賑やかな日の裏で、捨てられる花。ロスフラワーを救う挑戦

2020年12月21日

今年もクリスマスまで残り僅か。皆さんはもうご予定はお決まりでしょうか?
こんな賑やかな日に欠かせないのは、花。イベントだけではなく、結婚式や入学式といったお祝いの日などでも、花は私たちの心を明るくしてくれます。

しかし、そのような華やかな舞台の裏で、食品のフードロスと同様に最近問題視されるようになった「フラワーロス」があります。
たとえばイベントで飾られた花がその翌日には捨てられることも多く、生花店で売られている 約30~40%の花は売れ残って廃棄されていると言われています。さらに今年は、新型コロナウイルスの影響でイベントの中止が相次ぎ、花農家では出荷すらできずに廃棄されるというケースも発生しました。

そんな問題を受け、「ラフォーレ原宿」では、サステナビリティをテーマにしたクリスマスイベント「LAFORET XMAS 2020」にて、ロスフラワー(廃棄される花)を使った装飾などを実施しています(12月25日まで開催中)。エントランスや店内は、生まれ変わった花々によって賑やかに彩られています。

装飾プロデュース:株式会社RIN

そんなロスフラワーに新たな命を吹き込む「フラワーサイクリスト」として活動する人たちがいます。
フラワーサイクリストとは、「Flower + UP CYCLING」(環境用語である「アップサイクル」の造語)で、ものづくりの力で廃棄品にさらなる価値を与える活動をしているメンバーのこと。

今回取材したのは、そんなフラワーサイクリストとして活動する、響(本名:高橋 響)さんです。

なぜ、捨てられる花に心を惹かれるのか。その裏には、自身のキャリアに対する価値観の変遷がありました。

―――

響さんがフラワーサイクリストとしての勉強をはじめたのは、今年の6月。知識がない状態でゼロから学びはじめ、11月に自身のブランド「きらくにフラワー」を立ち上げて、本格的な活動を開始しました。今回のラフォーレ原宿のイベントでも、店舗の装飾や、自身の作品の販売を行っています。

「まだまだ勉強中ですが、お客さまに自分の作ったものを届けられたときや、ロスフラワーのことに関心を寄せてもらったとき、とてもうれしさを感じます」(響さん)

これまでにない「やりがい」を感じた

岩手県で生まれ育った響さん。「地元に仕事はないのでは」と、高校卒業後に上京してアミューズメント系の企業に就職しますが、社風になじめず半年弱で退職しました。

その後アパレル企業に就職し3年弱勤めましたが、オフィスワークのスキルがないことへの不安から退職し、不動産系企業に転職します。しかしそこでも仕事への目的を見いだせず1年で退職し、今度はITベンチャー企業に転職。やりがいは感じていましたが、会社の業績悪化の影響も受け、またも1年で退職。20代で4社経験という、「まさに“キャリア迷子”(響さん談)」でした。

「そこまで落ち込んでいたわけではないのですが、転職を何回もしているし、これからどうなるんだろうっていう不安は、すごくありました。転職活動が多いことが、自分自身のコンプレックスにもなっていました」(響さん)

そんな気持ちを抱きながら、4社目を退職後、響さんは地元東北の課題解決に取り組む有志の活動(「東北プロボノプロジェクト」)に出会います。東日本大震災のとき、響さんの地元は津波などで甚大な被害を受けましたが、当時東京で何もできなかった自分へのもどかしさ、後ろめたさを抱き続けていました。今なら自分にもできることがあるのではないかと、活動に参加。現地で目にしたのは、東北でいきいきと活動する人々 の姿でした。

「それまでの私は、地元には、はたらく場所はあまりないと思い込んでいました。でも、そのプロボノでは、東北から新しくて面白いことを発信していこうと熱量高く活動している人たちがたくさんいて、『ああ、東京じゃなくても居場所はたくさんあるんだ』という発見がありました。」(響さん)

当時、プロボノでの活動中の様子(写真:響さん提供)

東北に限らず、日本各地にはまだあまり知られていない魅力がある。地域と人を繋げることを仕事にしていきたいな──
そんなことを思っていた今年6 月のある朝、響さんはTwitterで「フラワーサイクリストスクール 受講生募集」というツイートを目にします。

「直感 で、これだ、と思いました。日本各地にお花の農家や地域の花がありますし、場所は離れていても、人と人とを明るい気持ちでつないでくれます。もしかしたら、地域と人をつなげる何かが、花にはあるかもしれないと感じました」(響さん)

気付けば、募集ツイートを目にした数時間後には、応募を終えていました。

クリエイティブな領域の仕事の経験はなく、まして手先を使う活動は、子どものころに得意だった手芸以来。勉強をはじめてからも、すべてが試行錯誤で、理想の作品が頭に思い浮かんでも、それを形にできなかったりと、決して楽ではなかったそう。しかし、これまでにはないやりがいを感じているといいます。

ロスフラワーが、自分の価値を見つめなおす契機に

キャリア迷子という状態に悩んだ過去を経て踏み出した、フラワーサイクリストという新たな一歩。彼女の個人ブランド「きらくにフラワー」で掲げているコンセプトは「2年後の未来が変わるかもしれないお花屋さん」です。

今日買った一輪の花によって、もしかしたら、部屋が明るくなったり、明日も頑張ろうと思えたり、ちょっと世界が変わって見えたり、新しいチャレンジのきっかけになるかもしれない。そんなコンセプトのもとになったのは、自らのキャリアでした。

「転職回数の多さは、私のコンプレックスになっていました。でも、それぞれの仕事で抱いた『違和感』を放置せずに行動したこと自体は、結果的に良かったと思っているんです。自分で行動したからこそ、その結果に対する納得感もありますから。
それに、数々の仕事をしてきた経験も今の仕事に活きていて、たとえばアパレルの企業での接客経験が、どうすれば商品を通して思いを届けられるかといったブランディングや作品作りにとても役立っています。そんな振り返りから、小さな決断と行動の積み重ねって、すごく大事だなと感じて。でも、行動するにも何かきっかけが必要なので、何気なく買った花が、誰かにとってのきっかけになればいいなと思います」(響さん)

響さんが制作に関わった、店舗で展示中の作品

また、そのようなキャリアを経た自分と、ロスフラワーを救出して新たな作品や装飾を生み出す過程には、重なるものがあると語ります。

「キャリア迷子という経験は、私にとって、結果として意味のあるものだったと感じています。これはロスフラワーを救う過程とも重なる部分があって。捨てられてしまう花って、一見もう”価値がない”とみなされたものじゃないですか。そういうものに価値をつけていくというプロセスが、キャリアに悩んだ過去の自分を救ってくれるような、そんな気がするんです」(響さん)

自身のブランド「きらくにフラワー」の作品とともに

フラワーサイクリストとしての歩みをはじめたばかりの響さん。
「まだまだ勉強中ですよ」と笑いながらも、「コロナ禍が落ち着いたら、早く地域の役に立てるように、全国を回っていろんな活動がしたいです!」と前を向きます。

今後は、花農家さんに足を運んだり、自分自身がSNSを通じて地域の様子を発信するなどして「地域と人をつなげる何か」を少しずつ生み出していきたいそう。
“小さな違和感”に対する行動を経て辿り着いた新たなキャリアを、響さんは力強く歩み出しました。

ーーー

読者プレゼント!
12月25日(金)までの期間中、同イベントの特設店舗にて「はたわらワイドを見た」とスタッフの方にお伝えいただくと、生花一輪がもらえます。ぜひお越しください!
【住所】東京都渋谷区神宮前1丁目11−6 ラフォーレ原宿B0.5F『Flower Cycle Shop』

●髙橋 響 Instagramアカウント
@hibiki_tripflower
●「きらくにフラワー」 Instagramアカウント
@Kirakuni_flower

(取材・執筆:石山 貴一 撮影:金 恩玉)

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編集長石山貴一
「はたわらワイド」編集長/パーソルホールディングス株式会社
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