カラオケや居酒屋でテレワーク!? 新規事業の裏側には、新卒担当者の奮闘があった

2020年12月21日
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テレワークが急速に普及した2020年。皆さんの中にも、「はじめて自宅で仕事をした」という方も多いのではないでしょうか。一方で、ステイホームが進んだ中、店舗型のビジネスを営む会社などは難しい経営を迫られた1年でもありました。特に飲食店やカラオケ店では空席・空室が目立ち、依然として厳しい状況が続いています。

そんな状況を打破すべく、ITサービス会社「ClipLine(クリップライン)株式会社」が、今年9月に新たなサービス「サブスぺ」を立ち上げました。このサービスの仕組みは、テレワークをしたい個人へ、店舗の空席を仕事場として提供するというもの。会員登録者は、同社と提携する首都圏のカラオケ店や飲食店など、約240か所(2020年12月時点)を仕事場として利用することができます。


もともとの同社の主力事業は、店舗のスタッフ教育や状況共有などの課題を、動画ツールを通じて解決するというビジネス。「サブスぺ」は、会社にとって新たなチャレンジでした。

このプロジェクトを中心となって推進したのは、なんと新卒入社一年目の担当者です。ビジネス経験も浅い中、どうやって事業を進めていったのでしょうか。当の本人である、村上 真聖さんに聞きました。

ClipLine株式会社 村上 真聖(まさと)さん
新規事業開発担当。2019年5月から同社のインターン生として動画編集業務に携わり、2020年1月に社員として入社。サブスペのサービス主担当として活躍中。普段の生活でもっとも気を付けているのは「よく寝ること」。

入社半年で任された重要ミッション

村上さんがClipLineに入社したのは、今年の1月。それまでも、大学に通いながら、インターン生として動画の編集などを行っていました。

岩手県の陸前高田市で生まれ、大学進学時に上京。卒業後は地元に戻って動画編集のスキルを活かして地域貢献がしたいと考えていましたが、上司から「新規事業をやってみないか?」と誘われ、興味を持って会社に残ることにしました。
しかし、当時会社が計画していた事業は、コロナによる市場状況変化の影響を受け、中止せざるを得ない状況にーー

そこで、今だからこそ価値発揮ができる事業を、と立ち上がったのが「サブスぺ」の構想です。

「社内でこの構想が出てきたのは、今年の7月ごろでしょうか。新規事業チームもいろいろなプロジェクトを抱えているので、サブスぺに100%の力を注げる担当は、私だけでした。任されるのが嫌だとか、そういうマイナスな感情は無かったんですけど、担当として必ず利益を生んで結果を出したい……と思ったのを覚えています。」(村上さん)

右も左も分からない中でしたが、短期間でリリースするという会社の方針もあり、プロジェクトはすぐに動き出しました。

鍵になったのは、シンプルな行動の繰り返しだった

サービスの概要を聞いたときの印象を、村上さんは次のように話します。

「ニーズはありそうだなと思いました。なぜかというと、私の自宅は、5畳くらいの賃貸マンションで、部屋にあるのは食事用のミニテーブルとベッド程度。仕事ができるような机とかも置くスペースがなくて(笑)。自宅で仕事環境を整えるのは厳しくて、ステイホームでの仕事がしにくかったので、必要なサービスだなとは感じました。」(村上さん)

自分のような境遇の人と、空席が増えた店舗をつなぐ、まさにwin-winのサービス。事業化への手応えは感じつつも、プロジェクトは一体何からはじめたのでしょうか?

「最低30回、いろいろな店舗に行く、ということをチームで決めました。何をやるにも、それくらの回数は現地で体験してみないと、何も分からないんじゃないかと思って……。」(村上さん)


実際に店舗で行ったことは、まさに単純明快――

(1)まず、十分な空席がある街中の飲食店やカラオケボックスなどで食事をする。午前、午後、夕方など時間帯を分けて訪問。
(2)そのまま、同じテーブルで3時間程度、仕事をする。

この行動の繰り返しでした。
実際に利用者が体験するであろうプロセスを、自分が体験する。この行動を通じて、いろいろなことに気付けたといいます。

「そもそも、居酒屋でパソコンを開くことに抵抗がありました(笑)。これは利用者の方も抵抗を感じるだろうなと思ったのですが、その後居酒屋の個室で作業をすると、すごく集中できて。一度心理的なハードルを乗り越えてもらえれば、十分仕事場になると思いました。」(村上さん)

一方で、課題となりそうなポイントも浮かび上がってきます。
机はベトベトしていないか。照明やBGMは、仕事の支障にならないか。電源はあるか。もしくは、延長コードで引っ張ってこれそうかどうか。
そのような観察と検証を続けていきながら、サブスペのプロジェクトに賛同してくれるクライアントを見つけていき、利用者がテレワークをしやすい環境整備の提案も行いながら、サービスの骨格をつくり上げました。

「サブスぺ」サービスサイトより。自分が体験したことで、
どの店舗にはどのようなジャンルの仕事が向くかなどを、詳細に利用者に伝えることができた。

気持ちを支えるのは“楽しくやる”精神

もちろん、クライアントを見つけることだけがプロジェクトではありません。webページの開発のための仕様決め、利用者の獲得など、さまざまな立場の人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めるのは本当に大変なことでした。

「期日もタイトでしたし、プレッシャーでお腹が痛くなることもたびたびありました(笑)。物事の判断のポイントも分からないので、そこは、一つ一つ先輩に確認していくしかなかったですね。でも、確かに大変ではあるのですが、総じて楽しくやれているかなと思います。」(村上さん)

前向きにやるべきことを進め、周囲のサポートも得ながら、プロジェクト開始の2カ月後にはサービスをリリース。何度もサブスペを使って仕事をするというリピーターも現れ、はじめて「ユーザーがつく」という喜びも味わいました。

なぜ、新卒1年目としてプレッシャーがかかるミッションを背負いながら、村上さんは、これほどまで前向きに仕事を進められたのでしょうか。
その裏には、両親からずっと言われ続けていた「自分がやりたいと思ったことは、楽しくなきゃいけない」という教えがあります。

「親から、ずっと言われてきました。たとえば、私は小学生のときサッカーが好きで少年チームに入っていたのですが、練習ってやっぱり疲れるじゃないですか。でも、それを口に出すと『自分がやりたくてやっているのに、疲れたっていうな』って言われる(笑)。
それと同じで、仕事も、やっているときは正直『疲れるなあ』って思うんですけど、いざ振り返ったときには『楽しかったなあ』って思えるようにしたいです。疲れていても、そんなことを自分に言い聞かせるようにしています。」
(村上さん)


地道な作業から発見を得よう

とはいえ、いつも最初から楽しいと思える仕事ができるという訳ではありません。特に入社して間もないころは、少なからずモヤモヤを抱える人も多いはず。
最後に、同年代のビジネスパーソンに向け、村上さんに「新卒1年目として意識したこと」も聞いてみました。

「これは上司から教わったことでもあるのですが、“面倒くさいこと”を率先してやって、チームに貢献できるのは、自分の特権だなと思っています。地道で面倒くさくて大変なことは、できるだけ『やります』って言った方が、早くチームに必要な存在になれると感じています。」(村上さん)

例として村上さんが挙げたのは、大量のデータの打ち込み作業です。
一人で黙々と、店舗の営業時間などのデータの打ち込みなどをしていると、『この店舗は、こういう特徴があるかも?』など、事業においての重要な気付きを得られることが多かったそう。

必要とされる作業をしながら、その中から自分でできるだけ多くのことを吸収する。そんな姿勢が、「確かに作業的には面倒くさくてやりたくないんですけど、チームの中で『この領域は自分が詳しい』というポジションを取ることに繋がる(村上さん)」といいます。

今後は、「仕事場を、会社か自宅かという2択ではなく、サブスペースという選択肢の提供を通して、街の中でどこでもはたらけるという世界観をつくりたい」と語る村上さん。

地道な作業や行動も厭わず、それを「総論、楽しい」という感情で行うことが、立場や年次を問わずして活躍できる秘訣といえそうです。

●サブスペについて
街中のお店の空席を仕事場として使えるサービス。「サービスを提供する場所」を持つ企業が、空席をワークスペースとして提供する仕組み。リモートワークを推進する企業が法人で登録すると、所属する社員は、「サブスぺ」のWebサイトで店舗を検索し、ワークスペースとして利用することができる。
https://service.subspace.jp/lp/

(取材・執筆:石山 貴一)

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編集長石山 貴一
「はたわらワイド」編集長/パーソルホールディングス株式会社
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