チョコレート業界に革命を起こす「Minimal」。世界一を目指す仲間たちは、どうやって集まったのか?

2021年11月30日

「はたらく」の中でも大事な要素なのが「誰と一緒にはたらくか」。特に、新しいチームを立ち上げる際には、どんな仲間をそろえるかが成功を左右しますよね。

「はたらく仲間論」というテーマで今回お話を伺ったのは「Minimal – Bean to Bar Chocolate – (ミニマル)」を展開する株式会社βace代表取締役の山下貴嗣さん。Bean to Bar Chocolateとは、カカオ豆の選定からチョコレート製造までを自社で一貫して手がけ、カカオ豆本来の味わいを引き出したチョコレートのこと。

そんな「Minimal」が目指しているのは「世界一のチョコレートを作ること」。一見、チャレンジングにも感じられるその目標に共感し、「Minimal」にはユニークな経歴を持つ仲間が集まっています。山下さんはどのようにして、共に世界一を目指す仲間を集めたのでしょうか。

コンサル会社を退職。面白い人とワクワクする仕事がしたかった

──山下さんは29歳のときにコンサルティング会社を退職したんですよね。起業を考えての退職だったんですか?

会社に退職の意志を伝えた時点では、辞めてから何をするかは決めていませんでした。放浪したり、大学院に通ったりするのもいいなと思っていましたが、結局最後までがっつり仕事をしていて、次にすることが決まらないままに退職の日が近づいてしまい。このまま辞めたらニートになってしまうなと思って起業を決意しました。

ただ、起業を決意する前から面白い人とワクワクする仕事がしたいなとは思っていましたね。自分が楽しめることと、世の中に意味のあることがうまく交わればいいなと。

──ワクワクする仕事というのは?

日本はどんどん人口が減っていくし、労働生産性を上げてもGDPは劇的に上がらない。そんな中、今後は「量」ではなく「質」で稼ぐ時代になっていくと思ったんです。

じゃあ、これからの時代に面白い仕事ってなんだろうと考えると、日本人の繊細さや技術を活かしたものづくりだなと。内需が減っていく中で良いモノづくりできちんと外貨を獲得しながら、日本の良さをグローバルで伝えていく。クラフトだけど世界中に愛されるブランドをつくってみたいと思うようになりました。

Bean to Bar Chocolateの奥深さに気付かされた、一人の職人との出会い

──そんなときに、Bean to Bar Chocolateとの出会いがあったのですね。

最初にBean to Bar Chocolateを知ったのは2010年。NYのお土産で買って来たんです。そのときはおしゃれだなと思ったくらい。

それを事業にしようと思ったのは、2013年に今は「Minimal」の開発のエンジニアリングディレクターをしている朝日と出会ったタイミングでした。

当時、私は彼が経営していたコーヒーショップで彼が自作したチョコレートを試食させてもらったんです。

それが、オレンジのような鮮やかな柑橘系の味だったのですが、「カカオと砂糖だけで作った」と朝日がぼそっと言うんです。衝撃を受けました。僕が知っているチョコレートとまったく違う。これはすごく面白そうだなと思いました。

──山下さんがやりたいと思っていた、「クラフトだけど世界に愛されるブランド」ができるかもしれないと直感したんですね。

そうですね。コーヒー、ビール、日本酒などを見ても、素材の良さとクラフトマンシップを掛け合わせることで熱狂的なファンを生む時代になってきていました。日本のチョコレート界にも同じような波が来るだろうなと。

一般的なチョコレートはカカオにミルクやナッツなどを加える足し算で作られていますが、MinimalのBean to Bar製法で造ったChocolateは、余分なものを加えずカカオ本来の味を楽しむ、引き算の考え方です。同じく、余分なものを引き、本質を引き出すという考えから「引き算の料理」と言われる和食と通じるものもあって、面白いなと感じました。

──すでにお店を経営していた朝日さんをどのように仲間に引き込んだんですか?

前職ではたらきながら退職後に何をしようか考えていたときに、朝日から「店を閉めるか迷っている」という連絡をもらいました。「じゃあ、一緒に起業するか」となって。それが2014年の4月ごろでした。

──朝日さんを信頼して仲間にしようと思った一番の理由は何だったんですか?

合理的な理由というよりは、彼の造るチョコレートを食べて、なんか面白かったという直感が理由です。僕は、自分と違う視点を持って深く掘っている人、職人気質な人がすごく好きなんです。

職人ってものすごくマニアックで、まったく自分とは異なるバックグラウンドや異なる思考回路を持っているんですよね。職人気質な人って同じ日本語を話しているのに、思考回路が異なるから言語がまったく違う。そういうのに、僕はすごく好奇心をくすぐられるんです。

職人は海に潜って深海にいるわけのわからない魚をとってくるような人たち。僕はそれを食べてみたい。そんな感じです(笑)。

だから、朝日と出会ったときも、この人が何を言っているのかは分からないけれど、彼が作るチョコレートは絶対に嘘をつかないだろうなと思いました。

それぞれの遠心力で大きくなっていくチームにしたかった

──その出会いをきっかけに「Minimal」が始動したんですね。創業当時、どんなメンバーを集めたいと思っていたんですか?

プロフェッショナリズムと好奇心を持った、多様性のある人材を集めたいと考えていました。あと、遠心力が効いたチームがいいなとも思いました。

「Minimal」のプロダクトが好きで、僕たちのミッションに共感してくれるというのは大前提。イメージは土台や根っこの部分は共通していて、遠心力というのは、そこからメンバーそれぞれが翼を広げていく感じ。それぞれが勝手に遠心力で大きくなっていく組織です。

──各自がそれぞれの道をマニアックに極めていく感じですね。

そうです。そういう組織になったら面白いなと思っていました。

前職の経験で今に一番活きているのは、「自分ができることはたかが知れている」と気付けたこと。でも、チームでやれば、一人では行けないところまで行けることも分かりました。

よく、「早く行きたいなら一人で行け、遠くに行きたいならみんなで行け」って言うじゃないですか。僕は早く、遠くに行きたい。だから、自分ができないことをできる仲間を集めて多様なチームを作りたいと思っていました。方向性は一緒だけどジャンルが異なる人を集めるのが最強かなと。

「世界一のブランドを一緒に作ろう」。夢を語って、仲間を口説く

写真提供:βace

──この人がいなければ「Minimal」が成り立たないという仲間を紹介していただけますか。

みんな強みがあるのですが、僕よりも間違いなく「Minimal」に必要と言えるのが、CFOをしている湊谷ですね。

大学の同級生で創業のときに誘ったんです。税理士から監査法人、そこからコンサルタント会社の財務マネージャーを経て、うちに来てくれました。創業時から「Minimal」のバックオフィスを全部見てくれています。

創業したころは、作るところ、サービスするところを優先して職人ばかりを採用していたため、湊谷以外にはバックオフィスを見る人がいなかった。僕たちが今も職人組織でいられるのは、湊谷が「Minimal」の裏側を支えてくれているからです。

──同級生とはいえ、そんな人物が立ち上げたばかりの企業に入ってくれるのはすごいですね。

創業マジックですよね。実績がなくても、最初は夢を語るだけで人を集めることができる。

「世の中には大量生産かクラフトマンシップしかない。その中間、クラフトマンシップとスケーラビリティを両立させたブランドを作ろう」と言って口説きました。

でも、彼も僕が語った夢と同じようなことを考えていたみたいで。おもしろそうだなと乗ってくれました。

──「Minimal」のクラフトマンシップの核である製造チームにはどんな仲間がいますか?

個性的という点だと、製造チームのリーダーをしている奥野も面白いですよ。元パン職人で、無骨で無口であまりしゃべらない。ちなみに、ショッキングピンク色が大好き(笑)。

彼とはバーで出会ったんです。僕が飲んでいたときに隣にいた人の後輩でした。聞けば、パン職人を8年していたけど腰を痛めてしまい一時的に休職している、と。

それで「チョコレートはどう?」と言ってみたんです。そうしたら、次の日に店舗にチョコレートを食べに来てくれて。「面白そうだからぜひ面接を受けたい」と言ってくれました。

入社してもう4、5年経って、今は製造のリーダーとして活躍してくれています。

──「Minimal」のチョコレートを食べて「入りたい」って言ってくる人も多いんですか?

そうですね。うちのチョコレートを食べて、門を叩いてくれるケースが圧倒的に多いですね。店舗で直接言われたり、履歴書を送ってくれたり。

ほんとに、個性的な人が集まっていると思います。ノルウェーで飲んだコーヒーに感激して、そのカフェに「はたらかせてほしい」と飛び込んでいったバリスタの子や、子どものころに食べたお菓子が忘れられなくて自分も作りたいというパティシエの子とか。

みんな好きなものに対してまっすぐに向き合っている人が多いですよね。

──最近ではデジタルマーケティング業界で注目されている元・中川政七商店の緒方さんの入社も注目されましたよね。

2017年くらいに知り合って、定期的に情報交換したり、飲んだりする関係でした。それで彼から中川政七商店を辞めると聞いて、じゃあうちに来てよと誘いました。

ちょうど店舗での販売からオンラインに力を入れたいタイミングでデジタルマーケティングに強い人材を探していたんです。

ただ、やっぱりまだ大きな実績はないから、「世界一のブランドを一緒に作ろう」と夢だけ語って口説きました(笑)。

実際に食べてもらっておいしかったからというのが、説得力につながったんじゃないかな。

ビジョンをプロダクトで表現していく

──これだけ個性的なメンバーをチームとしてまとめられるのは、やっぱり「世界一のブランドをつくる」というメッセージが明確だからですか?

どこに向かっていくかを示すことはすごく大事ですよね。僕が言う言葉が正しいのではなく、ミッションやビジョンを踏まえて最適な一歩を選んでいく。そこにみんなが集うことが大事なんだと思います。

「Minimal」の場合は今のところプロダクトにビジョンがきちんと表れているから、今の仲間がいてくれるんだろうなと。

みんな、自分たちの手でワクワクするようなおいしいチョコレートを作りたいという気持ちではたらいているので、何かが欠けて少しでも味がまずくなったら辞めるメンバーも出てくると思うんです。

だから、「世界一になる」というビジョンをチョコレートで表現し続けないといけないし、ものづくりだけは絶対に妥協したくない。少なくとも、商品を食べたらわかる状態になっていないといけないと思っています。

一緒にはたらく仲間には、背中を預けたい

──お話を聞いていると、山下さんの仲間集めの才能がずば抜けてるなと感じます。改めて、山下さんにとって「はたらく仲間」ってどんな存在ですか?

一緒に夢を目指す仲間、ではあるんですけど。僕は仲間に背中を預けたいんです。会社としての方向性を決めるのは今のところ僕の役割なんですが、「僕がこっち見るから、後ろは頼むよ」って言いたい。

だから、僕にとっての「はたらく仲間」って、全幅の信頼を寄せて背中を預けることができる人ですね。

たとえば、「Minimal」が1つの船だとして、新大陸を目指して航海している途中で嵐にあったとします。船体に穴が空いて水が侵入しているときに、「山下さん、水漏れしています!」って報告してくるだけの人を仲間にしたいとは思いません。それより早く穴塞げよ、と。何かあったときに自分たちで判断して行動できる人に仲間になってほしい。

僕たちが本当に目指しているものに共感してくれて、それに基づいた判断をできる人に対して僕は全幅の信頼を寄せています。

みんなで「Minimal」という船をこいでいて、目的地に辿り着くためにはいろいろな役割の仲間が必要。それぞれが専門分野を突き詰めてスキルを発揮する。そういう感じですね。

今のところ僕は船長として行き先を決める役割ですが、僕が「Minimal」に必要なくなったらほかの人に交代してもいいと思っています。でも、やっぱり僕の手で「Minimal」を世界一にしたいので、会社や仲間の成長に追いついていけるように努力していきたいですね。

──「世界一を目指す」という気持ちに嘘がないから、仲間が集まってくるんですね。

僕自身は本当に世界一になりたいと思っています。それが実現できたら最高ですよね。だって、世界一のチョコレートを食べられるんですから。おいしいチョコレートを作りたい、食べたい。それをみんなで追求していくことが、今はすごく面白いです。

(文:村上佳代 写真:玉村敬太)

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編集/ライター村上佳代
ビジネス系やインテリア系のインタビューをしつつ、企業媒体の企画制作をしてます。ようは雑食。趣味はドラマの伏線分析。

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