新発想のバズコスメ!“魔法”と言われる資生堂マジョリカ マジョルカの「まつげティント」が生まれるまで

2022年11月9日

日々進化する化粧品業界。コロナ禍になりマスク生活が当たり前になり、マスクに隠れない目元のメイクや「まつ育(まつげの育毛)」が重視されるようになりました。

そんな中、2022年8月に発売されたマジョリカ マジョルカの新作まつげ染毛料『マジックティント』がSNSで話題です。実は透明という素まつげ先端部分をラッシュティント成分で3日かけて染め上げ、色を定着させる“まつげティント”は、今までにない新しいカテゴリーの商品。「すっぴんでもまつげがもっと長く見える」と人気を集めています。

これだけ成熟した化粧品業界で新しいカテゴリー“まつげティント”を生み出せたのは、資生堂の長年にわたる研究があってこそ。そこで、商品開発を担当した大橋 しほ花さんに開発の裏側を伺いながら、商品開発という仕事の魅力についても教えてもらいました。

「まつげの先端は透明」という研究結果を「魔法のまつげティント」という商品へ

――「まつげティント」という新カテゴリーの商品について、詳しく教えてください。

まつげの先端にある透明な部分を染めて、より長くぱっちりとした目元に見せるまつげ染毛料です。朝晩1日2回、3日間連続してラッシュティント成分を塗ることで、3~4日間ほど色を定着させることができます。

試作品を実際に自分で使ってみて「魔法みたい!」と思ったこと、マジョリカ マジョルカの世界観も表現したかったこと、商品を理解しやすい名前にしたかったことから、商品名を『マジックティント』と名付けました。

――今までにない商品ですが、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

研究所と「毛髪に関する新しい知見をまつげの商品に生かせないか」を相談する中で、まつげの先端が透明だという事実を知り、そこからまつげ染毛料の構想を得ました。

また、市場の背景としては、コロナ禍になりマスク社会になったことで、目元のメイクに注力する人が増えています。まつげケアに対する意識も高まり、まつげ美容液のニーズが増していくなか、「短期間でまつげケアの効果を得られるアイテムを、マジョリカ マジョルカから出せないだろうか?」と考えました。

――さまざまなブランドがあるなかで、マジョリカ マジョルカから出す理由は?

マジョリカ マジョルカのメインユーザーは15~34歳で、「“かわいい”を探す旅」「わたしだけの新たな“かわいい”の扉をひらく」といったブランドコンセプトがあります。具体的には目を大きく見せられるような眉目アイテムに力を入れています。

昨年発売したマスカラ『ラッシュエキスパンダー ロングロングロング EX』もご好評をいただいている商品ですが、まつげ染毛料『マジックティント』はすっぴんでもまつげが長く見え、目を大きく見せられるアイテム。より自然な“かわいい”を演出できる、マジョリカ マジョルカらしい商品なんです。

――構想を得てから発売するまで、どれくらいの期間がかかりましたか?

約2年かかりました。まず「まつげの先端が透明である」という事実を知り、そこから技術を駆使して「まつげの先端を染めて黒っぽく見せる商品」に落とし込むまでに1年強、そして「まつげ染毛料」としてパッケージ含めマジョリカ マジョルカらしい商品にするまでに1年を要しています。

――マジョリカ マジョルカらしくするために、具体的にはどんなことをしましたか?

マジョリカ マジョルカのロゴには、美の伝道師である「マジョリカバード」がいます。マジョリカバードが女の子をかわいくしていくというファンタジーな世界観があるので、ただのまつげ染毛料ではなく「まつげがぱっちりと長くなる魔法のアイテム」として打ち出したいと考えました。

そのため、染毛料を青にも紫にも見える“魔法の青”にしたり、パッケージにもマジョリカバードの羽をあしらったりして、マジョリカ マジョルカの世界観を表現しています。パッケージの青い羽の毛先を黒くすることで、青い液でまつげの先を黒く見せる商品の特性も表しました。

――発売後の反響はどうですか?

嬉しいことに、とても好評な反響をいただいています。同じタイミングで発売したまつげ美容液『ラッシュジェリードロップ EX プレミアム』もご好評をいただいており、特に、『マジックティント』は、発売直後、マスカラ市場でダントツの1位※になりました。

※SRI+、セルフマスカラ、SKU、マーケットシェア(金額)、22/8/15-9/9

「本当に染まった」「すっぴんでもかわいくなれる」といった声も上がっていて、狙っていた通りの理想的な反響を得られてすごくうれしいですね。

研究所との橋渡し役になり、マジョリカ マジョルカの「かわいい」をつくる奮闘

――商品開発の仕事内容について教えてください。

まず、生活者の意識やトレンドを踏まえて商品の企画・コンセプトを考案し、それをブランドの中でどう表現するか模索します。どんな使用感にするか、どんな容器・パッケージにするかなど、中身からデザインまで具体的に設計していくのが商品開発の役割です。

『マジックティント』で言えば、「まつげの先端が透明である」という事実から毛先を染める商品企画を考えています。マジョリカ マジョルカの対象である若年層の生活習慣やニーズ、そして「魔法のようにかわいくなれる」というブランドの世界観を踏まえて『マジックティント』という商品企画が完成しました。

さらに、液は何色で、どれくらいのとろみ感を出したら使いやすいか、どんな形状のブラシでどんな塗り方をすれば綺麗に塗れるかなどを、ブランドマネージャーや研究所の担当者、社内デザイナーと相談しながら進めていきました。

――『マジックティント』の開発過程で苦労したことは?

“魔法の青”に至るまでが長かったです。ティント成分自体に“黒”の色がなかったので「すっぴんでのまつ毛がくっきりするには何色がいいんだろう」と考えました。ティント成分は、リップに用いられることが多いため、最初のサンプルは赤色だったのですが、もっと素まつげが綺麗に染まる色がないかと黄色や緑色などさまざまな色を混ぜながら試行錯誤しました。最終的に紫がかった青色が一番黒っぽく見えることが分かったのですが、そこからもSNSで映える鮮やかな青色にしたり、ワクワクする“魔法の青”というキャッチコピーを考えたりと、紆余曲折がありました。

ブラシもかなりの種類を試して今の形にたどり着いています。液が目の中にはいるとしみやすいため安全性を考慮したり、さらにまつげの全体に塗るマスカラと違って、先端の透明な部分にだけ均一な量を薄く塗る商品なので、まつげを梳かしながら塗れるように毛足が長くやわらかいブラシにしました。

――商品が出来上がってからは、何に苦労しましたか?

「まつげ染毛料」という新しいカテゴリーの商品をどう伝えるかに苦労しました。商品開発の仕事をしていると、最初からその商品をずっと見ているから「ユーザーが何に疑問を感じるか」が商品を初めてみたときのフレッシュな感覚を忘れがちになってしまうんですよね。

そこで、社内メンバーに商品を試してもらい、ヒアリングして回りました。「なんで液が青色なのに、まつげが黒く染まるの?」「メイク落としでティント成分が落ちないの?」といろいろな質問をされて、すごく参考になったんです。

こうした疑問を解消するため、公式サイトに「黒のティント成分が存在しないから、自然に際立つ青にしました」「クレンジングや洗顔で少しずつ流れ落ちてしまうけど、3日間朝と晩連続で使用することで一定期間効果が続きます」といった説明を記載して、ちゃんと商品の特長や正しい使い方が伝わるようにしました。

初見で使った人たちの意見を取り入れながらブラッシュアップしたから、これだけ話題を集める新商品になったんだと思います。

――研究所とうまく連携するために意識していることは?

お互いが納得できる地点を模索することです。化粧品の成分を配合する時に、使い心地の良さと安全性を両立するのが難しいこともあるんですよね。

『マジックティント』はまつげにしっかり液を塗りたいものの、液がシャバシャバしていると目に入りやすくて安全性が担保できません。だから液にとろみをつけてほしいと依頼しましたが、工場の大きな窯で液を作っているので、とろみをつけるのが難しかったんです。

そこでとろみをつけずとも、ブラシの形状を変えて塗りやすくするなどの工夫をしました。中身を作る研究所に一方的に要望を伝えても、無理難題をぶつけることにしかなりません。実現可能な解決策に落とし込めるよう、その都度きちんとディスカッションするようにしています。

40歳手前で研究職から商品開発へ転身。年齢も経験も関係なく挑戦できる

――大橋さんは、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

新卒で資生堂に入社し、それから12年ほど研究員としてはたらいていました。研究所では、国内ブランドから海外ブランドまで、マスカラ、アイシャドウ、リップなど一通りの化粧品を研究しました。

楽しかったので特に異動願望はありませんでしたが、40歳手前で「商品開発に行ってほしい」と声をかけられ、商品開発へジョブチェンジしました。いきなりで驚きましたが、長く研究職に携わっていたので「そろそろ新しいことを始めるのもいいか」と思ったんです。

長年の研究経験で成分について理解している分、商品の成分から発信する情報を考えたり、担当の研究員とやり取りしたりするのはスムーズにできました。

――研究職とのギャップを強く感じたことはありますか?

言葉選びでしょうか。研究職だとサイエンスの視点で理論的な言葉を使いますが、商品開発ではマジョリカ マジョルカのファンタジーな世界観が伝わるやわらかい言葉を選ばないといけません。ブランドマネージャーにパッケージの文言を見せた時に「ちょっと固い表現で理系すぎる。もっと魔法っぽい世界観の言葉で表現したほうが伝わるよ」とアドバイスされたこともありました。

若年層が理解しやすく、ワクワクする情緒的な言葉を知るために、若年層に人気の曲の歌詞をよくよく読むようになりました。歌詞は韻を踏んでいて語感が良かったり、感情表現が豊かだったりして、新しい感性を養えた気がします。

――畑違いの商品開発になって「良かった」と思えたことはなんですか?

年齢に関係なくチャレンジを楽しめたことです。そもそも最初に研究職を選んだのは、人と接するのが得意じゃなかったから。でも、商品開発はたくさんの人と接する職種ではっきり言わないといけないシーンもあり、アグレッシブなコミュニケーションをする人が多いので、自然とそういう見られ方をしました。だれも私のことを「コミュニケーションが苦手な人」だとは思わないんです。

畑違いの研究職から流れに乗って商品開発に来た身としては「私、こういうキャラじゃないんだけどな」と感じながら仕事することも多くありましたが、人を育ててくれる部署だったので救われました。それに、初めてのマーケティング領域で新しい知識を多く学んだことで、世界が広がる気がしたんです。「40歳を過ぎても、これだけたくさんのことを吸収できるんだ」と感動しました。

どれだけ得意分野と離れた仕事でも、経験がなくても、周りからのアドバイスや叱咤激励を素直に受け入れれば成長できます。「理系だから」「文系だから」「未経験だから」と自分の可能性に限界を設けたらもったいないですよね。

――最後に、これからの目標を教えてください。

ユーザーの方にマジョリカ マジョルカらしい魔法のワクワク感を伝えながら「かわいくなってなりたい自分になれる」という驚きを与える商品を作っていきたいです。商品を使っての体験はもちろん、キャッチコピーやパッケージを目にした瞬間から「かわいくなれそう!」というときめきを感じてもらえたらうれしいですね。

私個人としては、一人の女性として綺麗にかわいく、年齢を重ねていきたいです。仕事だけでなくプライベートも充実させながら、素敵に生きられたら幸せですね。

(文:秋カヲリ 写真:倉持涼)

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エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

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