ワークマン・ヒット商品の生みの親が語る「前例のない商品への挑戦」

2022年11月15日

現場作業や工場作業向けのアイテムやワークウェアで知られるワークマン。最近ではキャンプ用品や、普段使いできる機能的なファッションアイテムなど、SNS上でも注目される「バズ商品」をコンスタントに発表し続けています。

中でもロングセラーになっているのは、500mlペットボトルをそのまま収納し、保冷・保温できる「500ml専用真空保冷ペットボトルホルダー」(以下「真空保冷ペットボトルホルダー」)。2019年に初代モデルが発売されてから、全国各地で品薄状態が続くほどの人気ぶり。しかも工場勤務者や作業員だけではなく、主婦やオフィスワーカーなど、幅広い層が購入しているのです。

なぜワークウェアを主力商品とするワークマンが、幅広いシーンでニーズのある商品を開発できるのでしょうか。真空保冷ペットボトルホルダーの生みの親であり、ワークマンに入社以降15年にわたり製品開発部でさまざまなヒット商品を生み出してきた鐵本孝樹さんに、商品の誕生秘話を伺いました。

炎天下ではたらく警備員の姿から着想

――鐵本さんは入社した15年前から、キャリアの大部分を商品開発に費やしてきたと伺いました。これまでにどんな商品を開発してきたのですか?

作業用手袋や靴下、タオルや帽子などから、防毒マスクや防塵マスク、ヘルメットといった商品までさまざまですね。職人さんが使うハンマーやノコギリなどの開発も担当したことがあります。

――ひとつの商品を作るうえで、具体的にどういった業務を担当されるのでしょうか?「開発担当」と聞くと、商品のアイデアを出しているイメージがあるのですが。

ワークマンの場合、開発担当者の業務範囲が広いんですよ。企画の発案から原料調達、工場の選定から価格設定、販促まで、基本的には一人で担当します。大変ではありますが、社内でのやりとりが煩雑にならないからこそ、真空保冷ペットボトルホルダーもスピーディーに販売できました。

今年2022年に販売された四世代目の「500ml専用真空保冷ペットボトルホルダー」(税込980円)。

――「真空保冷ペットボトルホルダー」が生まれた経緯を教えてください。

今でこそ一般の方に浸透している商品ですが、もともとは外で作業する人に向けて作ったんですよ。きっかけは、真夏の炎天下ではたらく警備員さんを街中で見かけたことでした。

警備員さんって、その場から一歩も動けないじゃないですか。だから、みなさん足元に水筒やペットボトルを必ず置いてらっしゃるんです。でも、水筒は洗うのが面倒だし、ペットボトルはすぐ飲み物がぬるくなってしまう。かといって凍らせると飲みたい時に飲めないのが難点です。

「これはどうにかできないか」と考え、「ペットボトルをそのまま保冷できるアイテムがあれば解決するのでは」という発想にたどりつきました。

従来、缶用の保冷ホルダーはあったものの、ペットボトル用の保冷ホルダーが市場に見当たらなかったんです。前例がないからこそ、発売されたらニーズはあるだろうなと思っていました。

真空保冷ペットボトルホルダーを「絶対売れる」と確信した理由

――ワークマンが着手してこなかったタイプの商品だと思いますが、社内で企画を通すことも大変だったのでは?

それが、結構スムーズだったんです。新商品の開発に対し、前向きに受け止めてもらえる社風であることは大きかったかもしれません。

ただ、「絶対売れる」と信じていたものの、やっぱり初めて出す商品が売れるかどうかを判断することは難しいんですよね。市場データの分析やその商品群自体の市場背景の調査などは、自主的に行っていました。

――社内を説得するための調査、ということですか?

社内向け、というよりも僕自身に向けたリサーチでした。新しいものへチャレンジする時に、どうしても「商品を販売する責任」を感じてしまうんです。「売れる」という根拠を増やし、自信を持って「この商品は売れます!」と言えるようになりたかった。

また、とりあえず作ってみないと「保冷性の高さ」を実現できるかが分からなかったので、企画を提案する前にサンプルも完成させていたんです。提案時には実物を見せながら説明を行いました。

――どのように「保冷性の高い商品」を実現したのでしょうか?

仕組み自体はネットで調べたり、水筒を取り扱っている取引先に聞いたりして考案しました。専門機関が出す書籍も購入しましたね。そして保温機能は一般的な水筒に使われる技術を応用すれば、技術的にもそこまで難しくないことが判明したんです。

2019年に発売された初代モデルを手に取る鐵本さん。

――実際に商品化する中で、一番苦労したのはどういったところでしたか?

当たり前のことではあるのですが、市販のペットボトルの形状が1種類ではないことに気付きました。それでも「500ml専用」と謳うからには、500mlのペットボトルならなんでも入るようにしたくて。

かなり泥臭いのですが、実際に四角形から多角形まで、いろんな形の500mlのペットボトルを用意し、それらすべてに対応できる外形を作っていきました。

――ワークマンには高性能なのに安価な、いわゆる「コスパの良い商品」が多いですよね。真空保冷ペットボトルホルダーも980円(税込)と手に取りやすい値段ですが、どのように価格設定されたのでしょう?

弊社の商品の相場感は、お客さまがお店に入り、パッと見た時に「安い!」と思うか否かを一つの判断軸としています。その感覚でいうと、真空保冷ペットボトルホルダーは「1,280円じゃ売れない。MAXでも980円」でした。「値ごろ感」がワークマンらしさだと思うんです。自分が商品開発をする際も、それを第一に意識しています。

「声のするほうに進化する」という瞬発力の秘密

――現在販売されている真空保冷ペットボトルホルダーは第四世代ですよね。どのようにアップデートを重ねていったのでしょうか?

お客さまの声をきっかけに改善していきました。まず、初代を出した時は「持ち手が欲しい」という意見と「ホルダー内でペットボトルが回ってしまい、ペットボトルのフタを開けにくい」という意見が多かったです。その2つを改善すべく、持ち手をつけ、底面に滑り止めのシートを貼りました。

そのうち、市場にはいろんな形状のペットボトルが出回るようになりました。第三世代では滑り止めをなくす代わりにホルダー上部にゴムを入れ、上からペットボトルを押さえる仕組みに変えることで、さまざまな形状の500mlペットボトルに対応できるようにしました。

左から順に第一、第二、第三・四世代のモデル。第四世代では形状を踏襲し、デザインのバリエーションを増やした。

そして現在は、海外のブランドのミネラルウォーターなど、細くて高さのあるペットボトルが増えてきています。もし今後、第五世代を出すとしたら、「海外規格のペットボトルにも対応できるサイズにする」ことが改善点になるかな、と思います。

――先ほど「もともとは外で作業する人に向けて作った」とおっしゃっていましたが、一般家庭にもこれだけ広がることは予想していましたか?

正直、誰もこの商品がこんなに話題になるとは思っていませんでした。「みんな、やっぱり水筒を洗うのが面倒くさいんだな」と(笑)。

また、以前から「ワークマンの商品をガーデニングやキャンプに使っている」という声はいただいていたのですが、この商品から派生した「真空ハイブリッドコンテナ」という商品でも「こういう使い方ができるのか!」と驚くような活用方法がSNSで散見されました。

2021年に初代が発売され、2022年現在第二世代が販売されている「真空ハイブリッドコンテナ」(2,500円・税込)。

真空保冷ペットボトルホルダーを販売させていただいてから、「2ℓ用も欲しい」という声をよくいただいていたんです。でも、2ℓ用のペットボトルホルダーは用途が限定的になってしまうと思い、500mlペットボトルが4本入るコンテナを作りました。

するとキャンプの時に生肉を入れたり、ドライブスルーで受け取ったご飯を入れて保温したりと、ドリンク以外での使い方で支持を得て。真空保冷ペットボトルホルダーよりもネット上で話題になり、大ヒットしました。

――真空保冷ペットボトルホルダーの開発に携わってから、仕事に対する考え方はどのように変化しましたか?

改めて、SNSのすごさを思い知りましたね。この商品に限らず、ユーザーの声をもっと取り込んだほうがいいと強く感じました。

弊社ではよく「声のするほうに進化する」という言葉を使うのですが、本当にその通り。SNSでは良いことだけではなく、「こうなったらいいのに」や「全然だめ」ということも発信されます。意見をできるだけ吸い上げ、要望に応えられるような商品開発をしていきたいです。

また、同時に「古い商品を大事にする必要性」も感じるようになりました。昨今、「値上げ」が度重なる時代じゃないですか。それでも長年愛用されている商品は、価格も品質も維持していかなければいけないと思っています。

「コスパの良さ」からワークマンを信用してくださっているお客さまがたくさんいらっしゃいます。浮き沈みがある市場の中でも、お客さまに納得していただけるクオリティーと価格を、これからも担保し続けたいです。

(文:飯嶋藍子 写真:小池大介)

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ライター / エディター飯嶋藍子

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