【メキシコのはたらき方】労働時間は世界一!仕事も人生も陽気に楽しむメキシコ人の仕事観

2022年12月9日

連載「地球のはたらき方」では、世界の国々ではたらく人にインタビュー。その人自身のお仕事や、国のはたらき方や価値観に加え、「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のデータをもとにして、各国のはたらく内情を伺います。

今回は、メキシコのはたらき方をご紹介します!

メキシコ合衆国 Data(2021年)
国内総生産ランキング(GDP) :16位/194カ国中(日本:3位)
世界幸福度ランキング(WHR) :24位/149カ国中(日本:56位)

<お話してくれた方>
マヌエル・カマレナ・ナバロさん
メキシコ国籍|31歳|ITリクルーター
メキシコ第2の都市、ハリスコ州グアダラハラ在住。ITリクルーターとして、さまざまな企業が募集するIT関連の仕事を外部のITエンジニアに紹介。企業とエンジニアの橋渡しを担っている。以前は営業やカスタマーサービスの仕事をしていたが、ワークライフバランスを充実させるためにフルリモートではたらけるITリクルーターの職へジョブチェンジした。 兄弟や母との家族の時間や、カナダに住んでいるガールフレンドとビデオ通話する時間を十分に確保するために、仕事の時間をうまく調整している。趣味はお酒を飲むこと、旅行、キャンプ。

Q.あなたはどんな人?

――ITリクルーターとはどういう仕事をするんですか?

ITリクルーターとは、企業が募集しているIT系の求人に対し、ITエンジニアを探して紹介するという仕事です。私の住むハリスコ州のグアダラハラという街は、「メキシコのシリコンバレー」と呼ばれるほど、IT産業が盛んな場所。多くの企業がグアダラハラに集まっています。15社程の大手企業、1,000社を超えるスタートアップ企業があり、ITエンジニアの需要がとても高いんですよ。

普段から、LinkedIn(SNSサービスの一種)などでITエンジニアやディベロッパーなどをフォローし、コミュニケーションをとっています。企業から仕事の募集がでたら、その企業に興味がある人や、内容そのものに興味がある人、プログラミングなど必要なスキルを持つ人に、まず仕事を請け負う意思があるか確認します。

Yesと答えてくれたら、その案件を達成できるスキルがあるか確かめるために、プログラミングのコードテストなどを受けてもらい、クリアしたら面接に進めます。

面接を通過したら、採用したエンジニアとプロジェクトチームを組みます。私は採用を担うだけでなく、採用後には「ディレクター」として、プロジェクト全体の進行を担当するんです。企業側から作業の追加や修正依頼があるときに、エンジニアに伝えるのも私の役目。企業とエンジニアの間を取り持って、円滑に仕事が進むためのサポートもしています。

IT産業が盛んなグアダラハラの町

――どういう経緯で、ITリクルーターとしてはたらき始めたのですか?

私はかねてより、自由度が高い環境ではたらきたいと思っていました。今の仕事は完全にリモートではたらけるので、家やカフェ、旅行先でも、パソコンとインターネットさえあれば仕事をできるのが魅力的でした。通勤ラッシュに巻き込まれなくて済みますしね。幸い、ITやマネジメントについての知識があるので、私にぴったりな仕事だったんです。

フルリモートではたらくマヌエルさん。自宅のワークスペースでリラックスしながらはたらいている

――マヌエルさんは仕事を楽しんでいるんですか?

楽しんでいます!好きな時間に好きなスタイルで休憩できますし、気分や体調に合わせて昼までゆっくり寝て、午後から夜遅くまではたらくなど、はたらく時間帯も選べます。

私は旅行が大好きなので、はたらきながら旅をする「ワーケーション」ができるのもよい点です。自分好みにはたらくスタイルを選べることは私にとってとても重要で、魅力的なポイントです。

――仕事のモチベーションはなんですか?

私は常に、物事や自分自身をより良くしたいと考えています。IT産業が発展すれば生活が便利になり、経済も発展し、豊かに暮らせるようになります。仕事を通じて社会や国の発展の手助けができるのはうれしいですね。

自分の知識や経験を活かして社会を良くする手助けをしていると考えると、とても達成感がありますし、次の仕事へのモチベーションにもつながっています。

――オフはどのように過ごしているんですか?

旅行に行くのが好きですね。ワーケーションをしながらカナダを旅した際に今のガールフレンドと出会い、交際しています。

海辺でキャンプして、自然の中でカクテルを作って飲んだりする時間も格別です。

自然を感じながら自分好みのカクテルを作って飲む至福の時間を過ごす

Q.あなたの国のはたらき方について教えてください。

――メキシコのはたらき方について教えてください。

メキシコの企業は、自宅のようにくつろげる職場づくりをしています。デスクや椅子など、従業員が快適に過ごせるように揃えてくれていて、アットホームな職場が多いように思います。

メキシコの企業は一般的にタバコ休憩やコーヒー・ランチ休憩など休憩が多いんです。休憩時間は長く、休憩の頻度も多いと思います。たとえば、ランチ休憩は14時から1時間ほどなんですが、火曜日や金曜日はレストランの食事が安くなる時間帯があるので、その日は長めに休憩を取ったり、早めに休憩に入ったりすることも一般的です。

特に金曜日は「Happy Friday hour」と言って、みんなで2時間ほどランチ休憩を楽しみます。金曜日は半日だけはたらいて、その後飲みに行くことも多いですね。

10時や13時ごろにスナック休憩をとる習慣もあります。

家族を大事にする人が多いので、オフィスに子どもを連れてくるのも普通のこと。奥さんを同伴することもあります。子連れ出勤が普通なので、女性もはたらきやすい環境だと思います。

――家族を会社に連れてくるんですね。オフィスにはキッズスペースがあるんですか?

キッズスペースのある会社もありますが、ない会社もあります。手の空いている社員が子どもたちの面倒を見ることも。空いているスペースで子ども同士、仲良く過ごしていますよ。

社員によっては、重要な会議があるときなど奥さんを連れてきています。自分のデスクの隣に椅子を準備して、自分が一生懸命仕事している姿を見せているみたいです。もちろん、みんながみんな連れてくるわけではないですけどね。

――メキシコの労働時間はどれくらいなんですか。

フルタイムだと7〜9時間、パートタイムだと1時間刻みで最大5時間まではたらきます。実はメキシコは世界で一番労働時間が長いと言われていて、平均労働時間は日本の平均の1.3倍ほどです。

休憩時間が長いのも理由の一つですが、土曜日が出社の企業が多いことや、残業代で収入をアップさせるために長時間勤務をしたがる人もいて、結果的に労働時間が長くなっているのだと思います。

一方で、家族の誕生日やワールドカップの試合がある日などは早めに帰宅したりもします。ほかの日に長くはたらくことで埋め合わせるなど、オンとオフのメリハリがあると思いますね。

メキシコは中南米を代表する経済大国なので、みんなプライドを持って、真面目にはたらいているんですよ。

――土曜日もはたらいているんですね。

そうなんです。多くの企業は週休1日で、年間の祝日も10日程度しかないので、休みの日が少ないですね。アメリカのように長期間夏休みを取るということは無くて、長くても4連休程度。有給も使えますが、それでも休暇の日数は少ないと感じます。

私の場合は自分で仕事のスケジュールを組めるので、朝の10時から夕方18時まではたらくことが多く、土・日は休むようにしています。休憩時間や労働時間が長く、休暇が少ないのが古くからのメキシコのはたらき方の特徴ですね。

とはいえ、最近は少しずつ週休2日制を取り入れる企業が増えてきました。日本など外国資本の企業も週休2日制を導入しています。

――そういえば、メキシコの新型コロナの状況はどんな感じなんですか?

新型コロナウイルスが流行り始めたころ、感染拡大に伴い多くの人が失業し、多くの店舗が閉店に追い込まれました。政府がいろんな対策をしてくれたので今は少し落ち着いている状況です。アメリカ系企業がテレワークを導入し始め、今では50%の企業がテレワークではたらくことを許可しています。

しかし、アットホームな会社が多いメキシコでは、社員同士の交流も多く、出社を望む人も少なくありません。出社するかテレワークではたらくかを個人の意思で決められる会社が多いですが、「コロナが怖いからテレワークする」というよりは、「便利だからテレワークのままはたらいている」という人の方が多い印象です。

マスクはもうほとんどの人がしていないですね。入国制限も撤廃されたので、観光業も再開されました。

コロナが落ち着いて、外出する人が増えてきたグアダラハラの町

――はたらくことに関して、メキシコではコロナ前後で何か変化がありますか?

週休1日から2日にシフトしてきて、残業する人も減ってきました。メキシコは若い人が多いので、変化は好意的に受け入れられています。とはいえ、すぐには休暇の日数も労働時間も変わらないので、少しずつトライしている状況ですね。

――メキシコの初任給はどれくらいですか?

職種やスキルによって大きく変わりますが、だいたい12,000-28,000Mex$程度です*。ITの経験があるなど専門的な職種だともっと高くなります。

メキシコ人は細かいことを気にしない人が多いのか、もらった給料をすぐに使ってしまう人がとても多いんです。なので、給料は月に1回ではなく2回に分けて支給されることが多いです。貯金をする人も少ないように思います。

メキシコは中南米では経済大国ですが、世界的にみて収入はかなり少ない方なんです。労働時間が世界最長なのに、賃金が少ないのは少し残念ですね。

でも、給料が安くても物価が安いので生活はできますし、陽気な人が多いので悲観的な人も少ないですね。多くの人が家族や友人との時間を大切にして楽しく暮らしています。お金が少なくても楽しく生きられるというのは、メキシコの良いところだと思いますね。

※1メキシコペソ6.7円換算で、約8万円~19万円

――楽しく生きる人が多いんですね。

そうなんです。細かいことは気にせず、楽しく陽気に暮らせるのはラテン系の気質なんでしょうね。貧しい人が軽犯罪を起こすなど、治安が悪い面もありますが、国民の大半がカトリック教徒で、お互いに助け合って生活するという文化があるので、私はそこまで悲観していません。

お金がある分には助かりますが、お金が少なくても楽しく幸せに生きられるのはとても良いことだと思っています。

――ところで、メキシコではどうやって最初の仕事を探すのですか?

希望する仕事に就くためには即戦力になるような経験やスキルが必要なので、学生のうちにアルバイトやインターンシップなどをして経験を積みます。給料がもらえるので、一石二鳥ですね。

失業率も3%程度なので、希望していない仕事だとしても、多くの人は職を見つけられている状況です。

Q.あなたの国の調査結果についてどう思いますか?

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査 メキシコの順位。※調査結果は、2021年に発表した第1回目調査のデータ

――Q1の「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか」という質問に対して「楽しんでいる」と回答した割合は、メキシコは116ヵ国中13位でした。この結果を受けて、どのように思われますか?

メキシコの人たちは陽気で、楽しくはたらくことや生きることが得意なので、この結果は納得です。私も今の仕事を楽しめています。

私のイメージですけど、ほかの国よりもお金のためだけにはたらく人は少ないように思います。これも仕事を楽しめるポイントなのかもしれません。もっとも、世界的にみても給与額が少ないので、お金のためにはたらいてもあまり意味がないということもありますが。

――Q2「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっている」という項目は116ヵ国中32位でした。

妥当な結果だと思います。生活もはたらき方も少しずつ変わってきて、余裕が出てきたのでいい結果になっていますね。

私は企業課題を解決するためにITリクルーターとして人に仕事を紹介しているので、この質問にはYesと答えますね。メキシコは中南米では経済大国で、ほかの国にも雇用を生み出しているので、ほかの人の生活をよくしているとも言えるでしょう。

今後、もっと成長してYesと答える人が増えることを期待しています。

――Q3「自分の仕事やはたらき方は、多くの選択肢の中から選べるかどうか」は54位でした。

妥当な結果でしょうね。大学や専門学校などで勉強して卒業できれば選べる仕事は多くなりますが、そうでない場合は選択肢がかなり少なくなりますから。これはどこの国でもそうだと思いますが。

メキシコでは、経済的な事情などで、中学や高校の段階で学校を辞めてしまう生徒がまだまだ多いんです。大学を卒業しないでいると選べる職種がかなり限られてしまうので、社会問題にもなっています。

とはいえ、私たちの公用語はスペイン語なので、世界のいろんな場所ではたらけるという利点もあります。世界を見てみると英語よりもスペイン語を話す国の方が多いので、外国ではたらいたり勉強したりする際に、言葉の壁にぶつかることが少ないのはメリットですね。

仕事やはたらき方の選択肢が少なく、給料も少ないという状況でも、メキシコの人たちは陽気で明るく暮らしています。これはメキシコのとても良いところだと思うので、少しずつ経済発展して変化を受け入れ、より良い社会をつくっていきたいですね。

――マヌエルさんも、明るく楽しく暮らしているんですね。

そうですね。私もメキシコ人なので、明るく楽しく暮らすのは得意です。

嫌なことがあっても、ビールを飲んだり、アイスを食べたり、散歩すればだんだん忘れて楽しくなってきますよ。

日本人は真面目な人が多いと聞くので、お互いにいいところを学びながらより良い社会をつくっていきたいですね。メキシコはとても美しい国なので、ぜひ遊びに来てください。

家族との時間を大事にするメキシコ人 真面目に、かつ陽気にはたらいて仕事も人生も楽しんでいる

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査
世界100カ国以上の国と地域を対象として、国際世論調査Gallup World Pollに「はたらいて、笑おう。」に関する質問を3項目追加し、3つの質問について「はい/いいえ/わからない/回答拒否」で回答。詳しくはこちら

※当記事で語られている発言内容は、あくまで取材対象者ご自身の意見・感想に基づくものです。

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SAGOJOライター伏見碧
大学院で機械工学を専攻し、終了後はメーカー企業の研究所で勤務。
数年働き、北欧アウトドアを体験するために退職し、北欧デンマークに1年間滞在。
現地の学校でアウトドアを学ぶ。
現在は北欧アウトドアライターとして記事を書き、その魅力を発信している。
自身のサイトではデンマーク生活を漫画形式で紹介。
また、デンマークの旅行代理店と提携し、日本人向けに北欧ネイチャーツアーの企画立案も担っている。

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