現在のお仕事について教えてください。

スロバキアにある小中高一貫のバイリンガルスクールで、フルタイムではたらいています。バイリンガルスクールは、日本でいう「インターナショナルスクール」と同じスタイルで、母国語のスロバキア語と、英語の二か国語で授業が行われます。スロバキア人の生徒もいますし、海外からスロバキアに来て住んでいる子どもたちも通っています。

私が教えるのは英語がメインですが、美術の授業を持つこともあります。英語の授業では、子どもたちがさまざまな国の人と楽しみながらコミュニケーションが取れるようにサポートしています。

ニナさんが務めるバイリンガルスクール

また、空き時間には日本語に興味があるスロバキアの人などに、日本語を教える副業もしています。

――どのような経緯で、英語教師としてはたらき始めたのですか?

姉がアメリカに留学していたこともあって言語に興味を持ち、自分自身も17歳の夏にイギリス留学しました。その際、多様な人と交流することをおもしろいと感じたことが教師を目指す大きなきっかけになりました。

高校卒業後はチェコにある大学に進学し、日本語と英語哲学を専攻。大学在学中には、1年間日本に留学し、日本語も学びました。

大学卒業後は日本研究の修士号取得のために2013年に渡英。そこで英語がかなり上達しましたね。

その後2014年に再度来日し、英会話学校の教師になったのが英語教師キャリアの始まりでした。2020年にスロバキアへ戻ってからも、今の職場で英語教師を続けています。

――海外でたくさん学ばれたのですね!今はどのように1日を過ごしているのですか?

7時30分までに職場に行き、順次授業を行います。学校の仕事は通常16時ごろに終わるのですが、授業が早めに終わる時は15時に帰宅できることもあります。でも、授業の準備をしなくてはいけないので、16:30ごろまで学校で残業したり、帰宅後に授業の準備をしたりすることもあります。

私は副業で日本語を教えているので、日本語レッスンがある日は夜20時ごろまではたらいています。バイリンガルスクールの仕事を終え、帰宅したらすぐにオンラインでレッスンを開始。残業ではありませんが、副業がある日はかなり長時間働くことになりますね。

スロバキアでは教師の給料はあまり高くないので、教師をしている人のほとんどは副業を行う傾向にあります。

――副業をすると長時間労働になることもあるようですが、仕事へのモチベーションはどのように保っているのですか?

語学力を得れば、国や人種に関わらずコミュニケーションを取ることができ、自分の好きなことをするチャンスが広がります。子どもたちや英語を学びたい人々に、そのチャンスを得てもらいたい。その気持ちが私のモチベーションになっているんです。

また、異文化を知って新しい視点を得たり、相手を理解したりすることは良い人間形成にもつながります。外国の人と話すことは、結果的により良い未来につながると感じます。

確かに英語教師としての給料はあまり高くありませんし、副業のため労働時間が長くなることもありますが、言語を教える仕事はとても意義がありますし、楽しんでいます。

歴史的な風景が美しいトルナヴァの街並み

Q.あなたの国のはたらき方について教えてください。

――スロバキアではニナさんのように長時間はたらく人が多いのですか?

いいえ、そんなことはないですよ。多少残業がある場合もありますが、多くの人が仕事後のプライベートタイムも大事にしています。スロバキアでは朝の7〜8時くらいからはたらく人が多く、カフェやスーパーも朝早くから開いています。

その分、家に帰る時間も早く、夕方には家族とゆっくり過ごすというのが一般的ですね。

――スロバキアではどのような職種が多いのでしょうか?

他国の自動車メーカーでもヨーロッパに工場を置く会社もあり、スロバキアにも自動車工場がたくさんあるため、工場関係の仕事が多いように感じます。

私も以前、韓国の自動車メーカーに勤めていて、その会社ではスロバキア語を教えていました。IT業界も盛んですが、優秀な人材はいつも不足しているようです。

休日は街に出て、大好きな料理の食材を買いだしに行く

――スロバキアでは、一番はじめの就職先をどのように選ぶのですか?

多くの人は大学院に進学して修士号を獲得します。そうしないと就職先が少ないからです。

学生時代からインターンなどで職場をみつけている人もいますし、卒業してから就職先を探す人もいますが、経験が少ない学生は仕事を探すのが難しい傾向にあります。そのため、徐々に経験を積んで、自分の希望する仕事へとステップアップするんです。

日本で英語教師をしていた時の写真

――スロバキアの初任給はどのくらいですか?

調べたところによると、大学を卒業した人の初任給は平均1,710ユーロです。ちなみに高校卒業した人の初任給は1,180ユーロですが、この給料は教師の平均月給とほぼ同じくらいです。さらにここから、約38%が税金として引かれます。

※1ユーロは133円換算で、大卒初任給は約23万円、高卒初任給は約16万円

――税金で多く引かれてしまうんですね。みなさんかなり節約されているのでしょうか。

そうですね。スロバキアは、ヨーロッパの中では手取りが額は安い方だと思います。若者も実家から出ますが、家賃節約のため、家をシェアして住むことが多いですね。

また食費が日本に比べて高いため、やりくりに苦労することもあります。

――仕事にやりがいを感じる人は多いのでしょうか?

人によるとは思いますが、やりがいを感じる人も多いのではないでしょうか。スロバキアの人々は、将来どのような仕事に就きたいかを決めた上で大学に入学し、勉強します。

生きていくために、お金はもちろん必要です。しかし、給与額というよりも、仕事自体にやりがいを持ってはたらいている人が多いと感じます。残業がある時もありますが、スロバキアの人々は仕事以外の時間を大事にしているため、ワークライフバランスもうまく取れているように思います。

――スロバキアの転職事情について教えてください。

1つの仕事を続ける人も多いですが、転職も珍しくはありません。新入社員よりも経験者を重宝する傾向にあるため、キャリアがまだない人は、同じ仕事を少なくとも3年は続けます。また、転職をする場合でも、職種を変える人は少ないと思います。

Q.あなたの国の調査結果についてどう思いますか?

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査 スロバキアの順位。※調査結果は、2021年に発表した第1回目調査のデータ。

――Q1の「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか」という質問に対して「楽しんでいる」と回答した割合は、スロバキアは116ヵ国中60位でした。

順位は高くないものの、85%もの人が楽しんではたらいていると答えているため、これは良い数字ではないでしょうか。仕事への喜びは、は金銭面だけでなく、仕事内容ややりがい、また一緒にはたらく人々によって左右されます。全体的にスロバキアの人々は楽しんで仕事をしていると感じられます。

――ニナさんも仕事をとても楽しんでいらっしゃるように感じます。

もちろんです!言語を習得すれば、他の文化圏の人とつながることができます。私の仕事は、その手助けができる素晴らしいものだと思っています。もちろん残業があると疲れますし、辛い時もあります。しかし今の職場は同僚も上司も良い人ばかりなので、大変な時も頑張ることができます。

――Q2「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっている」という項目は88位でした。

順位はあまり良くないですが、70%以上の人が人々の生活をより良くしていると思えていることは素晴らしいと思います。どんな仕事も、人々の生活を良くするためにあると思います。何かを悪くさせるための仕事なんてないと思うので、自分の仕事に誇りを持ってはたらきたいものですよね。

たとえば私がバイリンガルスクールで教えている美術の授業は、数学や化学などの科目のように直接仕事に結びつくことは少ないかもしれません。しかし美術を学ぶことで、子どもたちの創造性を育てたり、もしかしたら美術関連の仕事につくきっかけになったりするかもしれません。美術とふれあう機会をつくることは、子どもたちの未来に必ず良い影響を与えると信じています。

――Q3「自分の仕事やはたらき方は、多くの選択肢の中から選べるかどうか」は49位でした。

現実的な順位ですね。スロバキアでは、一度進みたい分野を決めたら、そこからの方向転換が難しいのが現状です。不可能ではないのですが、他業種への転職はとてもハードルが高いので、選択肢はどんどん狭まっていく傾向にあります。

――ニナさんの今後の展望について教えてください。

まずは教員免許を取れればと思います。今は教員免許がなくても授業することができるポジションで教えていますが、教員免許があれば給料も上がりますし、持っておいた方が今後有利だからです。

また、いつか日本に戻って学校の先生をしたいとも思っています。そのためには日本語能力試験を受けないといけないので、日本語の勉強ももっとしなければいけません。

一方で、私は料理が好きなので、将来夫と一緒にレストランを開きたいという夢もあります。

やりたいことはたくさんありますが、一つひとつ、夢を叶えていきたいと思います!

――さまざまな経験を積みながら前向きに仕事に取り組み、今後のキャリア形成や夢の実現に向かって楽しんでいるニナさん。本日はありがとうございました!

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査
世界100カ国以上の国と地域を対象として、国際世論調査Gallup World Pollに「はたらいて、笑おう。」に関する質問を3項目追加し、3つの質問について「はい/いいえ/わからない/回答拒否」で回答。詳しくはこちら

※当記事で語られている発言内容は、あくまで取材対象者ご自身の意見・感想に基づくものです。

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SAGOJOライターFujico
2015年にフリーライターとして独立。「地球の歩き方Japan 島旅シリーズ 15 伊豆諸島Ⅰ」を始めとし、
冊子からウェブサイトまで幅広く執筆を行う。
伊豆諸島への訪日外国人誘致プロジェクト「Tokyo Islands」の運営や翻訳・通訳業も行う。

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SAGOJOライターFujico
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