【オランダのはたらき方】道は一つじゃない!さまざまなキャリアパスがある国、それがオランダ

2022年9月2日

連載「地球のはたらき方」では、世界の国々ではたらく人にインタビュー。その人自身のお仕事や、国のはたらき方や価値観に加え、「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のデータをもとにして、各国のはたらく内情を伺います。

今回は、オランダのはたらき方をご紹介します!

オランダ(オランダ王国) Data(2020年)
国内総生産ランキング(GDP) :17位/194ヵ国中(日本:3位)
世界幸福度ランキング(WHR) :6位/149ヵ国中(日本:62位)

<お話してくれた方>
カルメン・ウォングさん
オランダ国籍|35歳|弁護士(傷害請求担当)

1980年代に香港人の両親がオランダに移住し、オランダで生まれ育ったカルメンさん。大学では法学を専攻し、現在オランダで有名な保険会社に所属して、弁護士として傷害請求を担当している。趣味はロッククライミング、料理、旅行。現在結婚し、犬2匹と夫と閑静な住宅街で暮らしている。

Q.あなたはどんな人?

―――まずは、カルメンさんの現在のお仕事について教えてください。

私はオランダの有名な保険会社で、弁護士としてはたらいています。事故などの際に、保険でカバーできる範囲内かどうかを調査、判断し、最終的に傷害請求額の計算をするのが仕事です。

オランダは日本と違い、専門分野に特化している弁護士が圧倒的に多く、いわゆる「ジェネラリスト」な弁護士はほとんど存在しません。これはアメリカでも同じですね。

私は傷害保険を専門分野としているので、保険会社で顧問弁護士をしています。慰謝料、治療費、逸失利益、後遺傷害による損失、休業損害など、事故や怪我によってかかった費用や、事故にあっていなければ稼げる予定だった金額を計算するのですが、年齢やライフステージによっても計算が変わってくるので、綿密なリサーチが必要な仕事なんです。

―――現職の前はどんな仕事をしていたのですか?

以前の職場も保険会社でしたが、前の会社で扱っていたのは損害請求のみで、今の会社のように傷害請求は担当していませんでした。

現在私が担当している部門では、常時180以上もの案件を抱えています。新しい案件が入るごとに綿密な調査をしなければなりません。大変な仕事ではありますが、それが私の仕事を毎日ユニークなものにしてくれて、知識や経験に幅をもたせてくれているのです。

自身の誕生日に、旦那さんからのプレゼントでオランダのテウヘでスカイダイビングをするカルメンさん。
(※写真の男性は旦那さんではなく、インストラクター)

毎日自分の知識と経験を試しながら、新たなことにチャレンジできる今の仕事を私はとても気に入っています。

Q.あなたの国のはたらき方について教えてください。

―――オランダでのはたらき方についてどう思いますか?

私の経験上、オランダの職場環境はとても健全だと思います。特に職場のメンタルヘルス(精神衛生面)については、すごく気を遣ってくれます。

労働は週に40時間、1日8時間と決められていますが、就業時間に関してはフレキシブルです。たとえば私の職場なら、朝7時から11時の間なら、何時に仕事をはじめても構いません。コロナを機に、「8時間はたらきさえすれば、始業・終業時間は何時でもよい」という企業が増え、そのはたらき方が一般的になってきています。

時間的に融通が効くと、プライベートとのやりくりがしやすいのでストレスもなくなります。私の会社はコロナ前から週3日自宅勤務のフレックス制が導入されていましたが、コロナ禍になってからは基本、毎日自宅勤務になりました。

もう一つオランダの職場環境で特徴的なのは、社内の風通しがいいことです。日本のように、目上の人に敬語を使うことがなく、とてもフランクな関係です。相手が上司でも、ずっとフォーマルな話し方だと逆に違和感があるくらいです。

上司から何か指示を受ける時は、命令されたからやるというスタンスではなく、「この上司を助けたいな」と思うような信頼関係がベースにあります。

良好な人間関係は仕事のしやすさに好影響をもたらします。精神的に健康であることを最重要事項として考えるのが、オランダの特徴だと言えるでしょう。

―――人間関係が良さそうですね!ところでオランダの初任給はどれくらいなのですか。

仕事内容やその人自身の能力によって、初任給でもかなり差があります。どの大学を出ているか、どのくらいの経験があるかによっても関わってきますし、交渉の仕方によっても大きく変わります。

同じ弁護士でも初任給は企業によって異なり、さらに会社の中でもばらつきがあります。

私の会社の場合、平均初任給は、€3000~€8000(40万円~106万円)*ほどの違いがあります。

*1ユーロ133円換算

*オランダの平均月収は3,068 米ドル(2020年)。1ドル125円換算で約383,500円

オランダでは、大学卒業後に1年間ほど旅をする人もいて、旅先での経験が企業面接でプラスにはたらくこともあります。「異文化への適応力が身についている」「知的好奇心が旺盛」などというアピールができますよね。オランダで大切なことは、「どれだけ能力・実力があるか」ということ。卒業後すぐの場合は社会人経験や能力については劣りますから、そこをどうアピールするかが重要です。

―――カルメンさんは今のはたらき方を気に入っていますか?

ボネール島で旦那さんとダイビングを楽しむカルメンさん。

私の仕事はとてもフレキシブルなので、プライベートとのバランスが取りやすく、今の仕事をとても気に入っています。仕事内容も、人助けに直結する意義のある重要な仕事をしていると思いますし、一つの案件をやり終えると、達成感や充実感がありますね。

同僚たちともすごく仲が良く、毎日がとても楽しいです!

―――カルメンさんにとって仕事を楽しむ上で最も大切なことはなんですか?

給料はすごく大切なポイントですが、最重要事項ではありません。仕事に対する充実感と職場環境、福利厚生、オンとオフのバランス、良い人間関係(いい同僚と理解ある上司)、そして自分を成長させてくれる職場かどうか。私にとって大切な要素は、これらのバランスだと思っています。

休日や福利厚生、リモートワークが可能か、社用車がちゃんと個人に手配されるかどうかなど、会社の設備がきちんと整っているかどうかという条件も見ています。

―――カルメンさんの会社では、1カ月程度の長期休暇も取得可能ですか?

オランダでは、2週間程度なら自由に連休を取得することができます。これが1カ月くらいの期間であっても、数カ月前から上司に相談していれば休暇の取得はそれほど難しいことではありません。実際に、私も以前、1カ月間のベトナム旅行で休暇を取りました。上司には出発の半年前ぐらいに相談したのですが、すんなり許可をもらえましたよ!

Q.あなたの国の調査結果についてどう思いますか?

―――Q1の「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか」という質問に対して、オランダは「楽しんでいる」と回答した割合が116ヵ国中14位と高い順位ですね。

この順位は、非常に正しいと思います。一般的にオランダはほかの国に比べて職場環境がよいことで有名で、ほとんどの人々が自分たちの仕事に満足していると思います。

たとえばオランダでは、上下関係のような階級制度はほとんどなく、問題が起こった時も、気軽に上司に相談できます。これは自分の仕事への満足度を高めるとても大きな要素になっていると思います。

私の意見ですが、オランダは「はたらく」国として、非常に良い国だと思っています。税金が多少高くても、病気になった時や失業した時、退職時などのときの社会経済体制が整い、充実しているからです。

10年間続けているという趣味のロッククライミングをするカルメンさん。

―――カルメンさんがはたらいていて、ほかに良いと思ったことはなんですか?

オランダの職場では、従業員の「well-being(幸福)」に重きをおいていて、給料と労働のバランスに関しても納得感があります。例えば40時間の労働時間という契約で入社したなら、入社後にそれを超えることはほとんどなく、残業することはあまりありません。

また、福利厚生が充実し、退職金もしっかりもらえる会社が多いですね。

また、オランダでは「健康でいること」が仕事をする上でも重要だと考えられているので、スポーツジムの会費や新しい自転車の購入費用などを会社が負担してくれます。大企業だと特にその傾向が強いですね。

私の周りには駐在員としてオランダに来た友達が多くいますが、彼らもオランダではたらくことを楽しんでいるようです。

―――Q2「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっている」という項目は92位でしたが、これについてはどう考えますか?

私自身は人々の生活において意味のある、重要な仕事をしていると思っています。事故にあって怪我をしたら、予定していた先々のライフプランが変わってきますよね。頭が真っ白になってしまうかもしれません。

冷静になって、稼ぎ得たはずの収入を計算したり、過去の事例と照らし合わせて権利を主張したりすることはスキルがないとできません。

―――Q3「自分の仕事やはたらき方は、多くの選択肢の中から選べるかどうか」は世界3位でした。

この順位も非常に正しいと思います。オランダには「There are more ways to reach to Rome.(ローマに行く道は一つじゃない)」という有名な言葉があります。もしあなたがローマに行きたいなら、この道もあるし、この道もあるし、この道もある。どんな生き方を歩んでも、選択肢は常に無限だと考えるのがオランダです。

1年間、旅をして仕事にブランクがあったとしても、「自分の本当にやりたいことを探していました」とか、「いろんな世界を見たかったので」などと説明できれば、大抵の企業は「世界に出て広い視野を養ってきたんだな」というふうに判断します。

過去の経歴などももちろん気にしますが、よりオープンマインドで、今や将来の可能性を見てくれているように思います。

―――ライフスタイルとワークスタイルのバランスがとれた、とても良い環境で自分の仕事にとても満足しているカルメンさん。ありがとうございました!

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査
約1,000名/国×116カ国に調査。国際世論調査Gallup World Pollに「はたらいて、笑おう。」に関する質問を3項目追加し、3つの質問について「はい/いいえ/わからない/回答拒否」で回答。詳しくはこちら

※当記事で語られている発言内容は、あくまで取材対象者ご自身の意見・感想に基づくものです。

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SAGOJOライター阿部万里英
岩手出身、19歳の時にカナダ・トロントへ留学。
その後NYのファッション雑誌でインターンを経験し、帰国後は外資系出版社でアシスタントエディターとして2年つとめ、その後雑誌の広告営業を担当する。
Esquire誌、Cosmopolitan誌、Yahoo!などで執筆経験あり。現在はオランダ在住で記事翻訳及びライティングを続ける。

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